Primitive〜Pentax SV,SP
2010年ごろの話だけど、どこの中古カメラ店に行っても見つかるカメラがPENTAX SPだった。
言い方に語弊があるかもだけど、それだけ玉数があると言うのは、それだけ売れたということだ。
上のビートルズの面々が手にしているのもPENTAX SPだ。こういった写真もSPがバカ売れした要因だっただろう。
おもしろいのはジョージが付けているレンズがペンタックスのものではないところ。
シュナイダーとかだろうか、それともメイヤーとか?
こういったところからも、これらの写真が宣伝用ではないのが分かる。
M42のスクリューマウントなので、そりゃもうレンズは選びたい放題ある。
ユニバーサルマウントなので色んなメーカーのものが数多ある。
SV
1952年に旭光学(ペンタックスの前身)が「アサヒフレックス」という日本で最初の一眼レフカメラを作ったが、ペンタプリズムは搭載していなかったので、ファインダーを通して見る画像は上下左右が逆像になるものだった。
それから5年後にペンタプリズム搭載のAPが発売になる。
ここからK、S2、S3と改良を重ね、S3の一年後にセルフタイマーやフィルムカウンターの自動復元を搭載したSVが発売された。
S3で「自動絞り」を実現していたのだけど、自動絞りとはシャッターを押して露光する瞬間だけ設定した絞り値になるもので、ファインダーを覗いた時には絞り開放になっていて明るい状態でピントを確認できる。
対して「実絞り」というのがあって、これはピント合わせ時にも設定した絞り値が反映されているので、ファインダー内は絞り値によっては暗くなってしまう。
その使いにくさを克服したのが自動絞りというわけだ。
SP
SPは露出計内蔵のもので、1964年に発売される。
露出計がTTL(Through The Lens)測光で、これを実現したのは世界で2番目とのことだ(1番は1963年に東京光学が発売したトプコンREスーパー)
それまでの露出計はレンズを通さずに別の計器で測るものだったが、この内蔵TTL測光はレンズを通して測光するから、より精度の高い露出を得ることができる。
この露出計の駆動には水銀電池HBを使うが、現在では水銀電池が販売されていないのでLR41にアダプタを噛ませて使う。
この電池室が電池を入れっぱなしにしたことで液漏れし腐食しているもののなんと多かったことか。
SPを買う際に最初に見るところだった。
どこにでもあって、しかも安価だったのだけど、まさに玉石混交で、SVは露出計が内蔵されてないからまだマシなのだがSPは実際撮ってみないと露出計の精度は分からないし、だいたい計器として動くかどうかも分からない。
他にもスローシャッターに粘りが出ていたり(注油で治るならいいけど、ガバナーが逝ってるヤツだとちょっと修理が高価になる)、酷いものになるとシャッター幕がボロボロだったり。
SVは初めから割と程度のいいものが手に入ったが、SPに関してはハズレを3台くらい引いた。
結果としてブラックが揃ったのでいいのだけど。
森山大道氏も若き日に精神的にドン底状態となって一度写真から離れた時代があって、そこから復帰した時に出した写真集「光と影」を撮り下ろしたのはペンタックスSVとタクマー35mmだったとしている。
カメラとしての性能はともかく見た目で好きだったのはSVの方だった。
セルフタイマーがボディ前面ではなく、巻取りのノブと同軸にあるのもいい。
ビートルズだの、森山大道さんだののことを知ったのは購入後だった。
我ながらカメラを選ぶ目は間違ってなかったと悦に入っていたイージーライダー(すぐノル)なぼくだった。