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連続的創始者効果とは
今日は,『格差の起源:なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか』(オデッド・ガロー著,2022年,NHK出版)から,「連続的創始者効果」について書かれた一節を紹介したいと思います。
著者
著者のオデッド・ガローは,イスラエル出身でアメリカ合衆国の経済学者,ブラウン大学経済学部教授です。人類の歴史全体にわたる発展のプロセスを研究しているそうです。この本も,まさにその内容が反映されています。
連続的創始者効果
本全体の紹介はまた次の機会にするとして,この本の中に書かれていた「連続的創始者効果」というのが面白くて,記録しておこうと思ったのでした。
まず,オウムの例が書かれています。
ある島に青,黄,黒,緑,赤の5種のオウムが棲みついているところを想像してほしい。5種はみな,この島での生存に同じ程度まで適応している。ところが島が台風を襲い,わずかな数のオウムが遠く離れた島に吹き飛ばされた。この小集団には,元の5種のオウムがみな含まれている可能性は低い。おおかたが赤いオウムかもしれないし,黄色や青かもしれない。そして,新しい島をほどなく埋め尽くすことになるその子どもたちは,親の色を受け継ぐ。したがって,新しい島で発展するオウムのコロニーは,元の島にいたコロニーより多様性が低くなるだろう。さらにその第二の島から第三の島に少数のオウムが移住したら,その集団の多様性は前の二つのコロニーの多様性よりさらに低くなっているだろう。こうしてオウムが,生まれた島で変異が起き得るペースよりも速く新しい島に移り棲む限り,元の島から(連続的に)遠くに移住するほど,集団内の多様性は低くなっていく。
集団が移動する際に,ボトルネックのように一部だけが移住していく様子を,オウムで表現した文章です。
ちなみに,この記事の見出し画像は,この文章を改変した文章をChatGPTに読み込ませて描かせたものです。なかなか良い解釈をして,いい絵を描いてくれるものです。
人間の場合
さて,現在世界中で生息している私たち人類は,アフリカから世界中に広がっていきました。
アフリカからの人類の移動も,このオウムの例と同じようなパターンをたどったと考えられます。最初の集団はアフリカを出て,近くの食べ物が豊富な地域に落ち着きます。おそらく,アフリカの中の多様な人類のうち,一部だけが定住したのではないでしょうか。
移住した先で人口が増えて,人口を支えきれなくなると,その中の一部が別の場所へと移動していきます。
さらに移動した先で人口が支えきれなくなると,その一部が次の場所へと移動していきます。
結果的に,アフリカを出てアジア地域にまでたどり着いた人類は,おそらくアフリカを出たときに比べると,ずいぶん遺伝的には多様性が失われていると想像されます。
創始者効果
「連続的」がつけられていない「創始者効果」もあります。そもそも「連続的」がついていない創始者効果のほうが一般的ではないかとも思います。
創始者効果は,少数の隔離された集団から集団が構成されるときには,もとの集団とは異なる遺伝子頻度の集団ができあがることを意味します。これが連続的に生じた,ということで「連続的創始者効果」と記載されているということですね。
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