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KC Interview Vol.7 採用側の想い

全7回におよんだKPMGコンサルティング人材開発室ディレクターの金子さんとのインタビュー記事も今回で一区切り。
 
コンサルティングファーム解体新書 KPMGコンサルティング
 
今回はちょっと踏み込んだ話も含め、採用側の想い、そして転職活動のあり方などについて語っていただきました。

書類審査の壁

ATJ 百瀬(以下、百瀬):
ここでぜひ聞きたいのが、採用プロセスについてです。中途採用のプロセスは、御社に限らず、どこのコンサルティングファームもまずは書類選考から始まりますよね。職務経歴書で提示されるのは、経験・スキルの部分のみで、コンサルタントの仕事が好きか嫌いか、という価値観の部分は見えてこないと思います。価値観を大事にされている御社では、どのように書類選考を行なっているのでしょうか。
 
KPMGコンサルティング 金子ディレクター(以下、金子D):
ご指摘の通り、書類選考段階で価値観を見るのは難しいので、弊社が求める基準に経験値がマッチしている方はできる限り面接に進んでいただくようにしています。
 
百瀬:
なるほど。時間もかかりますが、そこの間口を広げて、実際に面接でお会いして、話す中で‟価値観”の部分を確認していくわけですね。
 
その部分で、弊社のような転職エージェントが、もう少しお手伝いができれば良いのかもしれませんね。我々は御社に書類を提出する前に候補者と会って話しているので、書類に書ききれていない候補者の価値観の部分にまで触れているわけですから。
 
金子D:
そういうこともあって、最近はいろんな転職エージェントにお世話になっています。
候補者が何を知っていて何ができるかももちろん大事ですが、それ以上に、我々はコンサルタントを長く続けてほしいと願っていますので、転職エージェントのみなさんには、コンサルタントの仕事が好きかどうかの重要性をお伝えしています。
 
コンサルタントは、主役としてステージの中央で歌って踊れると思っている人は、入社しても長くは続かない傾向があります。そうではなく、人を裏方から支える、そういうことが好きな人を採用したいので、そこの見極めを、転職エージェントでもしていただけると助かります。
 
とはいえ、転職エージェントもビジネスとして行っているので、お互い歩み寄って良いプロセスを踏めると良いと思います。
 
百瀬:
ただ、そこがやっぱり弊社も悩ましいところです。会わないとわからない良さは絶対にあります。会ってもらうためには書類審査を通過しなければいけないですが、この書類だと難しいなぁ、と感じることは少なからずあります。
 
過去に、事業会社からコンサルティングファームへ転職された方で、年齢の高い方がいらっしゃいました。ご経験やお人柄、それこそ価値観の部分ではマッチしているのですが、年齢を理由になかなか書類審査を通過できませんでした。しかし、1社だけ、グローバルファームで書類審査を通過し、面接に進み、一次面接の評価が非常に高く、その後順調にプロセスが進んで、マネジャーとして内定が出たケースがありました。
 
もちろん、職務経歴書に今までの経験と今後のキャリアの方向性やモチベーションを記載するなどできる限りの努力はしたうえでしたが、書類審査の難しさを感じたケースでした。
 
金子D:
転職活動や就職活動で使われている今の書類形式にこだわらず、もう少し情報量を増やせるのでは、と個人的に思っています。生き様は顔に出るという通り、文字で得る一次元の情報よりも、履歴書に貼る写真には情報量が多い気がします。そうすると、自己紹介動画のような三次元の情報になれば、書類では伝えきれない情報が伝わると思うんですよね。
 
弊社の新卒採用では、書類審査ももちろんありますが、できるだけ直接会う機会を持てるように考慮しています。職務経験のない学生だからこそ、書類だけでは測れないものがあります。熱意やポテンシャルは、書類からはなかなか伝わってきませんから、会って話した方が、よっぽど正当に評価ができると感じています。
 
とはいえ、弊社に応募してくれる学生数は、ありがたいことに年々増加していて、一人一人と通常面接や、ケース面接を行うと、それこそ採用側の人手も時間も足りません。
 
ですので、オンライン、グループ面接など、さまざまな形式を積極的に取り入れています。ケース問題のようなお題を出して、それを説明する資料を作成して提出したり、回答を動画で提出したり、データを提示して、そこからグラフを作成して提出したり、コンサルタントとしてのスキルセットのベースとなる能力や素養があるかどうか、価値観の部分で向いているのかどうかを多角的に評価して採用するかどうかを決めるようにしています。
 
中途採用に関しては、弊社だけ独自の方法で採用を行うことも憚られるので、どうしても書類審査、面接、という流れになってしまいます。競合他社と同じ流れの方が、候補者のみなさんも同時に併願して応募しやすいですからね。

コンサルタント、転職エージェントに共通する第三者視点で価値を発揮すること

金子D:
新卒採用も中途採用も、ご本人の希望が叶わずお見送りになるケースはあります。今、転職市場はとても活発で、多くの企業と面接する機会があると思いますが、書類審査や面接で、失敗なしで一生終わる人はいないですよね。ただ、不採用になることって、嫌ですよね。嫌なことが重なると、元気が削がれていくと思いませんか。
 
百瀬:
確かに、1社落ちると、もう次の会社に応募する意欲すらなくなる時はありますよね。そこから学んで次に活かせば良いですが、一人で挑んでいると、元気が削がれてモチベーションも下がってくる懸念はあります。だからこそ、転職活動の際には、一緒に伴走してくれる転職エージェントを利用するのもひとつです。自分のことを理解し、聞こえのいいことだけではなく、時には厳しい言葉もかけつつ、一緒に走り切ってくれる、そんなリクルーターに出会えれば良いと思います。
 
金子D:
リクルーターは、キャリアにおけるかかりつけの医師のような存在ですね。そういう方に伴走してもらいながら進めていくのは良いと思います。
 
とはいえ、伴走者がいたとしても、やはり“落ちる”というのは嫌なものですよね。
特に、書類審査で落とされた場合、門前払いされたようで、ショックが大きいと思うんです。これが面接でダメだったとしたら、「あーあの会社とは合わなかったな」と言えますが、合う・合わないを候補者が確認できない状態で落とされる現状に、変化をもたらすことができないか、そんなことを考えています。
 
人生100年時代、転職を繰り返しながらそれぞれのキャリア形成を行うこの時代に、‟落ちる”というネガティブな経験が足枷になることなく、人材の流動性を活発化できれば、社会全体もよくなっていくように思います。
 
百瀬:
一昔前に比べると、転職活動がとてもカジュアルに行える時代になりましたね。転職したい人と、リクルーターをつなぐプラットフォームが充実していますし、その中でもAIを搭載しているプラットフォームなどは、その方の職務経歴書を読み解いて、おすすめのポジションを自動で提案してくれる機能も充実しています。
たまに、なんでこれ?というような提案もありますが。
 
金子D:
どんなポジション提案があったんですか?
 
百瀬:
候補者視点でプラットフォームを見るために、私も自分の職務経歴を登録しているのですが、つい先日きたダイレクトスカウトメールは、サファリパークの副社長のポジションだったんです。面接確約で(笑)
 
金子D:
ええ!それすごく興味ある!やりたいなぁ!(笑)
 
百瀬:
私はリクルーターとしてそろそろ10年くらい経つんですが、リクルーター職ではなく、また、私の今までのキャリア遍歴からの脈絡が全くわからない提案ではあったのですが、そのポジションをみた時に、ちょっと色々考えてしまったんですよね。このままリクルーターとして働いている私と、サファリパークにいる私を。
 
金子D:
そういった思いもよらない提案も、プラットフォームの機能の一つですよね。
キャリアを考える際は、今までの経験をもとに、その職種や業界に限定して考えてしまう節があると思います。例えば僕は、コンサルティング業界にずっといるので、この業界しか正直見えていませんし、それ以外を見るきっかけはほとんどないに等しいです。リコメンド機能でも、僕の場合はきっとコンサルタント職の提案になると思いますしね。
 
百瀬:
登録されている情報をもとにAIが提案すると、そうなりますよね。
 
金子D:
良い言い方をすると、専門性をもって掘り下げる、ですが、視野が狭くなる、というリスクもあると思います。それよりももっと、自分の世界を広げてくれるような、逆リコメンド機能があれば良いと思いませんか。キャリアだけではなく、動画配信サイトやECサイトでのリコメンド機能も、その人の趣向性から少し外したところを提案してくれたら、また違う気づきがあると思うんですよね。
だから百瀬さんのサファリパークのポジションは素晴らしい逆リコメンド!
 
百瀬:
そうですね。リクルーターの経験というよりは、子育ての経験が活かせそうですしね。とりあえず、もう一度募集要項を読み直してみます(笑)
おっしゃる通り、逆リコメンド機能があれば、思いもよらない新しい世界が広がるきっかけになる可能性はあると思います。ただ実はこういうことって、すでに人と人とのコミュニケーションから生まれていると思いませんか。
 
自分で登録したデータや、履歴からではリーチできない、その人の感情にまで触れられるのが、対話ですよね。
 
金子D:
プラットフォームの機能は充実してきていますが、転職エージェントの役割もすごく大きいと思います。候補者と話をする中で、この業界でこういう経験を積んできた、こういう意図で前回転職した、ということを丁寧に聞き取った上で、その人のキャリアの延長線上にある選択肢を増やしてくれるのが転職エージェントですよね。
 
「いや、こういうのもあるよ」って、なかなか自分では思いつけない転職の選択肢はあるわけで、これこそが、第三者として客観的に見ながらコミュニケーションすることの価値です。コンサルタントも、同じです。
 
全ての問題をクライアントだけで解決できるのであれば、コンサルタントという職業は世の中にいらないわけです。でも、そうではなく、その業界で深く長くやってきた人には、思いつかない解決策があったりするので、だからこそコンサルタントが第三者として客観的にクライアントが直面している問題を読み解き、問題解決のためのソリューションを提案し、伴走していくことに価値があります。
 
対企業に対するコンサルタントも、対候補者に対する転職エージェントも、第三者が持つ価値を提供しているという点では同じですよね。視野が狭くなってしまったり、外の世界を知らずに悩んでいる人や企業に対して、新しい視点を提供したり、問題を解決するお手伝いをすることで、世の中が少しずつでも良くなればいいな、と思います。我々も、その意識を持ちながら、周りの人や世の中が良くなっていくことに寄与できればよいですね。
 
僕の溢れる思いを、たくさん話してしまいましたね(笑)
 
百瀬:
いやいや、すごく楽しかったです。最高でした!


長い長い記事を最後まで読んでくださったみなさま、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!金子ディレクターと弊社百瀬が元同僚という縁もあってカジュアルなインタビューとなったこともあり、記事を通して金子ディレクターの温かい人柄も伝わっていれば幸いです。

また、インタビューにご協力くださった金子ディレクター、そしてその後の編集作業にご協力をいただきましたKPMGコンサルティングの皆様方にもお礼申し上げます。
 
さて、冒頭に「一区切り」と書きましたが、実は話し足りなくて金子さんへの2回目のインタビューもすでに行っております。少し間を置いてから2ndシーズンが始まりますのでそちらもお楽しみに。

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