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ブルシット・ジョブのパターン

今回は『ブルシット・ジョブの謎:クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』という本の紹介です。「ブルシット・ジョブ」という呼び方も気になるのではないでしょうか。いったいどのような「ジョブ(仕事)」のことなのでしょうか。

もと本

この本にはもととなる本があります。それがこちら,『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』です。こちらの本もざっと読んだのですが,400ページ以上もある,とても読み応えのある本でした。

新書のほうは,このもととなる本の解説という位置づけです。

ブルシット・ジョブとは

ブルシット・ジョブというのは,「完全に無意味で,不必要で,有害でさえある雇用の形態」とされるものです。あってもなくてもいいし,それどころか何かのダメージすらもたらすような仕事のことを指すようです。

より正確には,「被雇用者本人でさえ,その存在を正当化しがたいほど,完璧に無意味で,不必要で,有害でさえある有償の雇用の形態である。とはいえ,その雇用条件の一環として,被雇用者は,そうではないととりつくろわねばならないと感じている」(p.66)というもののことを指すそうです。このように書くと,なんとなく心当たりがあるような気がしてきます……。

ちなみに,ブルシット・ジョブは本の中で「BSJ」と略されています。

ブルシット・ジョブの5類型

おそらく,ブルシット・ジョブのパターンを見ると,この仕事がどのようなものなのかがよくわかると思います。もとの本の中でも,ブルシット・ジョブには5つのパターンがあることが示されています。

1.取り巻き(フランキー):些細な仕事を行うことで大物や権力者を喜ばせようとする人。誰かを偉そうに見せたり,偉そうな気分を味わわせるという,ただそれだけのために,あるいはそれを主な理由として存在している仕事。ドアマン,受付嬢,秘書など。

2.脅し屋(グーン):雇われて人々を脅したり危害を加えたりする犯罪者。その仕事が脅迫的な要素をもっている人たちであり,その存在を他者の雇用に全面的に依存している人たち。軍隊,ロビイスト,企業弁護士,広報専門家など。

3.尻拭い(ダクト・テーパー):組織の中に欠陥が存在しているためにその仕事が存在しているにすぎない被雇用者。誰も修正しようとしなかったシステム上の欠陥の後始末をすること。しわ寄せが下請けにもたらされることなど。

4.書類穴埋め人(ボックス・ティッカー):ある組織が実際に流行っていないことをやっていると主張できるようにすることが,主要ないし唯一の存在理由である被雇用者。官僚主義的な手続きやお役所仕事を行う人々。文書の体裁をいい感じにする仕事など。

5.タスクマスター:不要な上司や,不要な仕事をつくりだす上司。

これらの他にも,ブルシット・ジョブに当てはまる可能性のある仕事はあるようです。また,これらのどれかだけに当てはまるとは限りません。複数の領域にまたがっている可能性もあるそうです。

全面的官僚制化

ある程度長いあいだ仕事をしていると感じるのではないでしょうか。「何かをするときに,昔よりも余分な手続きが増えている」という感覚です。

社会のなかで全面的に官僚制的な論理が浸透していくことを,「全面的官僚制化」と呼んでいます。

ちゃんとやることの裏返し

大学の中も,同じです。旧態依然とした大学では「なあなあ」で通じていた仕事が数多くあります。もちろんそこでもうまくいかずに「尻拭い」をしていた人たちはたくさんいることでしょう。また,私が大学生の頃の大学の対応というのも不親切なもので,改善を申し出ようにもどこにいったらいいのかもよくわからないような状態でした。

今の大学は昔に比べると,学生にも学生の親にもとても親切です。さまざまな業務が見えやすくなっていますし,トラブルが極力起きないように,ひとつひとつの手続きが何重にもチェックされています。

この「何重ものチェック」がくせものなのです。以前は適当になんとなく,阿吽の呼吸で行われていた手続きが「改善」され,二重三重にチェックされるようになったことで,書類は増え,確認する人も増えていきます。そして,何かトラブルがあればさらにその手続きが増えていくのです。マニュアルをつくる仕事が増え,その内容を確認する仕事が増え,さらにチェックする仕事が増え,さらにそのチェックを確認する仕事が増えていきます。社会のなかでどこにでもあるこのような状況が積み重なることで,どんどんブルシット・ジョブが増加していってしまうということなのでしょう。

日本で何か導入されるときの様子も思い浮かびます。仕事が下請けに回され,さらにその仕事が下請けに回され……そのあいだでペーパーワークをするだけで発生する多くの仕事が存在します。非常に非効率だと思うのですが,このような状況もブルシット・ジョブを多数生み出す温床ではないでしょうか。

前年の踏襲

もうひとつあるのが,前年度の踏襲です。それぞれのセクションに前年度の予算に従って次の年の予算が割り当てられるのですが,そのセクションにとっては次の年の予算を減らされないように,無理やり何かの仕事を作ろうとします。そして,無用で何の意味なのかよくわからない仕事が増えていくというパターンです。

これもよく目にしますね。

仕事について考えさせられる本です。まだ読んでいないのであれば,ぜひどうぞ。

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