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『年賀と年貢の納め時』〜終わりなき日常を生きる。家族写真を年賀状に載せる奴らに反旗を翻せ!

先日長くお世話になった大学の担当教諭の偲ぶ会がありその会に参加してきました。ご家族の話によると病を患っていたようですが、亡くなる直前まで絵を描いていたとのことでした。

会場では亡くなった先生の同僚が挨拶を行い、この歳になると全く絵を描かなくなる人もたくさんいる中で、まさに絵描きの最後としては相応しいものだったと語っていました。

その先生の年齢になるどころか、現在の私の年齢(40歳手前)でもすでに絵を描くことからは完全に手を引いて、普通に結婚をし、子供ができ、今まで全く送ってこなかった年賀状をここぞとばかりに家族の写真付きで送ってくる人がたくさんいます。

散々在学中は「結婚などしない」「自由を謳歌する」「絵が一番」などと豪語していた人たちが大学を出て30歳を過ぎると、我先にと一斉に結婚して家庭を持ち出しました。
マイナンバーの加入速度を遥かに凌ぐ勢いです。

まさに、オセロの端を取られた気分でした。

まぁ、そこまではいいとして、そう言った方々から届く年賀状には毎回家族の近況(主に子供の成長期)が写真とともに綴られています。

『子供が何歳になりました』『お変わりないですか?』『寒い日が続いているのでお身体ご自愛下さい』などの丁寧な文言と共に。

なんと白々しい…。

寒い日が続いているのでお身体ご自愛くださいだって?
お前のその言葉で寒さが倍増だよ。

…反吐が出るぜ。

とまでは言いませんが、なんか見せつけられている感は否めません。

曲がりなりにも絵を描く学校を出た人間が、普通の大学を出て就職して幸せな家庭を築く平凡なサラリーマンみたいなことをするのはいかがなものか?そこに物を作る人間としての矜持はないのか?その行動に本当に満足しているのか?

一般社会の幸せな家庭人気取りはやめて、アーティストとしてのせめてもの残り火を見せてくれよ!

と、一瞬思うのですが、本人たちに話を聞くと家庭を持ったり子供ができるとそんなものは全部スッ飛んでしまう。そういうものを持ったことのないお前にはわかんねぇよ。

とのことです。

勝手に送りつけて勝手に文句をいう。

腹立たしい…。

幸せと忙しさと子供の可愛さによって、かつての『他人と違うことをして生きる』という思いは瞬く間にかき消され、今やマイホームパパに成り下がっている平和ボケした平和な家庭に、かつての想いを思い起こさせるためクーデターを起こすような気持ちでこちらは毎年年賀状を手描きで返します。

それによって何かが変わることはもちろんないのですが、私自身が最後の砦だと思って送りつけます。

話は変わりますが、家の近所に半永久的に閉店セールを何年もやっているお店があります。一体いつになったら閉店するのか、あまりにその期間が長過ぎて周りの閉店セールをやっていないお店の方が気づいたら先に閉店しているという謎の事態に陥っています。

そして閉店セールがついに終わったかと思うと、今度は素知らぬ顔で『リニューアルオープンセール』が始まったりしています。

なんとまぁ、あさましくも図太くて図々しい…。

『どんなに大変であっても、何をしてでも続けていくのが大事だぞ』

亡くなった先生がよく言っていました。

アーティストもそうです。もう「終わった」と思ったらなんとか生き延びて細々とやっている人がたくさんいます。今年こそは足を洗おうと思ってもずっと続いてしまうみたいです。

作家を続けているだいぶ年上のある方は、真夏はサウナのように気温が上昇する山間部の工場の倉庫に住んでいると言っていました。

また別のある先輩は川から水を引いていると言っていました。

年々届く展覧会のDMの差出人の現住所はどんどん都心から離れていっています。(より家賃が安い地への移住と思われます)

好きなことをして生きていくのは大変です。そして生きていくためには働かなくてはなりません。税金も払わなければなりません。

今年も年貢の納め時が迫ってまいりました。

あぁ、アンパンマンかドラエモンがやってくれないかなぁ…。

と毎年思います。

ついでに払ってくれないかなぁ、とも。

テトリスのように次から次へと日々問題が積み上がっていき、無情にも時間は流れていきます。

後戻りできなくなる前に、別の道を選択するという選択だってあるはずです。家庭を持ったり穏やかな生活を送っている人を見ると、たまにいいなと思うこともあります。だから毎年一年の変わり目に考えます。

今年も絵を描く人間として本当に生きていくのか?と。

タフな選択を迫られている。

2024年年賀状原案 下書き

今年は年末に仕事が立て込んでおり、寒中見舞いになってしまいましたが、先日遅まきながらようやく年賀状を描き終えられました。

どんなに日常が大変であったとしても、幾つになっても性懲りも無くこういうことを続けたいと思っています。

生きていれば必ず楽しいことがあります。(その3000倍くらい大変な事もあると思いますけど)

さぁ、張り切ってまいりましょう。

2024年年賀状 完成原画

本年もよろしくお願い致します。

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