歌うひとのための「私は心に感じる(Sento nel core)」
曲:A. Scarlatti 詞:不明
対訳
Sento nel core certo dolore,
心に感ずるは 幾許かの苦しみ
che la mia pace turbando va.
私の平穏を 掻き乱してゆく
Splende una face che l'alma accende,
きらめくは燈(ともしび) 魂に火を点ける
se non è amore, amor sarà.
愛でなくとも やがて愛となろう
歌詞について
はっきりと自覚される前の、恋心の萌芽を歌っている。
第三行の「face(燈)」は、比喩的に「情熱」を指すこともある語。直後に「魂に火を点ける(ような燈)che l'alma accende」と続くため「燈」と訳したが、「恋の情熱」のイメージが強く表れていると見てよいだろう。
*
全体が二重五音詩行からなる。すなわち、一行が二つの五音詩行で作られている。
本訳では、句切れの位置が明確になるよう訳した。
第二行と第四行は字足らずである。
Sen/to / nel / co/re || cer/to / do/lo/re,
che / la / mia / pa/ce || tur/ban/do / va.
Splen/de u/na / fa/ce || che / l’al/ma ac/cen/de,
se / no/n è a/mo/re, || a/mor / sa/rà.
(「/」は音節の切れ目、「||」は句切れ。太字はアクセントの位置)
第一行前半の「core(心)」と第四行前半の「amore(愛)」・第二行前半の「pace(平和)」と第三行前半の「face(燈)」が、それぞれ中間韻を踏んでいる。
「心」と「愛」は非常に縁深い語であり、音と同時にイメージも響きあう。
対して、「平和」と「燈」は対照的な取り合わせであり、「水のように凪いだ心が、炎のような恋の予感に乱れる」様子が想起される。
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