なきむしのたまご

むかしむかし あるところに
なきむしのたまごがあった
ちいさな ちいさな そのたまごは
ひとりぼっちで ねむってた

あめがふった あるひのあさ
なきむしのたまごは ぴりりとわれた
ちいさな ちいさな たまごのなかから
ちいさな ちいさな なきむしがうまれた

なきむしは ともだちがほしかった
なきむしは やさしくされたかった
だれかのやさしさに ふれたかった

はやく おおきくなりたいな
そしたらきっと だれかにあえる
きっと きっと だれかにあえる
あいのなかで なみだをながしたい


なきむしは ひとりぼっちで
ひろいのはらを あるいてた
そらからふってくる おおきなしずくは
おおきなくもの なみだだった

どんなにつよい くもだって
なみだをながす そんなひもある
なきむしはすこし ほっとした
いつか くもにあいたくなった

なきむしは おおきな きにのぼった
なきむしは ちいさな てをのばした
どこまでもひろがる そらにむかって

はやく おおきくなりたいな
そしたらきっと くもにあえる
かなしみを わかちあいたい
ともだちに なってくれるかな？


たかく たかく てをのばしても
さわれるのは くものなみだだけ
なきむしは あきらめて ねむってしまった

めがさめた なきむしは
おおきな つばさを もっていた
そらは どこまでもあおくて
くもは どこかへきえていた


とおく とおくへ とんでみた
なきむしは もう なきむしじゃない
きれいな つばさだね
だれかのこえが きこえてきた

もっと おおきくなりたいな
きれいな つばさと ほめてくれた
だれかを さがしにいきたいな
ありがとう と つたえたいんだ

ありがとう と つたえたいんだ