もののけの命の森へ
生きよ
という声が
夜のタタラ場に響く
命あるもの
なきものに
語りかけるように
歌いかけるように
でぃだらぼっちが
月の明かりに
目を覚ます時
命あるもの
なきもの
みな神を畏れ
逃げ隠れる
隠れぬのは
森に生きる
シシ神の愛する姫
魔犬に愛され
人に棄てられた
愛を知らぬ姫
黒曜石の小刀を
蝦夷の子から与えられ
人の涙を初めて知る
命あるもの
なきもの
幻
みな心なしに
生きはしない
心ありての
命だから
争いを拒まぬ
女(め)の人らの心
神を忘れ
祟りを畏れぬ
その強さが
憎しみを枯らすことなく
神の怨みに負ける
どれほどの
神の天罰が
くだろうか
天罰は
死
を与うること
天罰は
生
を与うること
命あるものから
心を奪い
命なきものには
心を与う
もののけの
生きて死ぬ
この森に
命の集う
でぃだらぼっちが
そびえ立つ
朝日に消え
二度と戻らぬ
その命