歌うひとのための「優美な月よ(Vaga luna, che inargenti)」
曲:V. Bellini/詞:不明
対訳
Vaga luna, che inargenti
優美な月よ、お前は銀色に輝かす
queste rive e questi fiori
あの岸辺や花々を
ed inspiri agli elementi
そして万物に
il linguaggio dell'amor;
愛を語る舌を与える
testimonio or sei tu sola
いま証すのはお前だけ、
del mio fervido desir,
私の熱い願いを
ed a lei che m'innamora
だから 私の心を奪ったあの女性(ひと)に
conta i palpiti e i sospir.
語っておくれ、どれほど鼓動を高鳴らし、溜息をついているか
Dille pur che lontananza
彼女に伝えておくれ、遠く離れているうちは
il mio duol non può lenire,
私の苦悩は和らぎ得ぬと
che se nutro una speranza,
望みを抱くとすれば
ella è sol nell'avvenir.
未来に対してしか抱けぬと
Dille pur che giorno e sera
彼女に伝えておくれ、朝な夕なに
conto l'ore del dolor,
苦しみの刻を数えていると
che una speme lusinghiera
思わせぶりな希望が
mi conforta nell'amor.
恋する私の慰めだと
歌詞について
八音節詩行で書かれており、奇数音節にアクセントがある。
各連の最終行のみ、字足らず。
Va/ga / lu/na, / che in/ar/gen/ti
que/ste / ri/ve e / que/sti / fio/ri
ed / in/spi/ri a/gli e/le/men/ti
il / lin/guag/gio / del/l'a/mor;
(「/」は音節の切れ目。太字はアクセント)
歌詞には旋律に合わせて同じ語句を繰り返す箇所がある。(ed inspiri, ed inspiri agli elementiなど)
アクセントを意識して歌うと、一度目と二度目の色を変えやすい。
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第一連第四行の「il linguaggio」は「言語機能」「(非言語の)言葉」のこと。
月が万物にinspirareするとされている「il linguaggio dell'amor」は、「愛の言葉」そのものとも取れそうだが、「愛を語る機能」と解釈した。
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contareという動詞が二回用いられている。
一度目は第二連第四行の「conta i palpiti e i sospirこの鼓動と溜息を(彼女に)contareせよ」、
二度目は第四連第二行の「conto l'ore del dolor(私は)苦しみの刻をcontareする」である。
contareは英語のcountやcomputeと同じ語源を持ち、基本的には「数える、計算する」ことを表す。
第二連の「conta i palpiti e i sospir」では派生した語義の「語る、話して聞かせる(英語のrecountに相当)」という意味で使われているが、「数える」ニュアンスを残したかったため「語っておくれ、どれほど鼓動を高鳴らし、溜息をついているか」と訳した。