要旨:「社会インフラ」は「インフラ」の一部
交通、通信、電力、水道、廃棄物処理、公共施設、治水、防災等を総称して 「インフラ」 または「インフラストラクチャー」または「社会資本」と表現すべきである。「社会インフラ=Social Infrastructure」は、これらと同義ではなく、医療(病院)、教育(学校)、治安(警察)、公共施設(公園、公会堂、図書館、公営住宅等)など、「インフラ」の一部を構成する社会的サービスのことである。
OECD(経済協力開発機構)をはじめ、英国、米国では「インフラ=Infrastructure」と「社会インフラ=Social Infrastructure」は明確に区別して使われている。
「インフラ」を「社会インフラ=Social Infrastructure」と表現することは、明らかに誤用なので止めよう。
また、「インフラ」の訳語として「社会基盤」が用いられてきたが、「社会基盤」が「社会」と「基盤」との合成語であるとして多くの辞書に見出し語となっていないために、多くの翻訳ソフトウェアは「社会基盤」を「社会=Social」+「基盤=Infrastructure」=「Social Infrastructure」と翻訳する。これからは、この点も注意が必要だ。
ChatGPT3.5に「社会インフラとは?」と聞いてみると
ビジネス英語辞典に「社会インフラストラクチャ―」の説明
刊行された辞典に「社会インフラ」の見出し語はない。「社会資本」はあるが、「社会基盤」も見出し語としてはない。これらは、辞書編纂者にとって、確固として一定の意味を持つ語と認識されず、「社会」+「インフラ」、「社会」+「基盤」の合成語として扱われるからである。
2009年に小学館から出版された「プログレッシブ ビジネス英語辞典」の見出し語”Infrastructure”に「公衆衛生,教育などは社会インフラストラクチャーと呼ばれることが多い」という説明文があるのが、見つけられた唯一の例外だ。
「インフラ」はますます重要に
ここ数年、マスコミ各社の報道において、企業・団体の誤ったプレスリリースをそのまま引用して報道するケースを除いて「インフラ」を「社会インフラ」と誤用するケースは大変少なくなった。米国大統領一般教書演説 "State of the Union Address"や英国政府による国家インフラ戦略 "National Infrastructure Strategy"、世界銀行のグローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ "Global Infrastructure Facility"の”Sectors and Themes”などが注目される中で ”Infrastructure”の使われ方が浸透したからだろうか。
なお、Infrastructure、インフラストラクチャー、インフラということばの成り立ちと歴史については、別稿で詳述する。
ChatGPT-4に聞いた:インフラと社会インフラの違いは
Google Bardに聞いた:インフラと社会インフラの違いを教えて
ChatGPT-4に聞いた:河川改修、ダム建設などの治水事業、舟運や動植物の保護等の利水事業は、経済インフラと社会インフラとのどちらに属しますか。