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御深井大堀
ぼくの祖父は染色工であった。
名古屋城の堀の北側に工場があって、そこへ自転車で通っていた。
当時の堀は今のような柵もなく、日曜ともなれば太公望が挙って釣り糸をたれるようなところでもあった。
祖父は釣り好きな人で、寝ぼけ眼のぼくを引きずっては、ここへ釣りに来たのである。
釣果は、たまに鮒が釣れるくらいのものだったが、それでも存外に楽しかった記憶がある。
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こうして久しぶりにここに立つと、藍の染みた爪のゴツい指先で、針に餌をつけてくれた祖父の姿を思い出すのである。
ぼくの祖父は染色工であった。
名古屋城の堀の北側に工場があって、そこへ自転車で通っていた。
当時の堀は今のような柵もなく、日曜ともなれば太公望が挙って釣り糸をたれるようなところでもあった。
祖父は釣り好きな人で、寝ぼけ眼のぼくを引きずっては、ここへ釣りに来たのである。
釣果は、たまに鮒が釣れるくらいのものだったが、それでも存外に楽しかった記憶がある。
こうして久しぶりにここに立つと、藍の染みた爪のゴツい指先で、針に餌をつけてくれた祖父の姿を思い出すのである。