歌うひとのための「マリンコニーア(Malinconia, Ninfa gentile)」
曲:V. Bellini 詞:I. Pindemonte
対訳
Malinconia,
憂愁よ、
Ninfa gentile,
ゆかしき妖精よ
la vita mia
我が生を
consacro a te;
おまえに捧げよう
i tuoi piaceri
おまえの喜びを
chi tiene a vile,
蔑ろにするものは
ai piacer veri
真に喜べるよう
nato non è.
生まれついてはいない
Fonti e colline
泉と丘とを
chiesi agli Dei;
かつて神々に求めた
m’udiro alfine,
ついに祈りは聞き届けられ
pago io vivrò,
満ち足りて生きられよう
né mai quel fonte
決してあの泉を
co’ desir miei,
我が望みは
né mai quel monte
決してあの山を
trapasserò.
貫き得ぬだろう
歌詞について
「憂鬱」のニンファ(=ギリシア神話の妖精・精霊)に寄せる頌歌。
原詩はイタリア・前ロマン派を代表する詩人によるもの。富や栄誉や恋といった世俗の価値を否定し、自然のままに生きることや、憂いに凪いだ心を称揚するといった内容である。
64行からなる長詩から、本曲では第25〜32行と第1〜8行を引用している。
なお、原詩の全文と解説はこちらのサイト(イタリア語)で読める。
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すべて五音節詩行で書かれており、各連の四行目と八行目は字足らず。
連ごとに「ABACDBDC」という形式で韻を踏んでいる。
Ma/lin/co/ni/a,
Nin/fa / gen/ti/le,
la / vi/ta / mi/a
con/sac/ro a / te;
(「/」は音節の切れ目。太字はアクセントの位置)
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音楽は各詩行の最終アクセント(第四音節)を頂点とする山を描いている。
流れるようなフレーズが美しい。
短調の楽曲だが、末尾の4行のみ長調に転じ、「決して、わが望みが貫くことはないだろうNé mai co’ desir miei trapasserò」と情熱的に繰り返す。
特に多く繰り返される「決してNé mai」が印象的。