【ネタバレ感想】プロレスを全く知らない人間が「極悪女王」をみた結果
※この感想はプロレスを全く見たことがない人間の感想です。プロレス関係のことで間違った箇所があったとしても、優しく目を瞑ってもらえると嬉しいです。
タイトル通り、僕はプロレスを全く知りません。なんなら、プロレスや総合格闘技(最近だとbreaking downとか?)などの殴り合いをするものを、しっかりと見たことがありません。
なぜなら、痛そうだからです!笑
チェンソーマンみたいなグロいものは大丈夫なのですが、物理的な痛さ、それこそSAWみたいなものは見れないんですよ。
ずっと痛そうなプロレス
そういう意味でいうと、プロレスシーンはかなり見るのが辛かったです。特にダンプ松本がフォークやハサミで、人を刺すところはかなりきつかったです。それこそ、目を瞑ってしまうくらい見てられなくて、見るのをやめようか迷うくらいにはしんどかったです。
主演「ゆりやん」の凄さ
前半見ていて気になったのは、これどう見ても「ゆりやんじゃん」と思ってしまっていました(ダンプ松本さんを知っている人ならそうじゃないかもしれませんが)。
ただ、これゆりやんじゃなかったら、かなり重たいドラマになってしまうなという感じがしました。
まず、父親がクズすぎる。DVに、給食費の横領、しかも不倫相手と子どもを作り、その子に同じ名前の「香」と名付ける(これシンプルになんで?)。急に帰ってきたと思ったら、プロレスを辞めて働けと命令。しかも、同じ事務所?のスーパースター「千種」からサインをもらい、千種に会わせると詐欺まがいの行為。
クズすぎる。
特に、千種のサインのくだりは、ゆりやんでも見てるのがしんどいくらい、重たい話でした。
ただ、こういう重たい話を「ゆりやん」だからこそ、コメディー調にできたのだと思います。壁を突き破って外に落ちていくシーンなんて、ベタすぎるのに、クスっと笑ってしまいました。
それだけではなく、闇落ちしてヒールとしての覚悟を決め、メイクをしたゆりやんの演技は本当にプロレスラーにしか見えなくて、驚きました。
ゆりやんの滲み出る優しさと、ダンプ松本さん役の幼少期の優しさを感じさせないくらい、狂気、怖さ、それこそジョーカーを彷彿とさせる様子に恐怖を覚えました。
そこに、俳優「ゆりやん」としての凄さが出ていたと思います。
大人の男にいいように使われる少女たち
最後に、言及されていましたが、「少女たちの戦いの物語」というナレーションがありました。これはダンプ松本さんの実話を基にしたフィクションであるとともに、大きなテーマとしてフェミニズムの要素もあると思います。
80年代、90年代というのは、今よりももっと女性差別が激しい時代だと思います。そういう時代の中で、女性が主体的に戦っているように見える女子プロレスもまた、やはり裏には大人の男たちがいました。
「ブック」がこの作品の大事なキーワードだと思います。最初はブックという言葉が出てきた時、よくわかりませんでしたが、物語を見ていくうちにシナリオを指すことがわかりました。
ブック破り、それはシナリオを無視すること。
ジャガー横田さんのジャガーも大人に勝手につけられた「ジャガー」でした。男たちが描く「ブック」の通りに動くことに嫌気がさし、クラッシュとの試合で「ブック破り」を行います。そして、その試合のあと、しばらくして海外留学にいくことを決意します。
ダンプ松本さんの引退試合では最初はヒールに徹していたダンプ松本さんも、ブック破りの2試合目を強行し、自分のやりたかったプロレスを行います(ここで、声を出して泣きました)。
おそらくですが、会社の男たちに同期が不仲になるように仕向けられていたことによって、同期の中の軋轢が大きくなっていったと思われます。
この物語で「ブック破り」がキーワードとなっているのは、やはり男社会を破り、自分たちのやりたいこと、女性の主体性を獲得する物語でもあると思います。
だからこそ、プロレスを知らない(プロレス技の名前何もわからなかった)私でも感動できたんだと思います。
PS.もう一回見たいけど、プロレスシーンが怖くて見れない笑