フワトロZunow(113回目)
このZunowCine13mmF1.9というレンズは1950年代から1960年代に造られた8mmカメラ用のレンズである。
昭和5年に設立された「帝国光学研究所」から始まるメーカーで、当時のニコンなどと同様に主に軍向けの光学機器を開発製造していたが、海軍から研究依頼をされた50mmF1.1が製品化されたのは戦後のことであった。
昭和31年にズノー光学工業と社名を変えカメラなども製造したが昭和34年には製造を中止、昭和36年にはヤシカに買収されている。
ライカマウントをはじめ、コンタックスやニコンSマウントのレンズも製造していて、高速のレンズであるから今でもライカマウントなどに人気がある。
ぐるぐるのバブルボケなんて書かれていたりするが、ぼくの個体は別段そんな兆候はない。
むしろ開放でも四隅まできっちり描かれている。
だが、その開放だとベールがかかったような描写になって、はじめはとんでもない曇り玉を選んでしまったと後悔したものだ。
少し西にある大きな樹木もてっぺんのあたりは色づいてきた。
遠景、近景。
実はこのレンズ、気になっていたことがあって一度バラしている。
ヘリコイドが逆向きなのだ。
つまりINFと描かれた方にヘリコイドを回すとピントが手前に来てしまう。手前に合わす方へ回すと遠景にピントが来てしまう。
それでなんの気の迷いか、レンズを後玉、つまり後ろの方からバラしてしまった。
結果としては偶然なのかなんなのか、ちゃんと機能するようになったのだが、外す必要のなかった余計なヘリコイド部分のネジを外してしまったのでエライ目に遭った。
ネジといっても直径1mmもあるかないかの極小マイナスネジで、外すのはよかったのだけど元に戻すのが大変に骨の折れる作業になってしまった。
こういうときは「ハズキルーペ」が欲しい。
ただでさえ老眼なのに、こういう細かな作業は地獄であってネジをなくさないようにするのが精一杯である。
まあ元々レンズ自体も長さにして3cmそこそこ。
直径も2cmくらいなのだから、それを構成する部品などおして知るべしである。
レンズ自体も1cmあるかないかの直径で、偶然治ったというのも多分2枚あったうちのどちらかのレンズがどうにかなっていたのではないかと推測している(前にバラしたことのある人が前後逆に組んでしまった、とかね)
いずれにしても、もう2度とバラしたくない。
昨今はなんでもかんでも「フワトロ」が流行る。
オムライスもフワトロ、トンカツもフワトロ、お好み焼きもフワトロ。
そのうちにらみんな歯とかアゴがなくなるのではないか、と思うほど「柔らかい」のが珍重される。
テレビのグルメ番組なんかを見ていても、二言目には「やわらか〜い」なのである。
ぼくは昔の人だから火を入れるならちゃんと火の入ったものがいい。
オムライスもフチに焦げ目がつく程度に焼いたものがいいし、お好み焼きやトンカツもちゃんと噛みごたえのあるのがいいのだ。
そうなると、このZunowの描写は今どきなのである。
F5.6くらいまで絞ればそうでもなくなるが、開放あたりでは果たしてピントが合ってるのかそうでないのか分からないほど「フワトロ」なのである。
そういうレンズはタンバール90mmをはじめいくつかあるのは知っていたが、実際所有するのは初めてである。
なかなかの暴れっぷりだ。
ペンタックスQ10のセンサーサイズは1/2.3型で、コンデジなどでは一般的なもの。
13mmのレンズを付けた場合73mm相当の画角になる。
それでもイメージサークルは8mmフィルムよりも少し大きいらしく、周辺に関しては通常写らない部分となる。
まあ要するに真ん中ら辺だけ見てね、という話。
どうも長くなっていけない。
誰も読まねェよなァ、こんなの今さら。
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