指先触読装置化計画
点字を習うことにした
となりのまちまで、私の相棒である盲導犬の姫との外出訓練も兼ねて
電車とバスを乗り継いで、途中姫の排泄タイムも考慮して往復7時間半
講座は2時間、なのに田舎では車が運転できないと1日仕事になる
そういう田舎特有の事情を考慮して、簡単な点字なら生活指導員さんが自宅に教えに来てくれる選択肢もあった
だけども月2回、全10回ほどを通うことができれば、姫と行ける場所もぐんと広がる
それに自宅に来てくれるのはありがたいが、そろそろ誰かと出会う環境に身を置きたかった
それらが一番の目的で、点字はそのためのきっかけぐらいに考えていたかもしれない
今は文字をテキスト化さえできれば、スマホで何でも音声で読み上げてくれるから、点字は読めなくても何とかなる、必ずしも習得する必要はないかな、ぐらいに思っていた
実際、視覚障害者の中で点字の読み書きができる人の割合は確か半数にもほど遠い
でも初日、点字に触れ点字を打ってみて考えがすぐに変わった
単純に点字っておもしろいなと思ったし
これが読めるようになったらすごい、かっこいい、と思った
今はただの点の羅列にしか感じなく、1文字を1文字として認識することもままならないが
自分の眠っている指先の感覚がどこまで引き出せるのかが俄然楽しみになってきた
指先で文字が判別できれば、生活の中のちょっとした物の識別が楽になって快適さが格段に上がるような気がする
例えば塩と砂糖の「し」と「さ」
頭文字だけでも判別できればそれが何なのかすぐにわかる
スマホをかざせば文字を読み上げてくれるけれど、ちょっとしたことに起動するのは案外面倒だ
どんなにテクノロジーが発達したとしても、自分の身ひとつでできることがあるのは心強い
自分の指先がライトになったら薄暗い場所で
鍵穴を探したり出席名簿に○をつけたり、何かとさりげなくスマートにできて便利だなと思ったことがあるが
それは叶わないとしても、指先が文字を読める装置になるとしたらすごいことだ
点字ができなくても生きてはいけそうだが、読めて損する事は何もない
春休み中で、学校では知ることができない世界を知るいい機会になるかなと、初日の付き添いも兼ねて一緒に参加してもらった娘、
とは言っても自分事でないので退屈かな、私の世界を押しつけちゃったかなと思っていたら
点字、なんだか面白そうだね
私も習ってみたいな
と純粋に興味を持ってくれたのがうれしかった
そう、目の見えない人のための文字というより
既存の文字にはない全く新しい文字を知る面白さ
なんだかそんなものをやはり娘も感じてくれたみたいだ
私の肉眼で見る文字は少しずつ壊れて消えていっているけれど
新しい世界が広がっていく事は何であれ楽しい
点字の習得も、姫殿外出訓練も、慣れないと初めは大変だし苦労もあるだろう
だけど回数を重ねればやがてそれが普通になっていくことは今まで何度も体験してきた
だからまた新入生のような気持ちで頑張ろう