社会的に期待される方向に性格が変化するのか
パーソナリティ(性格)特性は,平均レベルと分散の両方で生涯にわたって変化することが,これまでの研究で明らかにされています。
◎平均して,人々のパーソナリティ特性は社会的に望ましい方向に変化する傾向がある。これをパーソナリティ発達の成熟の原則という。
◎分散は児童期から青年期中盤まで増加し,その後はとどまる傾向がある。自己選択した環境が個人差を拡大する遺伝と環境との相互作用,環境が遺伝的特徴を拡大する遺伝と環境の相互作用のため。
個人差が一時的に拡大される例としては,外向的な人が社交的イベントによく参加することでより外向的になっていき,内向的な人がイベントを避けることで対人スキルの獲得が上手く進まず,ますます内向的になるということが考えられます。
社会的投資原理
社会的投資原理は,パーソナリティ特性の変化を説明する試みのひとつです。この原理は,個人が新たな社会的な期待場面に直面し,新しい社会的役割に力を注ぎ,それに応じて行動を変化させることによって,パーソナリティ特性が成熟していくことを表しています。
同じような年齢の人々にとって同じようなライフイベントが存在していると考えることがこの考え方のポイントです。いや,もちろん,個々人で直面する環境は異なります。しかし,学校段階を移行すること,友人を作ること,結婚すること,子どもが生まれることなど,個々人でバラツキはあっても,大きな集団で見ると同じようなライフコースを進む中で,行動を調整しながら適応していくプロセスが想定されるということです。
特性
また,すべてのパーソナリティ特性がイベントに合わせて同じように変動するわけでもありません。
基本的にビッグ・ファイブ・パーソナリティの枠組みで研究が行われることが多いのですが,パーソナリティ特性は階層構造を示します。ビッグ・ファイブ・パーソナリティは,その下位レベルにファセットというより細かい特性をもちます。さらにファセットは,もっと細かい「ニュアンス」と呼ばれるレベルの具体的な特性をもちます。「ニュアンスレベル」というのは,最近海外の学会で耳にするフレーズなのですが,要は質問項目レベルで分析を行うことを指します。
社会的期待
社会からどのような期待がされているかという要因が,若者のパーソナリティ特性の平均値や分散とどのように関連するのかを検討した研究が行われています。次の4つの仮説が立てられています。
◎社会的期待が高いパーソナリティ特性は,平均が高くなる傾向がある
◎社会的期待が強いパーソナリティ特性は,年齢とともに期待される方向に変化する傾向がある
◎社会的期待が強いパーソナリティ特性は,分散が小さい傾向がある
◎社会的期待が強いパーソナリティ特性は,年齢とともに分散が小さくなっていく傾向がある
では,こちらの論文を見てみましょう(Social expectations as a possible mechanism for adult personality change: Limited empirical evidence for the social investment principle)。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?