データサイエンスと機械学習はどう違う?
この記事では、ビジネスでDXプロジェクトに携わる方々が業務をスムーズに進めるうえで知っておくべきデータサイエンスと機械学習の違いについて解説します。
DX推進におけるデータ分析の重要性
最近のビジネスシーンでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が急速に進んでおり、この記事を読んでいる方々もおそらく何らかの形でDX推進に関与していると思います。DXとは、基礎的なペーパーレス化からクラウドの導入、製造業におけるIoT機器の活用、小売業界におけるマーケティング施策の最適化など、さまざまな取り組みを指します。多くのDXプロジェクトでは、データ分析が不可欠な要素となっています。実際、データサイエンティストと呼ばれる専門職のメンバーがDXプロジェクトにアサインされることも多いでしょう。今後も、各企業がデータを活用したビジネスモデルを進化させ、競争力を高めていこうとする流れは続くものと思われます。
さて、データサイエンスという用語と共に機械学習(マシンラーニング)という言葉もよく目にすることでしょう。両者は非常に似ていますが、DXプロジェクトを推進する上では両者の違いを意識することが重要です。この記事では、データサイエンスと機械学習の違いについて詳しく掘り下げ、DXプロジェクトに携わる方々が業務をスムーズに進めることを目指しています。
実際、大手企業やIT企業などでは、異なる職種として「データサイエンティスト」と「機械学習エンジニア」を採用していることがあります。(中小企業では明確な区分はなく、データサイエンティストが幅広いタスクを担当することが一般的です)
一例として、バンダイナムコネクサスでは以下のような整理で各職種を分類しています。
非エンジニアの方にとっては、データサイエンティストと機械学習エンジニアの違いがピンと来ないという人もいるのではないでしょうか?
データサイエンティスト・機械学習エンジニアそれぞれに適したタスクを理解するために具体例を挙げます。それぞれが同じようなビジネス課題に対してどのようなアプローチで課題解決をするのか?を見てみましょう。
解きたいビジネス課題の違い
シチュエーション1:自社の会員向けサービスの売上が減少している。
タスク1:顧客データを活用して売上減少の原因を特定し、新たな打ち手を考えたい。
この場合、データサイエンティストをアサインすることをおすすめします。データサイエンティストは、顧客データから売上減少の原因を特定するといったメカニズム解明タスクに長けています。例えば、売上を新規獲得顧客からの売上、既存顧客からの売上、解約率などの要素に分解して、売上減少の要因を推定します。また、特定した要因に基づいて新たな戦略や施策を考えることも得意としています。
注釈:データアナリストという職種も関連していますが、ここではデータサイエンティストとデータアナリストの区分は厳密に考えず、どちらのメンバーでもタスクを遂行できると考えています。
シチュエーション2:分析を進めると、顧客の解約率が上がっていることが分かった。
タスク2:解約予測モデルを構築して、離反防止システムを作りたい。
この場合、機械学習エンジニアをアサインすることをおすすめします。機械学習エンジニアは未来の予測に特化しており、解約予測モデルの構築や離反防止システムの開発に長けています。機械学習エンジニアは、顧客の行動データや特徴を分析し、解約のパターンや要因を特定することで、解約予測モデルを構築します。そして、予測結果に基づいて早期に離反リスクの高い顧客を特定し、適切な対策やキャンペーンを展開するためのシステムを開発します。
このように、データサイエンティストと機械学習エンジニアはそれぞれの得意領域に基づいて役割を果たします。重要なのは、課題や目的に応じて適切なメンバーを選択し、チーム全体で協力してデータ分析と戦略立案を進めることです。
以上、データサイエンティストと機械学習エンジニアの得意領域の違いを説明してきました。この違いをより詳しく理解するために、データサイエンスと機械学習の技術の違いについて少し触れておきます。
使う目的の違い
データサイエンスと機械学習は、要素技術に重なる部分が多いため、混同されやすいです。しかし、両者は「使う目的」によって分類することができます。
データサイエンスは、現象のメカニズム解明を目的とします。例えば、会社の売上が上がった/下がった場合には、メカニズム解明のため以下のような因数分解を考えます。
売上 = キャンペーン効果 + TVCM効果 + ネット広告効果 + ...
このように、売上が上昇/減少する要因を細かく分解して、キャンペーンの効果やテレビコマーシャルの効果、ネット広告の効果などを個別に評価することで、売上上昇/減少のメカニズムを解明しようとします。例えば、売上の大半がネット広告効果に起因していることが分かれば、ネット広告の予算を増やすなどのアクションが考えられます(ただし、実際には増やす前に慎重な検討が必要です)。
一方で、機械学習は未来の予測を目的としています。例えば、顧客の解約予測や来月の需要予測などが該当します。機械学習では、使えるデータや変数を総力戦で活用し、未来を予測するアプローチを取ります。予測には数百以上の変数をモデルに入力することがあります。機械学習では「未来は予測できるが、現象のメカニズムはよくわからない」という結果になることもあります。
このように、データサイエンスと機械学習は、異なるモチベーションを持っています。データサイエンスは現象のメカニズムを理解することを目的としていますが、機械学習は未来の予測に焦点を当てています。実務においても、どちらを主眼にデータ分析を進めるかは最初の分岐点となるため、明確にする必要があります。
最後に
データサイエンスと機械学習の違いについて説明してきました。データサイエンスと機械学習は思想が異なる傾向がありますが、実際のビジネス課題の解決においてはしばしば重なる部分もあります。両者を厳密に分類することよりも、現在直面している課題に対してどちらがより適しているか(メカニズムの解明を追求する必要があるか、それとも単に予測を行いたいか)を常に意識し、メンバーのアサインやタスクの割り当てを行うことが重要です。
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