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『2030年の世界地図帳』を読んで考える「日本」と「私」の生存戦略。
中学生の頃、僕の一番好きな資料集は地図帳だった。
授業中、徐に自分の住んでいる場所のページを開いて、
そこから次々とページをめくりながら、
遠くへ遠くへ「空想の旅」に出る。
シーサーのいる沖縄。
何かが世界一らしいアメリカ。
とても寒いらしいスウェーデン。
ひどく貧しいらしいアフリカ。
地理の時間はもちろんのこと、国語の時間も、数学の時間も、英語の時間も…。
先生に内緒でこっそりと知らない場所の旅に出ていた。
それから時間の旅を繰り返すこと20年。
僕はだいぶ大人になり、落合陽一さんの書いた地図帳を開いた。
それは子供の頃に見た地図帳とは全く違った、新しい地図帳だ。
しかも今から更に10年先を考える未来の地図帳だ。
この本はSDGs(持続可能な開発目標)の話題を中心に、落合さん独自の見解を交えながら未来を予測した評論である。
僕個人としては、SDGsという言葉を最近よく耳にするものの、
「国連が世界をより良くするために作った具体的な目標」ぐらいの曖昧な認識しかなかったので、ちゃんと知っておいた方がいいだろうと思い、この本を手に取った。
ここでは個人的に気になった部分を少しだけ紹介したいと思う。
① 世界の動向
② 食料に関するイノベーション
③ SDGsの正体と、「日本」と「私」の生存戦略
①世界の動向
この本には今後10年で世界がどういう風に変化していくのかが書かれている。もちろん不確定要素はあるものの、ほぼ確実に予測できる未来もある。
それは世界の人口分布と経済勢力図、そしてテクノロジーがもたらす新しい社会だ。
皆さんもご存じの通り、「日本」は少子高齢化が進み、労働生産性が下がって経済大国から失脚していく。
代わりに台頭してくるのがインドだ。
アメリカ、中国の勢いは周知の事実で、これからも勢いを増すであろうと思われるが、今後はインドやアフリカ諸国など、今まで貧困に喘いでいた国が、アメリカ・中国のもたらしたIT技術の恩恵を受けて、これまでの先進国のような「封建的社会からの脱却→民主主義と資本主義の定着」という所謂「近代」の過程を経由せずに、一足飛びで発展を遂げる「サードウェーブ」として頭角を現してくる。
そして2030年には中国・アメリカ、そして人口・地理・英語圏などの好条件を揃えた「インド」が日本を抜かし、GDPの世界3強として君臨するだろうと言われている。
他にも、インドネシアやブラジルといった日本とは真逆の人口ピラミッドの国々がどんどん経済発展を遂げると予測されており、投資やビジネスなど今後グローバルに物事を考えていく人にとっては知っておかなければならない必須事項だ。
②食料に関するイノベーション
「SDGs」には17のゴールが掲げられており、さらにその下に169のターゲットが併記されている。
例えば目標1の「貧困をなくそう」の一番目のターゲットは、「2030年までに、現在1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」とあり、具体的な数値を示して目標を理想論で終わらせないための実践的な方法を示している。
その中でも「食」に関する社会課題は多いが、最新テクノロジーによって解決にアプローチしているものもある。
例えば
ブロックチェーンとAIの技術を使い、あらゆる食品の管理・流通を自動でコントロールすることで、フードロスを減少させるという。
またドローンやロボットなどの自動技術、高度な測位・通信技術を組み合わせた「スマート農業」の開発により、無人かつ低コストで大規模な農作物の生産が可能になり、もはや今年のうちに農業は成長産業へと進化するとさえ言われている。
さらに面白いのが「培養肉」や「昆虫食」といった一見想像しずらい食べ物も普及していくと言われている。
「培養肉」ができたら、今の食肉を中心としたレストラン文化はどう変わっていくのだろう。料理人として複雑な思いもある。
「昆虫食」というのは、昔よく食べたイナゴの佃煮だと思ったら、それほど抵抗は感じないかもしれない。
③SDGsの正体と、「日本」と「私」の生存戦略
この本で一番面白かったのは、
「SDGs」とは世界が一致団結して地球の課題に向かう為の最高の目標設定だと思っていたのだが、実は違うという事だった。
実は「SDGs」とは、
圧倒的なIT技術によって勢力を伸ばすアメリカ
国家主導で大規模な市場を作り出した中国
サードウェーブのインド・アフリカ諸国
に対抗し、世界で戦っていくための
法と倫理といった「思想」を発展の軸においたヨーロッパの生存戦略だ
という落合さんの見解。
めちゃくちゃ大雑把に説明すると、
「おい、中国!アメリカ!経済発展してるからっていい気になるなよ。こっちはちゃんと地球環境や基本的人権考えながらやってんだ。お前らも守れ」
と主張するヨーロッパ主導のSDGs
みたいな構図だ。
そして、
この先経済発展は期待できない半泣き状態の日本はヨーロッパに乗っかれ!
という落合さんの主張。
もちろんこんなにいい加減ではないが(笑)
日本の生き残る道はそこにあるという。
ただしヨーロッパと全く同じではない。
確かに長い歴史や伝統・文化を持ち、それを背景としたモノづくりブランドには、スイスやイタリアに似たヨーロッパ的な付加価値を高めていく戦略があるかもしれないが、もっと日本独自の戦略があると落合さんは主張する。
それがデジタル発酵だ。
聞きなれない言葉だが、きっと落合さんが考えて、落合さんが世界で一番最初に使った言葉だろう。
詳しくは本書を読んでほしいが、
デジタル発酵とは、ヨーロッパ主導の固定された「静的な」目標であるSDGsを、より「動的」なものへと発展させた考え方である。
それは万物の「関係性」によって形成されるネットワーク。
定まったカタチがなく、柔軟に幾重にも変化する日本の「発酵」「八百万の神」「自然」そのもの。
そこに「日本」の進むべき道があり、「私たちひとりひとり」が日本人として世界で戦っていく為のヒントがあるという。
おわりに
この本はこの先の日本と世界の未来がどうなっていくのか、図解も使ってとても分かりやすく書かれた本です。落合さんの専門分野であるテクノロジーの部分は少し難しい言葉も出てきますが、他の落合さんの本に比べたらほんのちょっとです。落合さん特有の言語表現はとても面白いので楽しみましょう。
よくこういったマクロの視点で書かれた本を読む時は、必ず「自分はどうなのか・どうするのか」というミクロな視点を同時に持ちながら読むことが大切です。
高校生ぐらいの人には皆に読んでほしい必読書だと思います。
おしまい (⋈◍>◡<◍)。✧♡
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