歌うひとのための「悲しみ(Tristezza)」
曲:F. P. Tosti/詞:R. Mazzola
対訳
Guarda; lontan, lontano
ご覧、遥か彼方で
muore nell'onde il sol;
夕陽は波間に死ぬ
stormi d'uccelli a vol
鳥の群れは飛んで
tornano al piano.
野へと帰る
Una malinconia
憂鬱が
io sento in cuore e pur non so perché
心をよぎるのに、理由がわからない
Guardandoti negli occhi, o bella mia,
貴女の目を見つめながら、ああ美しい人よ
muto mi stringo a te.
私は黙って抱きしめる 貴女を
Copre l'ombra d'un manto
夜の帳が覆う、
le cose, Il cielo, il mar;
万物を 空を 海を
Io sento tremolar
私は感じる、
negli occhi il pianto.
眼(まなこ)に震える涙を
Suona l'ave maria
アヴェ・マリアの晩鐘が鳴り
ed è sì triste e pur non so perché
かくも哀しいのに、理由がわからない
Devotamente preghi, o bella mia
真摯に祈っておくれ、ああ美しい人よ
io prego insiem con te.
私もともに祈ろう 貴女と
Tenera ne la sera
優しく、黄昏が
che s'empie di fulgor,
輝きに満ちる中を
dai nostri amanti cuor
二人の愛し合う心から
Va la preghiera.
祈りが流れ出す
E la malinconia
そして 憂鬱の中
mi fa pensare e pur non so perché,
考えてしまうのに、理由がわからない
che un giorno, ahimè, dovrà la vita mia
「いつの日か、ああ 私の人生から
perdere il sogno e te!
去ってしまう 夢も、貴女も」
歌詞について
夕暮れの寂寥に、別れの予感を滲ませた曲。
晩年のトスティはマッツォーラの詩を好み、本曲を含めて14作を作曲している(『トスティ ある人生の歌』による)。
*
八行の詩連三つによって構成される。
各連の前半四行はすべて七音節詩行であり、ABBAという交叉韻の形式。
Guar/da; / lon/tan, / lon/ta/no
muo/re / nel/l'on/de il / sol;
stor/mi / d'uc/cel/li a / vol
tor/na/no al / pia/no.
後半四行は七音節詩行と十一音節詩行からなる。ABABという交替韻の形式で、しかもすべての連が同じ語尾を持つ。
U/na / ma/lin/co/ni/a
io / sen/to in / cuo/re e / pur / non / so / per/ché
Guar/dan/do/ti / ne/gli oc/chi, o / bel/la / mi/a,
mu/to / mi / strin/go a / te.
七音節詩行と十一音節詩行は、どちらもアクセントの位置の自由度が高い。
第一連と第二連はほとんど同じ旋律で歌われるが、アクセントの配置が異なるため微妙にリズムが変わり、音楽に心地よい変化が生まれている。
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