デボラ・カーとロバート・ミッチャム、最後の共演作 1:Reunion at Fairborough
あまりに素敵なこの作品を、どうしても紹介したくなりました。お互いに大好きで尊敬しあっていたふたりの共演作は、4つあります。
1957年 白い砂:Heaven Knows, Mr. Allison(戦時下の修道女vs海兵隊員)
1960年 芝生は緑:The Grass Is Greener(英国貴族の妻vsアメリカ人富豪)
1960年 サンダウナーズ:The Sundowners (オーストラリアのSheep Driverの夫婦)
そして、最後のReunion at Fairboroughは、初共演から28年後の1985年にHBO(米)のテレビ映画として制作されました。デボラ・カーは1987年以降、パーキンソン病のため、すべてのパフォーマンスから引退したので、キャリアの最晩年にあたり、デボラ・カーらしさにあふれた秀作です。
ストーリー<ネタバレ、長いです>
第2次世界大戦中、戦闘機のパイロットとしてイギリスで戦ったカール(ロバート・ミッチャム)は、大企業のエグゼクティブにもなりましたが、2度の結婚に失敗し、生きる意味を失っています。そこにかつての戦友バースキー(バリー・モース)が訪ねてきて、基地のあったイギリスの小さな町で40年ぶりに開かれる同窓会にカールを誘います。
同じシカゴにいると教えられた戦友ジグス(レッド・バトン)を探し当てると、アル中の用務員でした。カールはジグスの身なりを整えてやり、一緒にFairborouhに旅立ちます。ジグスもまた映画のなかで彼自身の物語を奏でます。
フェアボローの町は、バンドも加わって歓迎ムード一杯。懐かしい仲間が顔をあわせます。イギリスは、バトル・オブ・ブリテンの歴史的な戦いでドイツを退け、それをきっかけにドイツはイギリスを諦めて東部戦線に向かうことになりましたから、彼らはイギリスを守ったヒーローでもあるのですね。ちなみに本当の退役軍人もエキストラ参加していたそうです。
昔と変わらない街並みを歩くカールに、恋人サリー(デボラ・カー)との思い出がよみがえってきます。
サリーの家を訪ねると、サリーは不在で、孫娘のシーラ(19歳)がいました。カールはシーラの車で、サリーの店に案内してもらいます。(かわいいこのおうちには、93歳になるまでおばあさんが一人で住んでいたそうです)
サリーが営む洋品店へ。
突然現れたカールに、言葉を失うサリー。続く場面でカールは、シーラが自分の孫であることを知らされます。サリーとカールの間に出来た女の子の娘がシーラだったのです。寝耳に水の話に、今度はカールが驚きます。
蛇足ですが、店でシーラが「フィジー島に行ったことを彼に話せば?」とサリーにつぶやきます。これはデボラ・カーとロバート・ミッチャムの初共演作「白い砂」の舞台を示唆しているんですよね。ストーリーが二人の実時間と重なっているようで、ちょっと興奮♡
サリーの店が終わる時間に待ち合せて、飲みにいく二人。 お互いの近況を語ります。 "本当にあのbeautiful young manなの?" というせりふに、デボラ・カーはアリスン伍長(白い砂)の姿を重ねていたかもしれません。
戦時下に18歳でアメリカ兵の子どもを妊娠し、ひとりで育てたのですから、言い知れない苦労があったはずです、しかも、産んだ娘は結婚後、3歳のシーラを残して、夫婦ともにバイク事故で亡くなってしまいました。サリーは、そんな過去を淡々と語ります。”自分にも知る権利があったはず”とカールは言いますが、”あなたに何が出来たの?”と聞かれると、答えることができません。人生で出会うさまざまに、騒ぎ立てず、折り合い、おっとりしているようで芯が強いサリーは、デボラ・カー自身と重なってみえます。
エクセサイズのクラスに行くからと、夕食を断ったサリーですが、カールに請われて翌日の朝食に招きます。カールは、冷蔵庫に貼ってある写真の男性や、自分が異動したあとサリーと付き合ったのではないかと思う仲間のこと、子供の存在もわざと隠したのではないか・・と勘繰るなど、まだ気持ちが落ち着かない様子です。
”2日前までは何も知らなかったのに、今になって・・”とサリーはたしなめつつ、死ぬほど恥ずかしかったデートの思い出話をして、笑いあいます。デボラ・カー、美しい!!! 欧米では、若く見られることにこだわらず、歳とともに魅力を増していく女性が多いですよね。素敵です! サリーは、同窓会仲間にも、”かわいい子がいたよな”と記憶に残る存在でした。
カールは、サリーを夜のダンスパーティーに誘い、サリーは仕事に出かけます。一方、孫娘のシーラにとってカールは、”おばあちゃんを誘惑して苦労させた、とんでもない奴”。 しかも彼女は、米軍の核ミサイル配備反対運動に参加して、抗議デモの準備の真っ最中でしたから、アメリカ大嫌い、たくさんの若い命が失われた場所で昔を懐かしんで飲んだり歌ったりする神経もわからない、という具合。やや直線的なキャラクターですが、カールのやんちゃな一面を受け継いでいるように見えなくもない・・・
カールはシーラ、バースキー、サリーと一緒に、星条旗が掲げられた戦没者墓地や廃墟となった空軍基地を見てまわります。無数の戦没者名の書かれた碑には、自分が去った後、サリーと恋仲になったと思っていた仲間の名前もありました。その名はKenneth、呼び名はKenです。ケンといったら、「めぐり逢い」の彼と同じ名前ではありませんか。 Wow!
戦争に関わるすべてに拒否反応を示すシーラとカールは、けんか腰のやりとりになり、そのまま別れてしまいます。