歌詞カードで読書

読書が苦手だ。
どうにもこうにも、集中力が続かない。
本の選び方も分からない。

一番本を読んだのは、大学の卒業論文制作のとき。
そんなに優秀な論文ではなかったが、卒業したい一心で、2日で一冊を読み終わるという私にしては驚異のスピードを叩き出した。
でも、後にも先にもそれだけ。

漫画も気に入ったものを少し集める程度で、続けて買っていた読み物はファッション誌くらいだ。
きっかけは姉が自分のjunieを手にしながら発した一言。
「こんなのは読まないの?」
ピンと来た私は、小学6年生にしていきなりプチsevenを買った。
なかよしやりぼんは買わせてくれなかったのに、なぜかこれは親に何も言われなかった。
おそらく週刊か月刊か、というのが重要だったみたいだ。

大学生の頃、中学の時に通っていた塾でバイトをしていた。
ある日、塾長に
「私、読書苦手なんです。」
と打ち明けるととても驚かれた。
なぜそんなに意外に思われたのか不思議で、しばらく理由を考えていた。
ひとつ思い当たったものがある。
CDの歌詞カードだ。
昔から音楽が大好きで、好きなアーティストのCDは歌詞カードをじっくり読みながら曲を聴いていた。
耳が悪いのか、歌声だけでは何と言っているのか分からないことが多くてフラストレーションになっていたからだ。

「妥協」はSMAPの『セロリ』で知ったし、
「treasure」という単語は元SPEEDのhiroのシングルタイトルで覚えた。
分からない言葉は辞書で引いて、歌詞を理解しようとしていた。
山に囲まれた田舎の中学生だった私は、よくある「都会の喧騒」という情景に想像ばかり膨らまし、宇多田ヒカルの「最後のキスはたばこのflavorがした」に眉間のシワを寄せ、未知の世界が果てなく広がることを思い知ったものだ。

きっと歌詞カードは私にとっての読書だったのだ。
だからきっと、私に勉強を教えていた塾長には読書好きだと思われるような人間だったのだろう。

そんな私が、こうして文章をつらつら書きたいと気づいたのは、つい最近のこと。

その続きは、また今度。

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