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simple

通帳にゼロが7つ並び
私のことが大好きな彼が
週に2回会いに来て
欲しいモノは買ってもらえ
慣れた仕事に
これといって不満もなく
漫然と、ぬるま湯のような毎日

いつの頃からか
囁き声が聞こえる


"こんなぬるま湯のような人生でいいのか?"


そうだね、いいのかな?
私、こんな人生でいいのかな?

小さかった声がだんだん大きくなり
頭の中で鳴り響く

"こんなぬるま湯のような人生でいいのか?"


そうだよね、こんなの違うよね。
もっと、ちゃんとしないとね。


そして私は、全てを手放す。

自分で決めたのだ。


ぬるま湯から出ると、
極寒がやってきた。

あまりの寒さに身を縮めながら
なんとか一歩ずつ、歩みを進める。

また、囁き声が聞こえる。

"何をやっているんだ。
なんで、
あんなに心地いい生活を捨てたんだ?"


??
あれ?おかしいな?
あのままで、よかったのかな?
でももう、戻れないよ。


"バカだな。何をやっているんだ。
あのままで、よかったんだよ!"

大きな声が鳴り響く。


どうしたらよかったのだろう?
私は、どうしたらよかったの?

自分で決めたはずなのに。
どうして、こうなっちゃったのだろう?


私は、誰の声を聞いたのだろう?


泣きたくても泣けないほどの寒さに
ぎゅっと身体をこわばらせ
それでもなんとか前を向いて
前だけを見て
ほんの少しでも歩みを進める。


極寒の暗闇の中に
私は
見ていたのだ。

ほんの微かな
小さな点のような
でも確かにある
眩しい光を。


"バカだな。何をやっているんだ。
あのままで、よかったんだよ!"
"こんなことになったのも、お前のせいだ。
もっと、頑張れよ!"

相変わらず、頭の中では
大きな声が鳴り響く。

その声に耳を傾けそうになるけれど
耳を塞ぎ
前だけを見て、進む。


"" 大丈夫だよ。
間違ってないよ、大丈夫だよ......""


あれ?
何か、聞こえた?

いつもの、大きな声ではない。

そよ風みたいに
ふっ、と消えてしまったけれど
確かに聞こえた。

とても優しい
あたたかな声.....

私、大丈夫かな?
大丈夫だよね?

""大丈夫だよ。
絶対に大丈夫だよ.....""

何処から聞こえてくるのだろう?

とても近くから聞こえたみたい。
とても近くから.....


相変わらず、頭の中では
大きな声が鳴り響く。

もう、その声には従わない。


遠いけれど
前を見ればいつもそこにある光と

小さいけれど
とても近くから聞こえる
あたたかい声だけを頼りに
歩みを進める。


どれくらい進んだのだろう?

全然、進んでないのかもしれない。

でも、私は決めたのだ。

おなかにグッと力を込め、膝を曲げ
思い切って
でも、ふわりと

光の方へ
あたたかな声の方へと
身を投げ込んだ。


とてもカンタンだった。

あっけないほど
カンタンだった。


あんなに遠いと思っていた光は
いつもここにあった。

そよ風みたいに小さく聞こえた声は
いつも聞こえていた。


ここはいつも
光に満ち溢れ
あたたかさと優しさに
満ち溢れているのだ。

ただ、
自分で選べばいいんだ。

光か
闇か

愛か
恐れか

どれも
自由に選んで
自由に決めればいいだけなんだ。


そして、本当は
何を選んでも

愛と光があるだけなのだから.......


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