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研究世界の多様性

学部生の講義では研究を取り巻くイメージをなんとかうまく伝えようと思って,たとえを使うことがあります。

あれこれといくつか考えてみたのですが,その前にどういう状況になっているのか,自分自身の認識についてざっと現状をまとめてみようかと思います。


〇〇学

「〇〇学」というカテゴリがあります。

自分自身は心理学というカテゴリに入っていて,その中の下位カテゴリとしてパーソナリティや発達,その他いくつかよくわからないカテゴリに手足を突っ込んだような状況にあります。

大きなカテゴリの中に小さなカテゴリがあって,その下にさらに小さなカテゴリがあるといったように,カテゴリは入れ子の構造のようになっています。でも完全に入れ子ではなく,あるカテゴリと別のカテゴリをまたぐようなカテゴリを作ることもあります。

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新しいカテゴリ

私の共同研究者にはお医者さんもいますし,心理学の隣接領域の研究者もいます。

ある研究者はどこかのカテゴリだけにとどまっているわけではなく,自分自身の興味・関心に従ってどんどん移動したり,時に新しいカテゴリを作ったりもします。

新しいカテゴリはひとりだけで作るのではなく,複数の研究者が寄り集まってカテゴリが形成されるイメージです。人が集まればそこに集団ができ,学問分野が形成されるというイメージです。

私の指導教官は発達心理学者でしたが,キャリアの最後の方は子育ての歴史研究をしていました。もしその研究に研究者が集まってきて色々なテーマで研究が展開すれば,「歴史・発達心理学」という(名称が適切かどうかは分かりませんが)新しい学問カテゴリができ,研究会が発足し,さらに人が集まってその研究領域が盛り上がっていけば学会が発足し,海外の研究者もそこに参加してくれば国際学会へと発展していくかもしれません。

カテゴリの数

日本国内だけでも,とても多くの数え切れないほどの研究カテゴリが存在しています。

学会名鑑というサイトがありますので,検索や一覧で表示してみると,その数の多さや多様さがわかります。

心理学の関連学会については,心理学諸学会連合という国内の心理学関連学会が集まった団体があります。そこには,50以上の学会がリストに表示されています。それぞれの学会の会員数は数百名から数千人,中には3万人近くの会員を擁する学会(日本心理臨床学会)もあります。そして私も含め、ほとんどの心理学者はこの中で複数の学会に入っています。

日本心理学諸学会連合 加盟学会一覧

心理学だけでもこのような状態なのです。他の学問分野についても,多くの学会が存在することでしょう。

遠くから見ると

学問についてのいろいろな議論を見ていると,「遠くから見ると小さく見えるんだな」と思うことがあります。

どういうことかというと,「〇〇学なんてこういうものじゃないか」とカテゴリをまとめて論じる時に,上で説明したような,ある学問の中だけでもとても範囲が広く,多様で多くの研究者がそこに参加しているということが忘れられている(のか,気づかれていないのか気づこうとしていないのか)ように思うのです。同じ学会にいる研究者の間でも,うまく話が通じない(とても苦労する)くらいの多様性があります。

これは「〇〇大学生は」「最近も若い者は」「〇〇県の人は」「〇〇国の人は」「女(男)っていうのは」という話をする時と同じような構造ではないでしょうか。

そのカテゴリの中にいると内部の多様性に気づくのですが,外からは同質に見えるということです。

同じことの繰り返し

これは,自分自身への戒めという意味もあります。

往々にして人の集まりを遠くから見ると等質に見え,中に入ると相違に目が向くものです。学問の世界でも同じようなことがあり,そういうことには比較的気づきやすくありたいと思っている心理学者でも,なかなかそこから逃れることはできません。

何度も同じことが繰り返されるのですが,なかなかなくならない物事の見方だと思います。最初からそれをやめるのは難しいかもしれませんが,自分で気づけるようになりたいものです。

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