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僕がおもちゃ作家を志した頃
僕がおもちゃ作家を始めた頃、マンカラという世界的に有名なボードゲームを自作して、手売りしていた時代がある。
今回は当時のマンカラ販売を通して得た体験とおもちゃ作家が今後増えていく為の入口を考察し、今後の未来を考えたい。
マンカラを手売りする体験から得たもの
マンカラは2人対戦用のゲームで、石や木の実などを入れてコマにして遊ぶゲームではある。僕の場合ビー玉をコンセプトにしていたので、ビー玉をコマにして販売していた。
おもちゃ作家を始めた頃は、とにかく自分が作家として何ができるのかを自信をつけたい部分もあり、札幌市内にある絵本とおもちゃ専門店「ろばのこ」さんや小樽にある小樽・ヨーロッパ玩具のお店ハンズ オン トーイキンダーリープさん、美瑛にある「美瑛の丘のおもちゃ屋さん」などに自分の作ったマンカラを納品していた。
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今考えるとそうやっておもちゃを作って納品して作る行為がどれだけ大変かというのが分かるので、今はなかなか取り組んだりしていないが、当時はそうした大変さを知る良い機会でもあった。
まず自分が作ったものの値段を決めて、そこから掛かった材料費と卸値から掛け率を引いた金額が、実質的な利益となるだが、そうなってくると自分の手元に残る利益が本当に少ないことが分かる。
しかも、木工というのはかなり手間の掛かるジャンルの仕事で、普通に作っていたら時給換算数にすると割に合わないような製作物も多い。
おもちゃさんに卸すということは、当時の自分からすれば挑戦で憧れではあるけれど、それを持続的に続けていくということがいかに難しいのかということが、当時は身に染みて分かる体験だった。
そして、本格的におもちゃを作ることだけに集中して、実利益を得ようとすると、やはり大量生産していくプロセスを踏み、結果的に多売薄利になり、作る工程自体が辛いものになっていくような気がした。
だから、既存のおもちゃ作家と言われる仕事の仕方はシンプルに面白くないとやっぱり感じてしまう部分がある。※これは他のおもちゃ作家さんを否定している訳ではない。
ここに日本のおもちゃ作家が育っていかない根本的な理由があるような気がしてる。やはり、一般的な動線だと儲かりずらいし、多売薄利路線or高額路線である。
おもちゃ作家への1つのプロセスとブランド
しかし、ここでおもちゃ作家としておもちゃ屋さんにおもちゃを納品するというプロセスを除いてしまえば、自分がかけた時間と原価に対して、その利益は割に合う部分はある。
具体的には自分でネット販売したり、実店舗で直接販売したりすれば良いのだけど、多くのおもちゃ作家にはその販路がないケースが多いんじゃないかなと思う。そして一般的なおもちゃ屋さんの方がブランドイメージが高く、おもちゃが売れていきやすいというのも1つの要因として挙げられるのではないか。
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ビー玉とサケが印象的。
ここで必要なのはおもちゃを作ったときのブランドイメージが重要である。
社会に認知され、信用のあるものはとにかく売れやすいというのは世の中の常ではないかなと思っている。おもちゃは社会的認知と信用で購買していく事が多い。例えば、積み木と言えばカプラ、ボードゲームと言えばHABA社のような安心感・信頼感がブランドにはある。
だから、単におもちゃを作り、おもちゃ屋さんに卸すというプロセスを選択しないで、自分で多くの人に認知されるようなブランドを作り、自社で作ったものをファンに届けると言うようなプロセスの方が実利益にもなるし、多売薄利にもならない、、そう思って今のアトリエマーブルのスタイルになっていた。
ただ、このスタイルを確立できるのはアトリエマーブル独自の「ビー玉遊び体験」という体験システムを入れたことで成り立っている部分が強い。
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現代の潜在的なニーズ
現代は個人の可処分所得が減り、相次ぐ物価高で「物が売れない」と言われる時代になった。おもちゃ屋さんのおもちゃも原材料の高騰でどんどん高価になっている。
でも、本当は「木のおもちゃで遊ばせたい」という潜在的なニーズがあったり、大人自身も幼少期にそうしたおもちゃに触れてこなかったケースも沢山あるので、そういう機会づくりが必要なのではないかと思っている。
そういう意味でもアトリエは、これからも持続的に木のおもちゃと触れ合える場所としてあり続けなければいけないという気持ちでやっていきたいと思っている。
そして、アトリエの可能性が更に広がるようなアイデアで独自のおもちゃ作家スタイルをこれからも広げたい。