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【アメコミビブリオバトル】2024年にバトラー参加して紹介した本

※この記事は、推しコンカレンダー Advent Calendar 2024 3日目の記事です。今年も参加させていただきありがとうございます。

私は、マーベル・コミックスをはじめとして主にアメリカのコミックを読むのが趣味です。
いわゆる「アメコミ」ですが、長い歴史の中でたくさんのコミックスが出ているので、面白い!!と思っても、周囲に同じ本を読んでいる人がいない・・・ということが往々にしてあります。
感想語りたい!!誰かと話したい!!
そんなときは「アメコミビブリオバトル」に参加しています。


ビブリオバトルとは

皆さんは「ビブリオバトル」ってご存じでしょうか?
ビブリオバトルとは、 「誰でも開催できる本の紹介コミュニケーションゲーム」です。(「知的書評合戦 ビブリオバトル公式サイト」より)
ゲームに参加する人(バトラー)は、各自で紹介したい本を持ち寄り、5分間の持ち時間の中で、その本の魅力を語ります。概要やあらすじ・好きなところ・自分が読んでどう思ったかなど、紹介する内容は自由です。
発表を聞いた人たちは、その後3分間の質問タイムで、その本についてもっと知りたいと思ったことを質問します。(批判や揚げ足取りになるような質問は禁止です!) これを一人ずつ回していって、全員の発表が終わった後に、その場の参加者全員がそれぞれ 「一番読みたいと思った本」に投票し、一番票を獲得した本が「チャンプ本」となります!

本の感想で勝敗を決める必要あるの?

これ、参加前は思ってました。友達同士で好きに感想を語り合うのでしたら、無制限に自分が話したいことを一方的に話しても良いわけです。しかしそれだと、語りが独りよがりになりがちな面があると思います。
5分という制限時間のルールがある中で、多くの観戦者さんがいる前で語るとなるとそうもいきません。限られた時間の中で、その本を全然知らない人にも本のことを知ってもらおう!と思うと、思い付きで適当に話すわけにはいきません。魅力が上手く伝わるように自分の中で情報を整理する必要があります。
また、勝敗を決めるようにすることで、自分だけが楽しい本ではなく、みんなに聞いてもらって魅力を感じてもらえる本を選ぶようになります。
さらに、聞き手側も、聞いた上でベストな本を選ぶ必要があるため、真剣に聞くようになるというメリットもあります。
他にもいろいろなメリットがあります。以下のページにもっと詳しく書いてありますので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。
なぜチャンプ本を決めるのか?/知的書評合戦ビブリオバトル公式サイト

本が主役のゲーム!

「一番よかった発表」ではなく「一番読みたいと思った本」を選ぶ、というのが良いなぁ~と毎回思っています。
あくまで、人ではなく本が主役なのです!
チャンプ本に選ばれるような発表をした人が偉いわけではなく、流暢に語れば良いというわけでもなく、つたなくても一生懸命思いを伝えて、聞き手に「読んでみたいな」と思ってもらうことが大切です。

観戦だけももちろん歓迎!

本(アメコミ)の紹介とかマニアックそうだし全然知識無い人は参加無理そう……と思われるかも知れませんが、上記のとおりバトラーの皆さんは「聞いてくれる人(=その本のことを全然知らない人)に面白さを伝える」ように一生懸命考えて発表をしています。なので、予備知識など何も必要ありません!
チャンプ本を決めるのは投票なので、やはり観戦の人数が多い方が盛り上がるように思います。


アメコミビブリオバトル(2024年開催分)で私がバトラーとして紹介した本のご紹介

ここからは、今年開催されたアメコミビブリオバトルの中で、私がバトラー参加したイベントで発表した本を紹介します!
どれも自信をもってお勧めできる面白いコミックスですので、気になった方はせひ読んでみてください:)
アメコミビブリオバトルは、現在は日比谷図書文化館(日比谷公園内の図書館)での会場開催と、Zoomを利用したオンライン開催の2種類が行われています。振り返ってみたら上半期は忙しすぎて参加できておらず、8月から参加していました……。

2024/8/25 第8回アメコミビブリオバトル

テーマ:フリー
紹介本:Stray Dogs
Writer:Tony Fleecs
Artist:Trish Forstner

チャンプ本をいただきました!
マイリトルポニーのコミックスを描いている作家陣による、カートゥーン調の可愛らしい絵柄のコミックです。
登場するのは可愛いワンちゃんたち。しかし、読んでみると何やら不穏なストーリー……。
試し読みで冒頭を読んで、あれ?これはもしかして怖いのでは?と思い買って読んだらびっくり。なんと骨太のホラーコミックでした。

【見どころ】

  • アートがカートゥーン調でかわいい。また、子供向け漫画風だからなのか犬が主人公だからなのか、犬たちのセリフがかなり簡単な全年齢向けコミックスで使われるような英語で書かれていて、非英語ネイティブでも読みやすい。

  • 主人公が犬なので、犬の目線で描かれている。視線の低さを演出するためか、横長のコマが多いのも特徴。なお、人間の顔はコマで見切れたりフキダシで隠れたりしていて絶対に描かれない。

  • 犬は短期記憶しか保持できないと言われていて、それをトリックにしたサスペンス展開がある。主人公が怖い思いをしても、翌朝になったら「あれ?なんのこと?」と忘れてしまうなど、危機的状況にある主人公としては犬たちがあまりに頼りなく、恐ろしい。

  • 一方で、犬は強い感情は長く覚えているとも言われている。匂いで過去の怖い体験を思い出すシーンがあるのですが、恐怖感情が赤い背景で描かれていて、視覚的な恐怖演出が効果的で面白い。

“Stray Dogs”は単行本1冊分で完結しており、サブストーリーとして“Stray Dogs:Dog Days”というコミックも出ています。
また、同じ作家陣が描くネコちゃんのコミックス、“Feral”はオンゴーイングシリーズ(最終回を決めずに連載形式で刊行されること)が好評刊行中です。余談ですがFeralは猫目線での狂犬病の恐怖をゾンビパンデミックホラーのスタイルで描いていて、こちらもなかなか面白いです。

なお、この回のビブリオバトルでは、他のバトラーさんもホラーコミック“Dwellings”を紹介していて、その本も面白そうだったのでイベント後に買って読みました。
他の本との出会いがあるのもビブリオバトルのよいところ。

2024/10/26 第18回オンライン・アメコミビブリオバトル

テーマ:心に残るアメコミ名場面
紹介本:Marvel Mystery Comics #6
Writer:Bill Everett
Artist:Bill Everett

チャンプ本をいただきました!(2回目!ありがとうございます)
1939年(1930,1940年代はアメコミ勃興期で「ゴールデン・エイジ」と呼ばれます)に発売されました、私の推しキャラであるネイモアさんのコミックスを紹介しました。
この当時、海底王国の王子であったネイモアは、ニューヨークに攻め込み、地上で活動しているヒーローのヒューマン・トーチ(初代。アンドロイドです)と出会って戦いになります。このエピソードが、マーベルのヒーロー同士の最初のクロスオーバー(作家が異なる別のコミックのキャラ同士が出会って物語が展開されること)であり、歴史的なエピソードのひとつとなっています。
しかし、「ネイモアがニューヨークに攻め込んだこと」は後世のコミックスでも何度も触れられるくらい有名なのですが、「なぜニューヨークに攻め込んだのか」は意外と知られていないように思います。ご紹介しました“Marvel Mystery Comics #6”は、この原因となるエピソードを描いています。
初期のネイモアの複雑なキャラクターと、今後の彼の立ち位置を決定づけるようなエピソードが描かれた話であるため、「アメコミ名場面」としてご紹介しました。

【あらすじと見どころ】
地上人を憎む海底王国で生まれ育ったネイモアは、初期の頃は女性を人質に取ろうとしたり、それを止めに来た警察官と戦いになりその一人を殺してしまうなど、乱暴な行動を取ることが多かった。
しかし、地上を訪れるようになったネイモアは、地上人の優しい面にも触れるようになり、地上人を助けたいと思うようになる。そこで人々の力になろうと、海で米海軍の船を助けたり、洪水に巻き込まれた人たちを助けたり、ヒロイックな行動に出始める。
警察官を殺害した罪で警察から追われていたネイモアは、逮捕されてしまう。投獄されて裁判に掛けられるが、ネイモアは「自分の考えはきっと理解してもらえる」と考えて大人しく裁判にかかる。しかし、裁判はネイモアに一方的に死刑を言い渡して終わってしまう。スーパーパワーを持ったネイモアは怒り、牢を破って脱獄しようとするが、力が出ずに倒れてしまう。なんと、看守たちがネイモアの力を恐れて、食事に毒を混ぜていたのだ!
ネイモアは怒るがそのまま電気椅子にかけられてしまう!
しかし、電気ショックを受けたことでネイモアのパワーが戻り、ネイモアは電気椅子を破壊してそのまま飛び立っていく。
ネイモアさんのせいで警察官が亡くなったのは事実だし、それで彼が裁かれるのは道理だとは思うのですが、一方的な死刑言い渡し・食事に毒を混ぜるのはダメですね。たとえそうしないとネイモアが暴れだすリスクがあったとしても、彼をまともに対話できる相手として扱っていないので、これに関しては地上人が悪いです。
一度は人間を信頼したのに、それがあっけなく打ち砕かれ、裏切られたネイモアが地上人への怒りをいだいてしまうという、彼のキャラクター性を確立した名エピソードとなっています。

Marvel Mystery Comicsはネイモアの他にもいろいろなコミックスが収録されている、いわゆる漫画雑誌的な形式の本なのですが、このネイモアのお話("The Execution of the Sub-Mariner"というエピソード)はなんと10ページしかありません。同じコミックス内の他のコミックと比較しても、(推し贔屓目もありますが)ネイモアのコミックの面白さは際立っています。
10ページでこれだけのドラマを描ききる作家ビル・エヴァレット(ネイモアの原作者)は本当に天才だと思います!

2024/10/26 オンライン・アメコミビブリオバトル(アフタートーク)

テーマ:フリー
紹介本:Plastic Man No More! #1

Writer:Christopher Cantwell
Artist:Alex Lins, Jacob Edgar

本戦後のアフタートークでもまだ語り足りない!ということでビブリオバトルが開催されました。
この時は、直近で読み始めて面白かったコミックスの紹介をしました。ライターのクリストファー・キャントウェルは、以前“Namor: Conquered Shores”というコミックスを書いており、これがとても良かったのでSNSでフォローしていました。彼が新作でプラスチックマンのコミックスを書くよと告知していて、キャントウェルのコメントを紹介する記事を読んだところ、内容が面白そうだったので買いました。
私は、DCコミックスはマーベルに比べるとあまり読んでおらず、プラスチックマンのこともよく知らずに読んだのですが、冒頭でプラスチックマンの簡単なオリジン(なぜヒーローになったのかというエピソード)の紹介もあり分かりやすく、楽しく読んでいます。

【見どころ】
普段は「コメディリリーフ」的扱いを受けているプラスチックマン(イール・オブライエン)。彼が死に直面した時、一人の人間として自分を振り返り何を思うのか、どう行動していくのか?というストーリー。
プラスチックマンはどんな姿にでもなれる(手足が伸びたりするのはもちろん、自由自在に変形できます!)能力を持っているのですが、能力を得る前はケチな泥棒でした。立派な人格者でもない彼は、ヒーロー的なアイデンティティも希薄なままヒーローを続けていました。そして、妻と息子もいたけれど私生活は上手くいかず疎遠になってしまい、今は別居しています。
ある時、敵の特殊光線を食らったことが原因で、体の組織が上手く保持できず徐々に溶けていく症状におかされてしまいます。そこでイールは「死」を実感して自分の人生を振り返ります。しかし、振り返ってみたら何もない・自分の人生は何も成していない……ということに向き合わざるを得なくなります。この様子がとても恐ろしいです。
プラスチックマンも所属しているヒーローチーム、ジャスティス・リーグのメンバー(バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンなど)も出てくるのですが、彼らはプラスチックマンをいつものとおり「面白いおバカなやつ」として扱っていて、イールに真剣に向き合おうとしません。このジャスティス・リーグが登場する場面はカートゥーン調の絵柄で描かれています。子供向けの可愛いカートゥーンのような世界で、朗らかな調子でプラスチックマンを露骨に無視したり、寒々しい会話がなされている様子もホラーです。(バットマンやスーパーマンがそういう嫌な奴、というわけではなく、この作品世界ではそういう描写になっているということです、念のため。)

このシリーズが楽しみなんですよね~という話をしたときに、「(あの面白キャラの)プラスチックマンでホラーなんてほんとにできるの?」というようなことをおっしゃっていた方がいたのですが、こうした「世間からのプラスチックマン評」を逆手に取り真っ向からイールという人間を書こうとしているのが本作だと思います。全4話で、最終話の #4 は2024/12/18リリース予定です。楽しみ。

2024/11/16 第9回アメコミビブリオバトル

テーマ:このアートがすごい
紹介本:The Chosen One: American Jesus Trilogy

Writer:Mark Millar
Artist:Peter Gross

芸術の秋はやっぱりアートでしょ、ということで、「このアートがすごい」のテーマで開催されました。アメコミはライター(お話を書く人)とアーティスト(絵を描く人)の分業制が一般的なのですが、私は普段アメコミはライターで買うことが多いです。
しかしこの回はアートがテーマということで、集まった皆さんと好きなアート・アーティストの話で盛り上がりました。
紹介した本は“The Chosen One: American Jesus Trilogy”。Netflixで「El Elegido-選ばれし者-」というタイトルでドラマ化されています。そのドラマに、実写ネイモアさんを演じたテノッチ・ウェルタさんが出演していたのでテノッチさん目当てで視聴しました。ドラマが面白くて、原作がコミックスであることを知り、買って読みました。

【見どころ】
“The Chosen One: American Jesus Trilogy”は、タイトルから察せられるとおり、宗教色の強いお話です。ある子供が奇跡を起こし、「もしかしたらイエス様の再来かも?」と言われるようになり、そこから物語が展開していきます。
「トリロジー」の名の通り三部作になっていて、最終章である第三部では、黙示録を彷彿とさせる、神の子(≒イエス)と悪魔の子との対峙のシーンがあります。その場面が見開きページで、「一面の星空の下で、2人の人間が静かに対話する」という描かれ方をしています。この世の終わりである、黙示録のシーンを美しい空で表現していること、その空の様子が水彩画のようなタッチで非常に印象的だったことから、このコミックスを紹介しました。
ドラマの「El Elegido-選ばれし者-」は三部作の第一部のストーリーになっていまして、シーズン2(第二部)も作ってくれないかなぁ!と思っています。コミックスの方は北米が舞台ですが、ドラマはメキシコが舞台になっていて、また違った雰囲気があり面白いです。

2024/11/16 泥酔ビブリオバトル

テーマ:フリー
紹介本:The Black Hood #1

Writer:Duane Swierczynski
Artist:Michael Gaydos

リアル開催のアメコミビブリオバトルの後、懇親会として飲み会をしまして、アフターの飲み会で良い感じにお酒が入ったタイミングで開催するビブリオバトルを、「泥酔ビブリオバトル(通称:泥ビブ)」と呼んでいますw
この回は本編のビブリオバトルのテーマがアートだったので、アートか印象的だったコミックをもう一冊紹介しました。

【見どころ】
“The Black Hood”は、一人の警察官が主人公の物語です。暴漢と対峙した際に大怪我を負ってしまい、無事に退院できたのですが、顔の左半分が焼けただれたようになってしまいます。
彼の警察官としての働きが表彰されることになるのですが、そのセレモニーで受賞するシーンの絵が非常に印象的です。
向かって右を向いて舞台に上がる主人公は、焼けただれていない方の顔を観客側に向けており、授賞式の様子を見守る人々からは普通の顔に見えています。
受賞した主人公が顔をチラリと観客の方に向けたことで、その様子を見ていた観客の一人である子供と目が合います。ニコニコと無邪気に笑っていた子供が、焼けただれた顔面に気づき、みるみるうちに真顔になり、恐怖のこもった目で主人公を見つめます。
この様子がセリフが一切無く、絵のみで表現されています。コミックスのコマの中で緊迫感・不安感・主人公の絶望感が見事に描かれていて、迫力がものすごいです。このシーンが素晴らしかったので、続きを買って読むことに決めました。
“The Black Hood”はその主人公が、自分の顔を隠すために黒い布を被ったところ精神の安寧を得て、警察官ではない別の人格の自分を“The Black Hood”として作りだし、夜な夜な活動するヴィジランテになっていくというストーリーです。主人公は普通の警察官であり、何のスーパーパワーもありません。マスクを被った人格がヒーローなのか、マスクを取った自分は何者なのかという、ヒーローとして・個人としてのアイデンティティをダークな作風で深く描いたコミックスで面白いです。

そして次回!

2024/12/14 第19回オンライン・アメコミビブリオバトル

テーマ:2024年ベスト・オブ・アメコミ(海外漫画)

  • 2024年12月14日(土)21:00~23:00(予定) 

  • 参加費:無料

  • 開催場所:zoom

年末開催に相応しく、今年読んでこれが一番よかった!というコミックを紹介する回です。私もバトラーとして参加予定。何を紹介しようか、色々読み返しつつ考え中……!!3タイトルで迷っています。。
読んだことのない人にも面白さが伝わるよう、一度読んだ本を読み返して「自分はこの本のどこがよいと感じたのか」を振り返ったりする準備の時間も、ビブリオバトルの面白さだと思います。

そしてここまでこの記事を読んだ方!
オンラインで観戦のみの参加も大歓迎ですよ!アメコミ知識不要です!
ので、ちょっと見てみようかな~応援してあげようかな~という方はぜひお気軽にお申し込みください。
Zoomでワイワイ話す感じのイベントですが、カメラオフで発言せずチャットのみ参加もできますよ。お気軽にどうぞ。
お申し込みはこちらから。


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