「PAA:他の人はこちらも検索(People Also Ask)」の機能・仕組みをSEOに役立てよう
エイチームライフデザインでコンテンツマーケティング / SEO領域のマネージャーをしている河田 剛です。
突然ですが、皆さんは検索結果でこんなスニペットを見る機会が増えていませんか?
この「他の人はこちらも検索」というスニペット、名称を「People Also Ask(以下、"PAA"と略)」と言います。ここ1~2年ほどでGoogle検索結果上で頻繁に表示されるようになったため、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回、このPAAの機能や仕組みを独自に分析した結果と、自サイトのSEOに活用していく方法を考えてみたので紹介します。
本記事に掲載しているのは個人の調査結果と、観測した範囲のデータ分析における傾向です。
Googleの公式発表がされている情報ではないので、混同されないようご留意頂けますと幸いです。
また、記事はSEOの基本的な知識を有している方を想定して、内容の記載をしております。
PAAとは?スニペットの機能と仕組み
PAAとは、「他の人はこちらも検索」と検索結果上に表示される関連検索の機能です。スニペットは、以下のように質問と回答が一対になった形式で表示されます。
PAAはアメリカなどのGoogle検索では数年前から実装済みでしたが、日本のGoogleで定常的に見られるようになったのは、わりと最近です。
PAAには一般的な検索クエリとは異なり、いわゆる「口語調」で質問文が表示されます。GoogleのAIによるセンテンス理解の向上や、スマートスピーカーによる音声検索の増加などが、このスニペットが表示を増やしている背景にあると感じています。
「People also search for」との違い
混同されることもありますが、PAAは「People also search for」というスニペットとは異なります。People also search forは、主に検索結果の最下部に表示されている関連クエリの一覧です。
こちらはPAAと違い、口語調の質問文やアコーディオン内に回答が表示される、といった機能を持ちません。このスニペットに表示されるキーワード、ニーズに関しても、PAAとは別のロジックで表示している様子です。
PAAの仕組みとSEO上のリターン
PAAのスニペット表示の仕組みと、スニペットへ選出されることによるSEO上のリターンは、以下のポイントを抑えることで理解できます。
PAAは全検索結果の43%ほどに表示されている (Ahrefs調べ, 2020年時点)
PAAに表示される質問と回答は常に同じURLを参照する
PAAはデフォルトで平均4個が表示され、操作により無限に表示が増える
PAAを操作するユーザーは3%、その内、ソースをクリックするのは40%(Backlinko調べ, 平均値)
参考URL:https://ahrefs.com/blog/people-also-ask/
以上を理解したうえで、仮にPAAへ選出されている1つの回答ページへのCTRを25%とすると、スニペットに選出されることで、以下のようにオーガニックトラフィックのリターンを得られると試算できます。
(もちろん、現実は上記のようにきれいな数値は出ませんが)数十キーワードの検索結果に表示されているPAAに選出されれば、大きな合計トラフィックを得られます。
また、キーワードによっては検索結果の掲載面のかなり上部にPAAが表示されます。個人的には、1位と2位の間、つまり、実質1.5位がPAAの掲載である検索結果も見たことがあります。
検索結果の上部にあるPAAに表示されれば、PAAが操作される率やクリック率もさらに上昇するので、より多くのユーザーを自サイトへ集客できるでしょう。
PAAが表示されやすいキーワードは?
PAAが表示されやすいキーワードはどういったものなのでしょうか。
今回、日本語の約6,000キーワードの検索結果をサンプルとして、PAAの表示の有無と、質問や回答のセットに関する傾向を調査・分析しました。
その結果をまとめると以下の通りです。
日本のGoogleにおけるPAAの表示率は50%以上ある
PAAはカスタマージャーニーの上流キーワードほど表示されやすい
PAAに表示されやすいのは曖昧な疑問に対する回答である
それぞれの結果を詳しく掘り下げましょう。
日本のGoogleにおけるPAAの表示率は50%以上ある
今回、日本語の約6,000キーワードの検索結果にPAAが表示されるか否かを調べたところ、その表示率は約50%となりました。つまり、何かでググれば2回に1回はPAAが表示されるぞ、ということですね。
※補足:結果に偏りが出ないよう、様々な業界、クエリタイプ、検索ボリューム等のキーワードを組み合わせて調査した結果を用いています。
なお、May 2022 Core Updateの前後でデータ観測していた際は、アップデート後にPAAの表示率が上昇した印象でした。そのため、アルゴリズムアップデートや小規模な変動のたびに、PAAの表示率は増減するかもしれません。
PAAは検索回数が大きいキーワードほど表示されやすい
さらにサンプルデータを分析していくと、PAAは以下グラフのように、検索ボリュームの大きなキーワードほど表示率が高い、という結果も得られました。
上記を見ると、 検索ボリューム5,000以上のキーワードでは60%以上の割合でPAAが表示されますが、テールワードでは40%台まで表示率が低下します。ビッグ~ミドルワードまでは盛んにPAAが表示されるが、テールワードではやや表示されにくい、という傾向です。
このデータをさらに、異なる角度でも紐解いてみます。
キーワードに特定の語句を含むものだけで集計して、PAAが表示される率を算出した結果が以下の通りです。
上記の図、例えば「いくら」という語句が入るキーワードは平均で55%のPAA表示率です。つまり、10キーワードで検索すれば5~6キーワードでPAAが表示される計算になります。
同様に、「手続き」を含む語句では70%、「タイミング」を含む語句では92%…と、含有する語句によって、PAAの表示のされやすさに差異があることがわかります。
そして、(定性的・主観的な観点になってしまいますが)これらの語句を検索者の置かれているフェーズでグルーピングしてみると、PAAは検索行動の上流に属しているキーワードほど表示されやすい印象です。
これは、前述した検索ボリューム別の傾向とも相関するデータではないでしょうか。一般的に、ボリュームの大きなキーワードはニーズへの抽象度が高く、逆に小さなキーワードは抽象度が低い(=解像度が高い)です。
検索者がまだ「自身の欲しい情報」を絞り込めておらず、抽象度の高い検索キーワードを用いている時はPAAが表示されやすい。やがて検索行動の終局に近づき、検索行動のゴールが見えるキーワードではPAAが表示されにくくなる…という性質がありそうです。
自身のニーズが絞れてきたり、知りたい情報が固まってきた検索者はテールワードを検索に用います。また、テールワードにたどり着くまでにある程度、探している情報の検索への熟練度も高まっていると考えると、このフェーズの検索者に対してPAAの表示は必要性が低い、という判断がされているのかもしれません。
PAAに表示されやすいのは曖昧な疑問に対する回答である
PAAは、検索者の漠然とした疑問の投げかけに対して、回答が表示されやすいという傾向も持ち合わせます。今回取得したPAAの質問文すべてを形態素解析にかけ、集計結果を見ていくと、下記の語句を有する質問文が多かったです。
どうする(どうしたらいい)
どの(どんな)
なぜ
いくら
曖昧な表現が多く、語彙も達者ではないクエスチョンが並ぶ印象です。
例えば、検索エンジンに慣れている人間であれば「引越し 料金 相場」というキーワードを用います。しかし、PAAでは同じニーズに対して「引越し いくらかかる?」といったセンテンスで表示されます。
検索者が「相場」という言葉を知らないか、まだ思いつかないと想定しているので「いくら?」という表現になるわけです。
この曖昧さは前項で挙げた、「検索ボリュームが大きく、かつ検索行動の上流にあるキーワードほどPAAが表示されやすい」という傾向とマッチするように感じます。やはり、何を調べたいのか(調べるべきか)を、検索者が図りかねているケースに対応しているのかなと推察されます。
ゆえに、一見すると検索したキーワードに関連していないようなPAAが並ぶというケースもあります。このケースも同様に、「あなたが本当に欲しい情報はコレではありませんか?」という、Googleから検索者に対してのレコメンド的なアプローチだと捉えられます。
PAAのSEO - 掲載やリプレイスを狙う手段
ここからやや実践的な内容です。
各種データの分析から、自サイトをPAAへ表示させるためのSEOの施策を以下の通り考えました。
PAAの質問文の検索結果で上位化する
口語調の疑問文を上手く使ってコンテンツを作る
オーガニックトラフィックが多いページでPAA表示を狙う
1つずつ詳細を解説します。
PAAの質問文の検索結果で上位化する
1つ目の施策は、例えばBというURLを「〇〇〇?」というPAAのアンサーの出典元にしたい場合、「〇〇〇?」というキーワードで検索するとBが上位表示されるように対策する、というものです。
イメージとしては、以下の図がわかりやすいでしょう。
冒頭で書いた通り、PAAは質問と回答が一対です。この質問文で検索した場合に、その検索結果で上位化されているURLが、回答の出典元に設定されるケースが多いため本施策が有効だと考えられます。
実際に今回のデータを集計したところ、 PAAの質問文で検索し直すと出典元のURLが上位1~3位にランクインされる率が7割以上ありました。
そもそも、その疑問に対して優れた回答をしているページゆえに、PAAに選出されているのです。アンサーボックスで最上位化しているケースも多かったので、PAAの疑問文で検索した際のアンサーボックスを狙うのも有効でしょう。
口語調の疑問文を上手く使ってコンテンツを作る
2つ目の施策は、ページのセンテンスに口語調の疑問文を積極的に使いましょう、というものです。
実際に今回のデータで、PAAの出典元ページ内に口語調の質問文が含有される数を調べてみました。結果としては、口語調の質問文が多く使われているほど、そのページがPAAに選出されやすいという傾向はありそうです。
つまり、口語調の疑問形を用いてユーザーの質問を代弁し、わかりやすく説明されたコンテンツがPAAへ選出される確率を高める、ということですね。
オーガニックトラフィックが多いページでPAA表示を狙う
3点目は、オーガニックトラフィックが多いページでPAAの表示を狙ってみる、という施策です。以下は、当社の運営サイトのURLごとのオーガニックトラフィックと、そのURLが表示されているPAAの数、の2値を並べたグラフです。
一定期間のオーガニックトラフィックでURLをグループにし、各グループのURLが選出されているPAAの数の平均をグラフ化しています。オーガニックトラフィックの多いURLほど、選出されているPAAの数が多くなりそうだとわかります。
この結果は、「PAAは検索回数が大きいキーワードほど表示されやすい」の項で書いた内容ともリンクしそうです。
PAAの表示が上手くいかない場合は、同じテーマの上層ページや、もっとオーガニックトラフィックの大きなページで対策してみるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
調査・分析をした内容のまとめです。
<PAAが表示されている傾向について>
PAAの表示率は50%以上ある
PAAは検索回数が大きいキーワードほど表示されやすい
PAAに表示されやすいのは曖昧な疑問に対する回答である
<PAAの掲載やリプレイスを狙う手段>
PAAの質問文の検索結果で上位化する
口語調の疑問文を上手く使ってコンテンツを作る
オーガニックトラフィックが多いページでPAA表示を狙う
今回、PAAを調査・分析した結果を紹介してきましたが、大切なのは小手先のテクニックではなく、真に有益な情報をユーザーへ提供しようとする姿勢や、データからその思考を深めることにあります。
ユーザーのニーズを考え抜き、求めている情報をきちんと提供できることが、ここで紹介した対策で最大成果を生むためのコツです。現に当社でも、その点を上手く抑えられている試行のみが実績を作っているなあと感じます。
また、PAAだけでなく、Google検索には日々、新しい検索スニペットが登場しますよね。オーソドックスな掲載順位の改善を図るSEOだけでなく、検索スニペットを狙った対策も非常に有用なので、様々なTRYをおすすめします。
今後も、当社ではこうした調査や分析からわかった傾向を随時、noteで発信していきます。ぜひ、皆さんとも有益な情報をシェアできると嬉しいです。