KC Interview Vol.2 コンサル向き人材とは
前回からの続きで、KPMGコンサルティングの人材開発室ディレクターの金子さんと弊社の百瀬朝子のインタビューの模様をお伝えいたします。
コンサルティングファーム解体新書 KPMGコンサルティング
コンサルティング業界を目指すことを決めた若かりし頃の金子ディレクター、内定受諾後も色々と紆余曲折がありました。そして話は、どんな人がコンサルティング業界に向いているのかという方向に。
世の中を斜めから見る
KPMGコンサルティング 金子ディレクター(以下、金子D):
就職活動の開始が遅かったこともあり、そのときコンサルティング業界でも戦略系はすでに応募締め切りが過ぎていて、応募できる会社が会計系とIT系のみでした。その中から何社か受けて、内定をいただき、最終的には、会計系の2社どちらに行くかで迷いました。
2社とも大きなグローバルファームでしたが、1社は当時本国でちょっと問題がありまして。仮にA社としましょう。その影響で採用が一旦止まりました。そういうこともあったので、もう一方の会社、B社の内定を受諾しようと思ったところ、すぐにA社の採用が再開され、結果A社からも内定をいただきました。
ATJ 百瀬(以下、百瀬):
なるほど、そんな激動の時代に就職活動してらしたのですね。
金子D:
ええ。内定後、B社内定者のレセプションパーティに参加したんですよ。そしたら、内定者だけで300人くらいいて、その人数の多さに圧倒されました。内定者代表として挨拶をされた方もとてもしっかりした方で、すごいなと思ったのですが、同時に、ここは僕に合わないような気もしたんです。うまく言えないのですが。
百瀬:
なにかしら違和感があったんですね。
金子D:
そう、違和感があったんです。
確かちょうどその1週間後にA社の内定者レセプションがありました。そこでは、内定者で食事をして、親交を深めたのですが、B社に比べると、みなさんとても自由な感じでした。人数も20人弱だったので、ほぼ全員と話すことができました。その中でも印象的だったのは、「大学に入学したけど2留して、アフリカに行って何年間か過ごして、また違う学部に入り直して勉強していたので、実は来年30才なんです」というような面白い経歴を持っている内定者がいたことです。
僕は世の中を斜めから見てるんですよ、当時から。これは今も悪い癖で変わらないのですが(笑)
B社では300人の中の1人になって、しかも何だか背筋がピンと伸びるような、厳かな感じだった一方、A社は20人弱の小さな集団ですが、個性が溢れていて、世の中的に客観的にみると、この人どうなの?という人たちもいるのですが、そこが面白いなと思い、A社の内定を受諾することにしました。今でいうところの、多様性のある人材が集められていたのだと思います(笑)
会社名や組織が変わることに慣れた上での入社
百瀬:
学歴がきれいかどうかより、その人の資質を見抜いて採用決めているように思えますね。
金子D:
そう、こっちの方があっていると思いました。内定受諾してすぐに、社名が変わると言われました(笑)当時は社名が変わったくらいの話なのかな、と思っていましたが、実は世の中的には大改革が、大変動が起きていたんですよね。
両親にも言いました。「なんかね、会社名が変わるらしいんだよね。」って。うちの両親は元々、ビジネスをよく分かっておらず、外資系はなおさらで、「そんなことも世の中にあんのかね。」という反応でした。
そして、実は入社日にまた人事から言われました。
「会社名が変わります。」
またですか!ってなりました。
さすがにその時は親には言えなかったです。心配すると思いましたし、僕自身もこんなに会社名が変わることをきちんと理解していなかったので。
そんなことを経て、会社名が変わるとか、組織のあり方が変わるとか、統合したり分離したりと色々なことが起きることに対する耐性は、入社前にできていたように思います。自分のクライアントと自分のやっている仕事、この関係だけちゃんとしておけば大丈夫なんだと思わざるをえない環境で生きてきた感じがしますね。
キーワードはリセット?!
コンサルに向いている人の素質その①
百瀬:
確かに、この業界の歴史では、会社の名前が変わる、ブランドが変わる、組織が変わる、リーダーが変わる、ということはよくありましたね。
金子D:
そうです。だからこそ「この会社に所属している私」っていうものに大きな意味を見出す人は、コンサルティング業界に向いていないかもしれないと思います。
今自分がいる場所、それも大事ですが、最初に「私」が来る方がコンサルティング業界には合っていると。「私」があって、私の専門性や経験値やスキルや想いや色んなものがそこにあって、で、この「私」が今たまたま所属しているのが、それが弊社だったり、他の会社だったりする、という。
これからの時代、3年後にどうなっているか、ますます見通しをつけづらくなっていますからね。
百瀬:
その通りです。自分軸があれば、周りがどんなに変化しても、自分が揺らがなければ多分大丈夫なので、その都度合うところを見つけていけば良いっていう。確かにそういう考え方はコンサルタントならではかもしれないですね。
コンサルタントは、プロジェクトごとに良い意味でもリセットされますから。
金子D:
完全にリセットですね。社内転職のように思う方もいらっしゃるでしょう。
百瀬:
そうですね。環境もリセットされるし。その都度新しいメンバーで新しいクライアントの新しい課題に向き合うわけなので、自分自身もリセットしていかなきゃいけない。
そうなったときに自分軸がないと、こっちでは上手くできたけどこっちでは上手くできないみたいなことが起こり得ますね。
金子D:
いい意味で、うまくリフレッシュして前に進める人、がいいんでしょうね。
私も百瀬さんも、物事結構テンポよく進んでいくじゃないですか。
百瀬さんはIT系のコンサルタントだったから、そうは言っても比較的長いプロジェクトに携わっていたかと思います。僕は最長でも1年でした。短いと本当に3ヶ月とか、僕の最短のプロジェクトは、デューデリジェンスのプロジェクトで2週間のものがありました。
本当にそれくらいで終わるのですよね。始まって終わる。こういう短サイクルでいろんなことをやっていくのは、好きじゃないと逆にストレスになると思います。
なので、3年、5年と時間をかけて、自分は1個1個積み上げて、目標に到達するんだ、というやり方では、コンサルタントに求められるスピード感にマッチしないかもしれません。
百瀬:
リセットしていく、というより、バージョンアップですね。リセットと言うと全部ゼロベースになるみたいにも受け取れますが、そうではなくて、心機一転また新しいことを始める感じですよね。
金子D:
しいていうと、OSをアップデートするみたいな感じですかね。
百瀬:
おっしゃる通りですね!
プロジェクトを経験していくことで、やればやるほど自分のキャパシティも増えていきますし、自分の中のデータべースに新しいナレッジがどんどん積みあがっていきますよね。さらに、軽微なバグも修正しながら進化していく、まさにOSアップデートですね。
仕事しながらキャッチアップせよ!
コンサルに向いている人の素質その②
金子D:
プロジェクトに参画するコンサルタントは、すごく短いサイクルで、スピード感をもってキャッチアップしなきゃいけないことが山ほどあります。
次のプロジェクトはこの業界、こういうテーマだよ、と言われても、経験したことのない分野であることも多い。これをすごく短い時間で勉強していく必要があります。そういう、一夜漬け力というか、この短い期間にパッと集中してとにかくインプットしないとプロジェクトを遂行するのは困難です。
こういうインプットの仕方、これまた好き嫌いや特性だと僕は思います。
コンサルタントという職業には、向き不向きがあると思ってます。コンサルタントは、事前に100点満点のインプットなんてできないから、走りながら勉強するんですよね。
クライアントのオフィスに行って、クライアントと話しながら新しい課題に気づいたり、インプットさせてもらうことが多々あります。止まることなく、プロジェクトワークと並行して勉強しながら、プロジェクトを完遂させるわけです。
世の中には、一個一個着実に、100点取れたら次のステップ、という物事の進め方で成長していきたい人はいると思いますし、もしかしたらこういう方の方が多いと思うのですが、コンサルタントは、この進め方だと限界があると思います。もちろんダメと言っているわけではなくて、さまざまなプロジェクトにアサインされることになるので、早期にキャッチアップできるかどうか、ということが重要と言えます。
百瀬:
まず、各ステージで常に100点とらないと次にいけない、というモデルだと、スピード的に追いつけなくて自分が破綻しますね。もちろん結果が出せず、負のループにはまります。我々がコンサルタントだったあの当時、システム導入などのプロジェクトはウォーターフォール型で、このタスクが終わったらこれ、このフェーズが終わったら次のフェーズ、というスタイルで回っていました。でも、プロジェクトにアサインされているコンサルタントは、みんなアジャイル型で動いていたように思います。
金子D:
そうなの、そうそうそう。
百瀬:
私は、当時ひたすら本を読んでいました。まだあの頃はネット上にいろんな文献が掲載されていませんでしたし、社内のラーニングツールとかも今ほど整備されていなかったじゃないですか。
なので、基本知識は本から得て、先輩の話を聞いて補っていました。あとやっぱりコンサルタントのいいところは、クライアントが困っているところがどこかをちゃんと見つけた上でソリューションを提案するというところなので、まずはクライアントの話を聞くところからはじまりますよね。
喋る前に聞く、だから、その聞くフェーズの時にできるだけ多くの情報を取得できるように、グレイトリスナーになって、全身全霊でヒアリングしていました。その上で分からないことも全部含めて、「こんなこと言われたんですけど(小声)」って周りに相談していました。そうすると、チームの中にネットワークもできるし、信頼関係もできる。そんな感じでしたね。
金子D:
そうそうそう。
考えれば考えるほど変な仕事ですよね。
百瀬:
確かに変な仕事ではあります。
金子D:
特殊な仕事なんですけど。
百瀬:
でもだからこその面白さってのも絶対ある。
金子D:
もちろん。向いている人には、コンサルタントは天職になり得る仕事だと僕は思います。
(次回に続きます)