私の夏休み②〜失われた休暇を求めて
帰ってから飲もうと思って大事に取っておいたビールが、気づいたら旦那が勝手に飲んでいてなくなってて、めっちゃ頭にきたッ!!ってこと皆さんないですか?
そういった時の喪失感、半端なくないですか?これを楽しみに頑張ってたのに、
…ないッ!!!
っていうアレです。
私の場合は大事に取っておいたはずの夏休みが、本当は9日くらいあったはずなのに気づいたら1日も無くなっていて9月を迎えることになりました。
そして9月からの予定は非常に詰まっていて夏休みどころではなかったのですが、離婚してもいいので私は無くなったビールを深夜に買いに行く妻のごとく(そんな女いないと思いますが)なんとしても夏休みをとりたくて無理やり休みを先日とりました。
訪れたのは箱根です。
あの、金ないやつは帰れ的な雰囲気が蔓延している箱根に、わずかばかりのお金を持って行ってきました。
話は変わりますが(早すぎじゃね?)私はインスタグラムもフェイスブックもYouTubeもやらないし、特に見ることもありません。なぜやらないか(もしくは見ないか)を考えると、そこに文章があまりないからだと思います。特にインスタグラムは写真がメインでそれだけでは前後のストーリーがわからないから余計に興味が湧かないのだと思います。
しかし、時代はどんどんインスタグラム、ライン、ツイッター、と文字は少なく手軽に『パッと見てわかる』ものにニーズが寄っています。長ったらしい文章なんかは中々読んでもらえないし、その最たるものにあたる、長くてよくわからないものの代表格『哲学』なんて、もはやその辺の鳩より興味を持たれていないと思います。
旅行前日に買った本です。こんなのを7巻まで出せちゃうことにビビります。こういうのを7巻まできっちり読む人っていうのは特に頻繁に使うわけでもない電化製品のやたら分厚い取扱説明書を全ページくまなく読む人と同じくらいの人口な気がします。私は読みたいとこだけ読んでるので全部読むわけではないですが。
年賀状がどんどん廃れていくように、こういった本も南極大陸の氷河の如くどんどん淘汰されているように感じます。本当に時代に求められたものではないのだと感じます。しかし幸せなことに私はそう言ったことが全く気になりません。
そしてアーティストとはみんながやっていることもやりたくなければ全然やらず、みんなが全くやらないようなことも、自分がやりたければひたすら続けていけるような人がアーティストなのです。だからアーティストは会社員(大半の人がなるもの)になれない人が多いんだと思います(笑)
そしてブログも御多分にもれずそんな人気のあまりでないツールかもしれませんが、楽しいので書いています。
高名な小説家の古井由吉さんが、芥川賞を受賞した際の又吉さんと対談した際にこのようなことを仰っていました。古井さんは明らかに世の中にいる2000人の知識人に向けて書くような方でしたが、私は休日にやることが全くなくて『既に終わったゲームのレベル上げ』もしくは『一人で桃鉄』とかをわざわざやるような人たち(かつての私も…)に向けて書いている感覚です。
平日午前7時、都心とは真逆の方向に進むロマンスカーに乗りこむと、周りは定年退職した老夫婦か就職前の最後のバカンス的なノリの大学生カップルが殆どで、働き盛り真っ盛りの年齢である私のような人はいつもながら皆無でした。
足早にビールとおつまみを買い込んで、ロマンスカーに乗り込みます。
とある駅をロマンスカーが通過した時、かつて働いていた予備校がその駅にはあり、当時の同僚や生徒を一瞬思い出したりするのですが、ロマンスカーの速度と軽く回り始めたアルコールによってそれらはすぐに過去へと過ぎ去っていきました。
いつも旅行に出かけると思うのですが、行きの電車や飛行機では乗り物に乗ったら大体すぐにお酒を飲み始めます。そうすると景色は綺麗でリクライニングの椅子を傾けてくつろぎながらおつまみ食べて外の景色を眺めていると、『もうこのまま家帰ってもいいや』的な気分になってきます。まだ何も始まっていないのですが、毎回移動の最中というのはとても幸福度が高いです。
そうやって過去のこととか色んなことに思いを馳せて、ぼーっとしていると今日が人生最後の日でも別にいいや、くらいの気持ちにまでなってきます。別に死にに行くわけではないんですけど(笑)
そんなことを思っていたらあっという間に箱根についてしまい、全く何をするか決めていなかったので、急遽予定を考えました。
思えば今回の旅行は美術館に行くことや仕事が目的ではなく完全に自分の休暇でした。ですので普段泊まらないような宿にも泊まり美味しい料理も堪能しました。
数年前の旅行先の宿泊先選択肢は
みたいな感じだったのですが、今回は宿に泊まりました。
ゲームの選択コマンドは大体『たたかう』『魔法』『道具』『逃げる』みたいにコマンドが画面上に4〜5個現れてコマンドを下にクリックすればいくつか選択できるのですが、私の選択コマンドは随時2択で道路の次はまた24h喫茶店に戻ります。
そして人に話すとそもそも『道路』ってなんだ!?ってなるのと、その下にはコマンドがなく一番最初のコマンドに戻ってしまうことによく驚かれます。
孔子の言葉で
とありますが、こちらの『講師』は四十を目前にして受付と段差のあるベッドで眠ることが「可」になりて。みたいな感じです(笑)
アーティストの村上隆さんが30歳を過ぎた状態でコンビニから夜中に破棄する予定のお弁当をもらいに行くのは中々ガッツがいることだと言っていましたが、30歳を過ぎて道路で寝るのも結構ガッツがいります。
ただ、よく色んな人に大変ですねと言われるのですが、江戸時代の参勤交代なんて将軍担いで徒歩で京都から江戸まで行ったりしてたわけで。もちろん寝る時はベッドどころか布団もない山中で虫とかうじゃうじゃいるなかで寝たりして。そう考えるとアクセル一つで全自動四輪駆動の車で移動できる現代など当時の人からしたらそれだけで夢のような生活だと思います。そう考えると道路も大したことがありません。上には上がいる、高い地点をいつも見て生きていく、それが道路で寝る秘訣です!もちろん別に道路で寝る必要はないんですけど(笑)
で、箱根について最初に訪れたのは岡田美術館という場所でした。
2020年に出来たばかりの美術館で箱根では最も新しい美術館です。
創設者は岡田さんというパチンコで財をなした方のコレクションなのですが、館内は異常にセキリティが厳しく、社長のプライベートオフィスみたいな空間であまり美術館という感じがしませんでした。ただ集められていた作品はどれも素晴らしい一級品ばかりです。
税金対策としてこういった施設や作品は収集されるのですが、『県民割』などと言ってささやかな旅行を楽しむレベルの節約とは訳が違います。多分購入した美術品の控除総額だけで私の生涯年収数百回分くらいいっているんじゃないでしょうか?輪廻転生の頻度半端ないです。
そして言わずもがな、館内にいた方々はみんな着物とか着た上品な方ばかりで財閥系の奥様?みたいな人たちがパラパラいました。当たり前ですがその空間にパチンコに行ってそうな人は一人もいませんでした(笑)
それと撮影なんかは絶対厳禁で、カメラのシャッター音が聞こえようものなら壁に組み込まれた隠し扉の向こうにある秘密の監禁部屋に幽閉されそうな雰囲気が漂っていました。(もちろんそんな部屋ないんですけど)
とか言っておかないと本当に監禁されそうなので言っておきます。
写真が撮れないので、普通に1階から5階までを見て回り、その後館内から屋外庭園に抜けられるので庭園を散歩しました。
私の好きな映画監督タルコフスキーの映画『ストーカー』に出てきそうな風景でした。
ちょっと似てません?
5階までを見て、外に回ると巨大な風神雷神図とそれを眺めながら入れる足湯があります。
江戸時代の侍などの記録を見ると結構午前中に仕事が終わっちゃって、あとは昼からずっと呑んでましたみたいなことも多く、現代のように8時間労働が基準では全然なかったようです。別に私も毎日8時間働いているわけではないので、同じような感じかもしれませんが、本当に平日の朝から商店街をウロウロしたり公園を散歩していると、同じような境遇の人が結構いたりして中々日中の公園とかはスリリングです。
そんなことを思いながら江戸の絵画風神雷神に思いを馳せ、次なる目的地ポーラ美術館に向かいました。
ポーラ美術館に行くとまず目についたのがこちらの彫刻でした。
マ、マーライオン…?
と思ったらダビデみたいな彫刻でした。
あとその横になんかマリオがジャンプしてそうな謎オブジェがたくさんありました。
ポーラ美術館は美の殿堂ポーラ化粧品が経営しているからか、どこもかしこも美しく隙がない感じです。また建物は地中に埋め込まれるような形で地下に降っていくような作りなのですが窓からの採光が美しく至る所に光が満ちています。
前にロニ・ホーンという人の展覧会を見に行ったのですが、本当にここ数年で見た展覧会では最も良い展覧会でした。
箱根に行くことの楽しみとして、美術館はもちろんメインになるのですが、どこで食事を取っても観光地だけあって食事とワインが美味しというのがあります。付け合わせにハウスワインがあるのではなく、かなりの量でボトルを常備しているところが素晴らしいです。
この時点でロマンスカーに続きかなり今回の旅行の満足度は極点に近いところに到達していました。
そして美術館に行くといつも思うのですが本展よりもミュージアムショップが一番面白かったりします。
巨大なヨットがありました。モチーフとして買おうか迷いましたがデカすぎてアトリエに置けないのと、このヨットを抱えて残りの休暇を過ごすのは結構キツイということで却下しました。
下記に続きます。
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