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新型コロナウイルス感染症対策で、本当に都市封鎖はできないのか?(4/9)

現在の緊急事態宣言について

現在新型インフルエンザ特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)に基づく緊急事態宣言が発令されています。外出自粛の要請などが出ていますが、特に強制的な措置が行われているわけではありません。

都市封鎖とは?

ロックダウンともいわれますが、都市の交通を遮断して、外部からの出入りを防ぐという強制的な措置です。

緊急事態宣言では都市封鎖はできないの?

緊急事態宣言は、新型インフルエンザ特措法に基づいて発令されています。そのため、措置内容としては、新型インフルエンザ特措法の範囲内ということになります。
新型インフルエンザ特措法では、あまり強制措置はなく、どちらかというと、感染症予防の観点ではなく、社会混乱を避ける方向に力点が置かれています。この記事にあるように意外に柔らかい施策をとることになっています。

本当にそれ以上の手段はないの?

新型インフルエンザ特措法では、要請以上の手段はありません。
ただ、別の法律、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症予防法)こちらは、感染症を抑え込む法律なので、要請以上の手段が用意されています。

感染症予防法とは

感染症予防法の最初の部分を読むと、
「人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。
医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。
一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。
ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。」
と長いものですが、目的が前に書いてあって何か並々ならぬものを感じます。

内容は?

第1条の「・・・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。」というように、要は感染症を予防する措置と医療を提供するという法律です。
そして、措置として、
健康診断(第17条)
「・・・前項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、・・・当該職員に健康診断を行わせることができる。」
入院(第19条第3項)「・・・当該勧告に従わないときは、・・・入院させることができる。」、
物件に係る措置(第29条)「・・・当該物件の移動を制限し、若しくは禁止し、消毒、廃棄その他・・・必要な措置をとるべきことを命ずることができる。」
生活の用に供される水の使用制限等(第31条)「・・・汚染された疑いがある生活の用に供される水について、・・・その使用又は給水を制限し、又は禁止すべきことを命ずることができる。」
建物に係る措置(第32条) 「・・・汚染され、又は汚染された疑いがある建物について・・・当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる。」
交通の制限又は遮断(第33条)「・・・一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、・・・当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。」
があり、なかなか強めの措置を発動します。

罰則は?

従わない場合は、第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。・・・・五 第二十七条第一項・・・第二十八条第一項・・・第二十九条第一項若しくは第三十条第一項の規定・・・又は第三十一条第一項、第三十二条第一項若しくは第三十三条の規定(これらの規定が第七条第一項の規定に基づく政令によって準用される場合、第四十四条の四第一項の規定に基づく政令によって適用される場合及び第五十三条第一項の規定に基づく政令によって適用される場合を含む。)による都道府県知事(保健所を設置する市及び特別区の長を含む。)の命令に従わなかった者
といった形でしっかりと罰金になります。もちろん逮捕できてしまう金額です。

感染症法の適用状況について

ここで、新型コロナウイルス感染症は感染症法には当然書かれていません。法改正をしている間もなければ、政令で感染症を指定することができることになります。
「・・・「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。」(第2条)
(指定感染症に対するこの法律の準用)
第七条 指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより・・・第三章から第七章まで、第十章、第十二章及び第十三章の規定の全部又は一部を準用する。
というところから感染症を指定して、準用させることで、強力な措置をとることができます。

具体的には

第16条から第25条まで、第26条の3から第30条まで、第34条、第35条、第36条(第4項を除く。)、第37条、第38条第3項から第6項まで及び第9項、第39条第1項、第40条から第44条まで、第57条(第4号から第6号までを除く。)、第58条(第8号、第9号、第11号、第13号及び第14号を除く。)、第59条、第61条第2項及び第3項、第63条、第63条の2、第64条第1項、第65条、第65条の3並びに第66条の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)を準用するとともに、所要の読替えをすること。
と、ありますが、先ほどの第29条(物件に係る措置)、第31条(生活の用に供される水の使用制限等)、第32条(建物に係る措置)、第33条(交通の制限又は遮断)は除かれています。

まとめ

今すぐではないにせよ、政令を改正すれば、「交通遮断」という方法で都市封鎖とまではいきませんが、一定の場所を封鎖することができます。その意味では、今の「要請」で済んでいる間にできるだけ、外出は自粛して要請に従うことが必要となります。

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