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諏訪の矜持〜EPSON R-D1(s)
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孤高のレンジファインダー
まぁこう書いちゃうと違うような気もしてしまうけれど、実はこのカメラが世界初のレンジファインダー・デジタルカメラなのである。
ライカのそれは2006年のM8からだが、R-D1は2004年に発売されている。
ぼくが中古のR-D1を手に入れたのは2011年くらいだったから、もう発売後7年くらい経っているのだけど結構いい値段が付いていた。
スペックこそ大したことはないカメラだが、好事家を唸らすディテールが満載で、そういった方面から絶大な支持を得ていたカメラだった。
孤高の画
有効画素数は610万画素。
最高感度はISO1600。
APS-CのCCDセンサー。
もう当時ですらロースペックだったが、このセンサーの吐き出す画はなんとも言えない特徴があった。
濃厚とひと言では言い表せないくらいの厚みのある階調。
シャドー部の粘りは実に豊かでRAWで弄くり回さなくてもJPEG撮って出しでも十分だった。
言い換えてみると、それらはフィルム的だと言えた。
例えば2000万画素のカメラと普通のネガフィルムカメラとで同じ風景を撮ったとする。
無限遠付近の高周波なものはフィルムでは解像しないが、2000万画素もあるカメラなら十分に、もっと言えばトリミングしても耐えうるほど解像する。
でもぼくらが写真を見るとき、果たしてそういうことを求めるのだろうか、と思う。
8Kの時代を迎えて、なにを眠たいことを言ってるのかと言われそうだが、集合写真を撮ったら目尻のシワや毛穴まで写っちゃうんですよ、奥さん。
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EPSON
カメラメーカーとしてはあまり聞かないのではないだろうか。
プリンターなどではご存知のメーカーだとは思うが、カメラとなると思いつく機種がない(コンパクトカメラなどいくつか出していたようだけど)
ぼくは数回転職をしているが今から20数年前くらいに勤務していた会社は、このEPSONの関連会社で、入社後の研修では諏訪湖の辺りにある施設にも行った。
内容はすっかり忘れてしまったが(笑)、諏訪湖を含めた美しい景色はいまだに脳裡に焼き付いている。
精密機械の施設は水のきれいなところにあることが多いが、それは精密機械を作るのに空気の汚れと資材を洗浄する場合に使う水の汚れは禁物とされていたことから。
現在は時計以上の精密部材、機器は空気も水も自然界以上にフイルターで除去されるので立地は川の水がきれいとか空気がきれいはあまり関係ないらしい。
あの諏訪の景色を見ればなるほど、あの辺りで精密機械産業が発達したのは頷ける話だ。
コシナ
このR-D1は同じ長野県にあるカメラメーカーのコシナとの協業によって生まれている。
ボディは同社の「BESSA R2」がベースになっていて、EPSONはデジタルプロセスの技術を提供する事で実現したものだ。
特筆すべきは等倍ファインダー。
完全に両目を開いて違和感なく撮影ができた。
またコシナのフォクトレンダーブランドのレンズも素晴らしく、特にノクトン40mmのレンズがとても気に入っていた。
描写はオールドレンズのように柔らかく、かといって解像力も悪くない。
本当に使いやすいレンズで、なによりMマウントのLブランドよりもコスパに優れているのが大きかった。
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カメラとしての魅力
ムーブメントを軍艦に配し、撮影可能枚数・バッテリー残量・ファイル形式/記録クオリティの選択・ホワイトバランスを指針式で表示。呆れたことに本当にアナログで、マニュアルに針のキャリブレーション方法が記載されていた。電子シャッターだけれど、シャッターチャージは手動巻き上げ。リワインドノブに見立てたダイヤルで各操作を行えたり、液晶の背面にはフイルム感度表に見立てた焦点距離換算表。
デジカメなんだから、こんな面倒は廃せばいいのに、わざと巻き上げなんかのシークエンスを残す。
Mマウントにした事で新旧のさまざまな名玉が使えるのも(フランジバックの制約はある)それまでムキになって必死でデジタルを否定していた「ねばならぬジジイ」供にヨロメキを与えるのには充分だった。
しかもそのためにローパスレスなのだ。
もう完全に趣味で作ったカメラだ。
わかる人わかってもらえたらいい。
そういうのが見え隠れするのが堪らんという層が必ずいるのだ。
そういう意味でコシナもEPSONも好きものがノリノリで作った趣味のカメラなのだろう。
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R-D1は初め知人から譲ってもらったものだったが、その後一度手放して、またR-D1sを買い直した。
マイナーチェンジ版で大きく違うところはない。
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ライツのレンズもいくつか。
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やはり今見てもポジフィルムを見ているようだ、と思う。
ハイライトは抜けてしまうけれどシャドーの粘りは素晴らしい。
少々気になるところはあって、せっかく等倍ファインダーなのにブライトフレームが自動で切り替わらない事。R-D1は28/35/50mmとレバーで切り替えるのだ。
ここら辺はライカのそれに見劣りする気もするが、まぁLマウントなんかにアダプターを噛ませて使うとかならかえって、いちいちレンズごとにアダプターを用意しなくて済むからいいよな、とか。
ライカと比べて、といえば操作感もまるで違う。
カメラ本体はベッサなので、そう言ってみても仕方ないのだけど、よく使ったM5に比べて巻き上げひとつ取っても滑らかさや作動音が違う(デジタルライカに巻き上げはない)
まぁ値段も違うんだから当然か。
惜しむらくは、この名機が手元にもうない事だ。
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