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日はまた昇る(148回目)

懐かしい本を書棚で見つけた。
「日はまた昇る」
ヘミングウェイの出世作であるこの本を最初に読んだのはいつだっただろう。
大学生の頃だったか、或いはもう少し後だったかも知れない。
エピグラフの “You are all a lost generation” も何となくピンと来なくて、小説の中で取り上げられる第一次世界大戦中に青春時代を過ごした人たちのPTSDのような絶望感は、バブル真っ盛りでお祭り騒ぎの実際からは想像も覚束なかった。

タイトルの「日はまた昇る」は決してポジティブな意味で使われていない。
日がまた昇ってしまう、というやるせなさが先に立つのだ。
ぼくには、この「やるせなさ」には覚えがある。

夢や希望、そして人生の目標。
簡単に口にする言葉だけれども、そんな「たかが」言葉に押し潰される人をたくさん見た。
若い頃には、それを探し見つける事こそが生きる証だと植え付けられ、ぼんやりと見えてきたそれに向かう時、何かの理由で挫けてしまった人たちに対する社会の仕打ちも見てきた。

ジェイクやブレッドたちと同様に、虚無感に苛まれながら、自堕落に享楽に耽る日々。
ぼくは自分を騙す事を覚えて、何とか誤魔化して現在ここにいる。
彼らとぼくの差なんて、本当に少し力を入れたら壊れてしまうくらいの薄氷でしかない。
もう太陽が昇らなければいい。
そんな事を願い続けた日もある。

ぼくはいつまでぼくを騙し続けられるのだろう。
その罪はどんな形で裁かれるのだろう。
ぼくは未だ、その闇から完全に抜け出た訳ではない事を思い知る。

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