真性S女 アトリエ・エス と行く万葉のたび
第二十五回 万葉開巻第一発目のうた
ここらでとっておき、万葉集開巻第一番行きましょうか。
雄略天皇の、泊瀬で菜摘していた乙女への求婚歌と云われます。
天皇の御製歌
籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串し持ち この岳に 菜摘ます兒 家聞かな 告らせね そらみつ 大和の國は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ われこそは 告らめ 家をも名をも
まず、徹底的に相手の持ち物を嵌める。そうです、好いことをいえば好い事が起こるのです。
「おお、なんといういいお籠をお持ちなんでしょう、ヘラもまあまあ、なんといういいおヘラなんでしょう」
恋しい相手の『魂』の染み込んだ、籠やヘラはただの籠・ヘラではない、それぞれ『お籠』『おヘラ』、これもいずれ云いましょう。
さあ、一巡の手続きを踏んだ後いよいよ本題です。
「家を聞かせてください、名前を教えてください」
この時代、家と名前を告げるというのは求婚の許諾を意味します。
ねえ。いつぞや云いましたね。
ここが肝心です。
女性たるものこれを請けて、軽々しく「あら嬉しい! 私~」
などと言ってはいけません。
そんなことをしたら男の気持ちはペッチャンコ。
こんなときは、真っ赤になってなにも言わない、
これが正解です。
結婚指輪をすっと渡されたときは、俯いて「少し考えさせてください」
と、間合いをとることで相手を余計熱くさせることができます。
はたして天皇もいよいよ熱くなって、身分を明かし、こちらから家と名前を告げようと畳み掛けます。
うーん…
私も一度くらい名前を聞かれて、
「北茨城に棲息する真性S女のアトリエ・エスよ!」
と応えてみたかったナ、これがホンネ。
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