書評『幸福な王子』(O・ワイルド)と平等主義的リベラリズム。20190518
昨日、バスまで時間があったので本を読みました。
短いので20分も掛からなかった程度だと思います。
ページ数も15頁ぐらいで短い。
オスカーワイルドについて、サロメとかドリアングレイにハマっていた時に色々読みましたが、これはワイルドが子供用に書いたもので、当時、本屋では見つからなくて、昨日大学の本屋でたまたま洋書コーナーに見つけました。
英語は苦手ですが、レベル2なのでつっかえずに読めました。
昨日投稿しました↓
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物語。(英語力が低レベルなので少し違う部分があります。)
「幸福な王子」と呼ばれる、大きなサファイアが目で、ベルトに大きな赤いルビーが付いている金の像が街にありました。
「幸福な王子」は使い道はないけれど、美しく、街の人々から愛されていました。
寝床を探す一羽のつばめが王子の足下に留まると、王子の目から溢れる涙が身体に落ちてきました。
王子は人間だった頃、美しい王宮で友人達と楽しんで暮らし、とても幸せな人生で、みんなに幸福な王子と呼ばれていました。
しかし、像となって初めて街を見ていると、貧しい人たちのことを知って心を痛めていたのでした。
動けない王子の代わりに仕方なくつばめは王子に指示された通りに貧しい者達へ王子の持っている宝石を運びます。
最初に、王妃のドレスを作る貧しい母とお腹を空かせた子に宝石を運びました。
つばめはエジプトへ向かうつもりでこの街へ寄ったのだったけれど、王子に言われてもう一晩留まることにしました。
そんな風に、つばめはエジプトへ飛び立つのを後回しにして、「演劇を作る男子学生」「お金を持ち帰らないと父親に叱られてしまう可哀想な薪を売る少女」「非常にお腹を空かせた二人の少年」達へ王子の言われた通りに宝石や金を運びました。
つばめに宝石や金をもたらされた彼らは幸福になりました。
しかし、王子は宝石を失い、目がないから見えませんし、ボロボロになりました。
つばめは街に来る前、葦に恋をしていましたが、葦は動けないからエジプトへ向かうつばめと一緒になれなくて、振られたつばめも葦は風と恋をするべきだと分かっていました。
今、つばめは王子に恋をし、
一生、目の見えない王子のそばにいることを決めました。
つばめは見たことを王子に伝え、王子は自らを犠牲にして人々を幸福にしました。
しかし、冬の寒さが厳しくなり、街はつばめが生きるのには相応しくなくなります。
死を悟ったつばめは必死に王子の肩まで飛んで「さようなら、愛しい王子」と言いました。
王子は「ついにエジプトへ行くんだね、嬉しいよ」と答えました。
つばめは「私が行こうとしているのはエジプトじゃなくて、死の家に行こうとしているんだ。死は眠りの兄弟、だよね?」と言って死にました。
その瞬間、何かが壊れたかのような、像の中で奇妙な音がしました。
次の日の早朝、市長が通り掛かって、ボロボロで貧者のように見える「幸福な王子」の像とその足下のつばめの死骸にビックリして、それを退かして代わりに自分の像を建てさせました。
街の人々は使い道がなく、美しくもない「幸福な王子」の像とつばめの死骸を捨てました。
神様は天使に「善いものを二つ持ってきなさい」と言いました。
天使は「幸福な王子」の像とつばめを見つけて持っていきました。
神様は天使に「正しい選択をしたね」と言いました。
つばめは神様の庭で永遠に歌い続け、「幸福な王子」は金の神様の街で幸せになりましたとさ。
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優しい世界。
美しい愛の物語。
どうしても、比喩っぽいと思ってしまう。
ワイルドの理想の世界みたいな。
ワイルドは既得権のような、上流階級と貧困者の格差が大きく開いたこの現状を問題視していたのでしょう。
金持ちの資本家は綺麗な広い家で優雅に暮らし、貧乏な労働者は狭い家で明日のご飯も保証されておらず、ひもじく暮らしている。
幸福な王子は自分の持つ財産(宝石や金)をつばめを使って配って貧しい人たちにも幸福になって欲しいと願います。
ワイルドは、行き過ぎた自由主義的な資本主義に異議を唱え、富の再分配をする必要があるという平等主義的リベラリズムに傾いていたのかもしれません。
また、ワイルドは形にとらわれない愛が最も美しいと思っていたのかもしれません。
自己犠牲を厭わず街の人々を愛する王子(博愛主義者のようだ)。
その人柄に恋し、彼のためなら命など惜しくないと散っていったつばめ。
つばめも王子も男性。
ワイルドは男色で有罪判決を受けて収監されていた過去もあります。
愛に性別を持ち出して否定するな、という主張もあるのかもしれません。
彼の美学には魅力がありますね。
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正直、こんなに美しい童話は初めて読みました。
この本には他にもワイルドの作品が収録されているので読むのが楽しみです。
楽しみながら、英文を読む訓練にもなるので一石二鳥な気分です。
以上。