パリタクシー
フランス映画。
うだつの上がらないタクシー運転手シャルルに
92歳の女性マドリンを老人ホームへ送る仕事が舞い込む。
何度も寄り道をお願いされる中、彼女の長い人生の昔話が始まる。
彼女は第二次世界大戦の前に生まれた人。
まだ女性が今より軽視されていた時代にシングルマザーとなり、
その後に出会った夫からは家庭内暴力を受ける。
夫に報復をした彼女は13年間投獄されていた。
そんな中でもその時代の良さを語り、良い出会いがあったとも語る彼女。
「その頃はスカートは膝丈だったの」。
彼女を老人ホームに送り届けた後、シャルルはなんとなく抜け殻のようになって街を走る。
これまで当たり前に何度も通っていたパリの夜道が、美しく見える。
次の週、代金を受け取りにホームへ行くと彼女が亡くなったことを告げられる。
半世紀前に亡くなった息子と彼女が眠る小さな集合墓地へ。
そこで公証人から彼女からの手紙を受け取る。
家族と旅に出なさい、と。
とてもシンプルな作りだが、とても美しい映画だった。
無駄が一切ない。
音楽もいい。クラシカルな感じもあり、オールディーズ感もありつつ、ジャズもある。
それまでタクシーの車内と回想シーンでの部屋の中のシーンばかりだったからこそ、
彼女を送った帰りの車内から見るパリの街並みの美しさと、それを今まで見落としていたことへの気付きがあった。
ほんわり心温まる映画だった。
美しいものを見に外に出たくなった。