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歌うひとのための「もう一度(Ancora!)」

曲:F. P. Tosti/詞:R. E. Pagliara

対訳

Il mio pensier, vagando, ti ritrova
私の思いは、さまよいながら また貴女を見つけ出す
in mezzo ai fiori, in un'ombrosa landa
花と花の間に 翳った荒野に
del mite aprile a la carezza nova,
その荒野は 穏やかな四月から愛撫を受けたばかり
ti fanno i rami una gentil ghirlanda.
枝々が貴女に 優美な花冠を作る

Ma la tua guancia è mesta e scolorita,
けれど貴女の頰は悲しげで 色褪せて
han le tue labbra un languido sospir.
貴女の唇には 力無い溜息
Forse tu pure a la trascorsa vita
あるいは貴女も 過ぎ去った人生に
rivolgi, stanca, il triste sovvenir!
想いを馳せているのか、疲れ果てて 悲しい思い出に

O dolce tempo, o rapida stagione,
ああ、甘美な時間よ ああ、束の間の季節よ
con i tuoi raggi a noi più non ritorni!
お前が輝きながら 私たちの許へ還ることは二度とない
Sì breve tacque l'ideal canzone,
かくも短い間に 理想の歌は黙した
fuggir veloci i nostri cari giorni!
疾(と)く逃げるもの 私たちの愛しい日々は

Ah! vieni a me! Ti stringi al petto ansante,
ああ、そばにおいで 貴女の喘ぐ胸を抱きしめられるように
Fa ch'io m'inebri al caldo tuo sospir!
私が貴女の熱い吐息に酔えるようにしておくれ
Baciar potessi ancora, un solo istante,
もう一度キスをして——ただ一度だけでも
la bocca tua soave, e poi morir!
貴女の甘やかな口元にキスをして そうして、死ねたなら

歌詞について

十一音詩行からなる、ゆったりした詩。音楽もたっぷりと流れていく。

Il / mio / pen/sier, / va/gan/do, || ti / ri/tro/va
in / mez/zo ai / fio/ri, (||) i/n u/n'om/bro/sa / lan/da
del / mi/te a/pri/le (||) a / la / ca/rez/za / no/va,
ti / fan/no i / ra/mi (||) u/na / gen/til / ghir/lan/da.

(「/」は音節の切れ目、「||」は句切れ。太字はアクセントの位置)

十一音詩行は、必ず行内に句切れがある。
上掲の第一連では、
・第一行が「七音詩行+四音詩行」
・第二~第四詩行が「五音詩行+七音詩行」
に、それぞれ分けられる。

第二~第四行は、ある単語の語末の母音と続く単語の語頭の母音を一音節として扱う箇所(語間合音、という)と句切れの位置が一致している。
詩として読む場合は一音節と看做す箇所だが、旋律上では分けて発音される。

 *

四行四連で、「ABAB CDCD……」という形式で韻を踏んでいる(交代韻、という)。
意味のまとまりも四行ごと(一連ごと)に区切れる。うち、第二連と第四連は「貴女」に直接フォーカスしており、より強い気持ちが現れていると言える。

 *

同じTostiの「Aprile」を扱った記事でも触れたように、「四月Aprile」は「青春」を象徴する。

が、季節が四月である一方、「私」が「君」を見つけ出すのは「翳った」「荒野」の中であり、「君」は蒼ざめた顔で弱々しく溜息をついている。
四月の只中にありながら、「歌い手」と「君」は恋の終わりを予感して、過ぎ去った青春を悲しく回顧している。

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TJ
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