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地球の歩き方〜とあるオバチャンと犬の場合

私にとって外の世界を例えるなら
水の中

白い光の中の時もあれば
深い霧の中の日もある

空一面が雲で覆われた日や日暮れ時は特に
すべてが同じトーンで包まれた世界の中に
ぽつんとひとり取り残されて
自分が景色の中に溶けてしまうような感覚にくらっとする

いちど外に出たら家に戻れるだろうか?
本気で頭をかすめる時もある

その感覚が怖くて
外に出るのをためらう日が増える

でもある時、先が見えてなくても前に進める自分に気がついた

足元を意識して何回も同じ道を通っていれば、曲がり具合や傾斜や草の生え方など、その道のくせがなんとなく身体でわかってくるものだ

白杖の使い方を教わってから
白杖はただの棒じゃなくて手の延長なんだと実感した

杖の先を通して地面の情報がいろいろ伝わってくる

涼しい顔して、じつは大地を撫で撫でしながら歩いている人がいるだろうか
(残念ながら大地のほとんどはアスファルトだけど)

あそこの道の曲がり具合、曲がり角のクセや特徴、草の生え方を知っている人がいるだろうか

タモリさんか私か

間違いなく
ここでは私しかいない


みんなはただ車でピューっと通り過ぎるだけ

私はその間に
忍者になるためのミッションを秘密裏に遂行し感覚を磨いているのだ

フフッ


そう思ったら
水の中を手探りで進むのもちょっと楽しく思えてくる

「実は私,忍者だったの」

いつか人生が終わる瞬間
そう家族に告げて
謎を置き土産にこの世を去るのもいい



そして
盲導犬と歩き始めて
犬目線でまた新たなものが見えてきた

犬はグレーチング(道路上の金属製の格子状の蓋)が苦手

必ずそこで立ち止まったり飛び越えたり回避したりする

白杖で単独歩行の時は全く意識しなかったけれど
道と道が交わるところにそれが多くあることに気づいて、曲がり角を知らせるよい合図になった

いちど意識し始めると、なんとグレーチングの多いことよ

高い山々に囲まれ、田んぼの多いこの地では
山からの恵みである雪解け水が灌漑用水として使われている

そうか、地面の下には雪解け水が流れているんだ

春、田植えの時期になると、聞くからに豊富で冷たい水の流れる音があちこちから聞こえてきて、その音を聞くだけで全身が満ちて何とも言えない豊かな気持ちになる

そういえば、江戸時代の人々が大規模な灌漑工事をしてこの地を潤した、という話を聞いたことがある

何の変哲もないただの田舎道だと思っていた場所が
この土地の風土や歴史と重なって、見えない地面の下までも意識させ、とても豊かなものに見えてきた

まさに、ブラタモリ

私たちはふたりでブラタモリ

いや、違う、
ふたりで忍者

頼もしい相棒と
この土地を、そして地球を知り尽くす活動を日々遂行中















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