KC Interview Vol.3 人事部への異動
前回に引き続きKPMGコンサルティングの人材開発室ディレクターの金子さんと弊社の百瀬朝子のインタビューの模様をお伝えいたします。
今回はコンサルティングファームに入社した金子さんが、コンサルタントとして経験を積む中で感じたこと、そして人事領域に移るにいたった心境を語っていただきます。
2周目を走れない性格
百瀬:
金子さんが新卒でコンサルティングファームに入ってから、どのようなプロジェクトを経験されてきたのか、ご自身の専門領域やどんなキャリアを歩んできたかなどを教えてください。
金子D:
新卒入社後、最初は某メーカーのアフターサービスの地方プロジェクトにアサインされました。その後は、通信会社の大規模プロジェクトで販売管理と物流のところを担当していました。このプロジェクトでは百瀬さんともご一緒しましたよね。傘下にいくつもあった子会社がそれぞれの販売プロセス、物流プロセスをもっていたので、それらを統合するところに携わりました。
今の言葉で言うと、PMI(Post Merger Integration:M&Aなどで統合された2社以上の異なる会社の各業務を統合すること)のプロジェクトです。その後も通信業界の携帯キャリアや通信ビジネスへの新規参入、自動車業界の輸出プロセス管理、電子部品メーカーの会計などのプロジェクトを担当しました。
百瀬:
あら(笑)。ご一緒していたときのイメージだと、販売管理を中心としたロジスティックスを主体でやられているイメージでしたが、まさかの会計ですか。
金子D:
ここだけの話ですが、正直、貸方借方とか未だに苦手なのですが(笑)
それでもそのプロジェクトには4年くらい携わりました。
百瀬:
えぇ、ちょっと待って(笑)
貸方借方苦手で、会計プロジェクトで4年。ツッコミどころが万歳ですが、色んな意味ですごいですね(笑)
金子D:
就職活動の話の時にもお話しましたが、ただ単にルールに則ってアウトプットしていくのが僕には合っていなくて、会計はルールそのものじゃないですか。
その会計のプロジェクトは、世界中に100社も子会社があるクライアントの単体会計だけではなく連結も含めて、制度会計と管理会計ともに統合するという内容でした。このとてつもなく巨大なグローバルプロジェクトのプロジェクトマネージャーをしていました。
百瀬:
もう聞いただけで、頭がクラクラしてきました。制度も通貨も言語も文化も違うものを統合していくわけですよね。
金子D:
そんなプロジェクトの経験もしました(遠い目)。
百瀬さんは、最初からグローバルプロジェクトに入っていらっしゃいましたが、僕は英語が苦手だったので、グローバルプロジェクトを避けて通っていました。でも最終的には、外資系コンサルティングファームで、グローバルプロジェクトも多いので、やらざるをえない状態になりました。クライアント側にも海外の方がいらっしゃいましたし、自社メンバーも韓国や中国、ドイツなど国際色豊かなメンバーでした。
そのプロジェクトの後は、長くPMI案件に携わっていたように記憶しています。クライアントは部品メーカーや部品商社が多かったですね。その間に人事コンサルティングや、戦略系のプロジェクトも経験しました。
百瀬:
すごいですね。業界やソリューションに特化すると言うよりは、満遍なくすべて経験しておられるんですね。
金子D:
そうです。一通り見たい気持ちがあったので、希望は満たされました。
でも実は僕、2周目は走れないんですよ(笑)。
一通り経験してしまうと、次また同じように一巡するというのができなくて。
1周して気がついたこと
百瀬:
あら、そうなんですね。2周目が走れないのは、何か理由があるんですか。
金子D:
コンサルタントは、プロジェクトごとにリセットされるじゃないですか。プロジェクトごとに新しいテーマ、新しい何かがある、と。とはいえ、ある程度、フレームが決まっているというか、型があると思いませんか。
百瀬:
確かに、ありますよね。パターン化できる部分が。
金子D:
僕は、14年くらいかけて一通りのプロジェクトを見たと思っています。
百瀬:
それは結構長い期間ですね。
金子D:
14年に渡って、様々なプロジェクトを経験していく中で、なんとなく型ができてきたように感じていました。何かしらのインプットがあって、そのインプットを基にアルゴリズムを回して、何かしらアウトプットされるイメージです。このアルゴリズムの部分が、ここでいう"型"ですね。
インプットのやり方・情報量・内容は異なれど、アルゴリズムの部分はある程度決まってくる。そうすると、自動処理している機械と同じで、ただインプットとアウトプットを繰り返しているように感じていました。このままだと、成長しないな、と。
百瀬:
なるほど、なるほど。経験を積んで、"型"、すなわちアルゴリズムがある程度構築されてしまうと、コンサルティングサービスもある程度自動化できてしまい、そこに成長を感じなくなる。その"型"を作るために最初はみんな必死になりますが、それができあがって、それを武器に仕事をしていくのか、常に新しいものを求めていくのか。個人個人の考え方によって、方向性は変わってきますね。
原点回帰:自分が好きなことを
金子D:
僕はそのとき、ある種の達成感もあってか「ここから何をするのだろう」と迷い、悩みました。その時に「誰に言われるでもなく、自分がいちばんエネルギーを注ぎ込める仕事をやりたいな。」と思って、そこで気がつきました。
僕は採用が大好きだ、ってね。
百瀬:
また唐突に"採用"という新しいキーワードがでてきましたね(笑)。"採用が大好き"、意外ですし、今までのお話からは想像がつかないのですが、なぜ採用が好きなのですか。
金子D:
実はコンサルタント時代、人事主催の採用イベントに積極的に参加していました。就職活動中の学生の前でお話しするのもとても好きでしたし、研修も大好きでした。上司に「採用イベントに出る前に現場でプロジェクトのデリバリーを優先してください。」と言われてもその忠告を聞き流して参加していました。今ではありえないことですね(笑)
採用関連のイベントに参加し、学生の前で話すことがとても楽しかったんですよね。だからこれをやろう!と思いました。
コンサルティング業界では、どのファームにおいても、"人"が資産だと思います。会社のことを知ってもらった上でコミットできる人・ポテンシャルがある人を採用し、入社してもらってから育成する。そういった一連の採用・教育のプロセスというのは、一般のメーカーで例えると、事業の根幹となる商品開発にあたる部分で、コンサルティングファームにとって採用を含めた人事機能はとても重要で、そこに本気で取り組めるコンサルティングファームが生き残っていくと思っています。
そういう想いがあって、現在、人事部にいるわけです。
百瀬:
なるほど。14年間のさまざまなプロジェクト経験を経て、人事部に転籍したのですね。
金子D:
いえ、最初は、コンサルティング業界ではよくある話だとは思うのですが、コンサルタントとしての仕事をやりつつ、片手間でやっていました。
百瀬:
はいはいはい、プロジェクトやりながら、採用面接や人事系の仕事もやる感じですね。確かに、一般の事業会社と違って、コンサルティングファームでは、現場の社員が面接を行うし、だから採用イベントなどにもたくさん登壇しますよね。
金子D:
そうです。プロジェクトをやりながら、採用活動に携わり、人事が出す記事の編集をすることが、僕は簡単にできると思っていました。当時コンサルタントとして一通り経験し、変な全能感があったので、できると信じて疑わなかったんですよね。でも、片手間に人事業務に携わって半年で目が覚めました。これは片手間でやれるような仕事ではない、100%デリケィティッド(Delicated 献身的に)でやらないとできない、と。
100%注ぎ込んで初めて土俵に上がれるくらい大変な仕事であることに、ようやく気がつきました。その時に、一緒に働いていた人事の仲間たちに対して、とても申し訳ない気持ちになりました。僕は、心のどこかで人事の仕事を片手間でできるくらいの仕事だと、軽んじていたと思うんです。
そういう気持ちというのは、おのずと伝わるものなので、その当時、僕の話なんて、誰にも聞いてもらえませんでした。それはそうですよね。今ならわかります。その気づきもあって、プラクティス(コンサルティングを行う部門のこと)の方の仕事、すなわちコンサルタントを辞めて、人事部に異動という思い切ったキャリアチェンジをしました。
(次回に続きます)
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