デボラ・カーとロバート・ミッチャム、最後の共演作 2:Reunion at Fairborough
ストーリー 続き
ダンスパーティーに出席するのが怖くなったサリーを、励ますシーラ。二人きりの家族である祖母と孫の距離感が程良く、オロオロするサリーもかわいらしい。
いよいよパーティーが始まります。バースキーは、この同窓会の立役者で、大学の学長でもあるドクターです。皆に楽しんでもらいたいと、奔走しています。しかし戦時中の彼は、ユダヤ人として孤独な影をもち、臆病者であってはならないことへの恐怖を常に感じていました。簡潔なスピーチの後半は、若くして空に散った仲間への思いがあふれ、胸が熱くなります。
ここに集う多くの人が、実際に戦争を経験しています。スピーチを聴く表情には、演技だけとは思えないものを感じずにいられません・・・
ダンスパーティで踊るふたり。
”そろそろ帰らなくては” ”楽しかったわ”と言うサリーをカールが引き止めます。僕と一緒にいてくれ・・・ サリーは、送ってあげるという友人の誘いを断って、カールとケンブリッジに行き、一夜を過ごします。サリーはいざという時に、自分で決断できる女性なのですね。またまた蛇足ですが、カールは最初、”ロンドンのサヴォイホテルに行こう”と言っています。これは共演2作目の「芝生は緑」にちなむ場所で、フアンにはたまらない隠し味です♡
カールは、ホテルの部屋の鍵をサリーのポーチに入れてあげます。君を脅かすつもりはないという優しい仕草です。ベッドでしみじみと語り合うふたりを文章に書くと陳腐になりそうで、やめておきます。すべてに抑制がきいて、抱きしめるシーンすらないのに、ケンブリッジの場面では泣けてしまいました。たぶん、自分が若かったらピンとこなかったかもしれません。ノスタルジックでロマンティックな、情感あふれるラブシーンです。
”デボラ・カーは唯一、bed inしたことがない主役だ”というロバート・ミッチャムの発言をどこかで読みましたが、最後にこんな素敵なシーンに出会えてよかったね! 私はデボラ・カーの声も好きです。
翌朝カールは帰路につく前に、抗議デモ本部にシーラを訪れますが、シーラのつっけんどんな態度にぶち切れて、思わずみんなの前で演説してしまう。しかし、それをきっかけに、シーラは祖父を理解しはじめ、心を開いていきます。
”君の存在を誇りに思う” と、孫娘をみつめる眼差しが優しい。
カールを飛行場に降ろして、家に寄ったシーラは、”おじいちゃんて素敵”と言ってサリーを驚かせます。サリーは、一緒にケンブリッジに泊まったことを打ち明けますが、カールは帰国の途につき、もう会うことはないと言います。
そのころ、カールは懐かしい戦闘機に乗りこみ、昔の仲間たちの目の前で飛び立とうとしていました。
かつての記憶が脳裏によみがえります。
そして、大空へ!
飛行機の爆音をきいて庭に出たサリーは、カールが頭上を旋回しているのを目にします。まるで挨拶でもするように翼を揺らして・・・デボラ・カーは、なんて瑞々しい表情でしょう!!!
カールは、基地を囲む抗議デモの輪に並んでいるシーラのところにも飛んでいきます。
いたずらっ子のように、生き生きと空を飛びまわったカールは、緊急出動した軍用機に促されて着陸します。地上では警察が待機し、サリーも駆けつけていました。
ふたりの新たな人生を予感させて、物語は終わります。