むかし噺
目を開けば、そこは見知らぬ人々のいる街。
そうなるとも知らずに袋へ逃げ込んだのだけれども、先を読めずに上手く乗せられてしまったらしい。
あいつ、騙したんだ。
そう思った途端にふつふつと怒りが沸くけれども、そんな力を使うのも勿体無い程くだらない。
そうか…愛されてなんかいなかったんだ。
現実を見たら、誰だって分かる答えなのに。
ヒトは、生まれた時から未熟児なのだという。
小さな生き物ほど、何故かヒトは可愛がって飼い慣らそうとする。
大きなものに畏れを抱くのは無理もない本能だ。
脳科学が進めば進むほどに、知りたくないものまで見つけてしまう。
あぁ、僕らは知りたい事以外を見つけた時に、何故面白く思えないのだろう。
誰もが自分勝手な世界なのだ。
偽善で成り立っているのがこの世界なのだ。
時に、それを疑う声も空に響く。
真は何処かと問う声が、あちらこちらで不意に聴こえる。
シンとは何か。字に惑わされるな。
知りて尚悩むくらいなら、構えていれば良いのに。
度胸の無いまま生まれて、生死の狭間から這い上がってやっと、この世で生きる道が見つかる。