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【シ】

誰かがシを唱えた

「演劇のシ」だと誰かは言った。

私はひどく考えたものだった。

演劇が好きだ。
俳優が好きだ。
美術が好きだ。
音楽が好きだ。

劇場が好きだ。

写真 2020-08-23 23 45 58


2020年8月23日(日)
『大地』
作・演出:三谷幸喜
出演:
大泉洋、山本耕史、竜星涼、栗原英雄、藤井隆、濱田龍臣、小澤雄太、まりゑ、相島一之、浅野和之、辻萬長
会場:サンケイホールブリーゼ

予てより三谷幸喜氏の大ファンである。
そして、この出演陣…滾る……大いに滾った。

しかし、それは大千秋楽のほんの5日前になってからだった。

なぜなのか

ツイッターランドに入り浸る私は、その日も趣味の情報を追いかけていた。
そして流れてきたツイートに心臓がドッとした。

「三谷幸喜の真骨頂!大阪公演絶賛上演中!」

は………はい?
え?あれ??上演中!?!?!?
どういうことだ…追いかけている監督、演出、俳優方の最新チケット情報は常にメールで届いてくるはず…

はず…だった…思い出した。
年内に観劇を予定していた4つの舞台公演の総てが中止となった私は、すっかり意気消沈し、メールを開くのを止めていた。尊い舞台の世界から逃げ出したのだ。

ひどい後悔が襲った。やっと三谷さんの舞台を大阪で観られる機会。数々の東京公演の通知を指を加えて眺めていたあの日が、走馬灯のように流れていった。

そして不安が過ぎった。通常ならチケットは一般発売で即完売となるはずなのだが、「上演中」とうたうこのツイートはどういうことだろうか。恐る恐る添付されたリンク先、チケットセンターへ進む。

発売中

発売中とはなんだ。
発売中?まだ買えるということ?大千秋楽は5日後だぞ?しかも通常なら争奪戦ともなるそのチケットがまだ僅かだがあるではないか。これは…システムの表示エラーか何か??

逸る気持ちを抑えつつ購入へ進む。

買えてしまった。

迎えた大千秋楽

感想はまた後に。
幕が下りた今、整理しよう。

[現状]
・「上演中」と告知されたチケット入手困難であるはずの舞台
・大千秋楽と数公演の配信(有料)

どんなに豪華な制作・出演でも、どんなにファンが多くても、ついに舞台というエンタメはここまで追い詰められているのだ。
観たい気持ちをグッと堪えているファンもたくさんいるだろう。私も普段ならば遠征してまで追いかける舞台や展覧会が山ほどある。そうして「こんなに素晴らしい時間をありがとう!どうか!次の創作へこれを遣ってください!」そう息巻いてパンフレットやグッズをニタニタと手にするのだ。

[対策]
・コロナ追跡アプリのインストール
・コロナ追跡システムへの登録
・チケットの背面へ氏名、連絡先の記入
・チケットもぎりは観客自ら
・入場前のアルコール消毒
・グッズ販売所の飛沫対策シート
・一席ずつ空けた観客席
・キャストへの手紙、贈り物は一切受け取らない
・両手に溢れる舞台告知のチラシ配布は一切ない
・アンケートはQRコードより回答

ここまで徹底している。
慣れない入場にあたふたするのだけど仕方のないこと。劇場、舞台の未来を思えば何でもない。

「守りたければステイホーム」ではもう守れないところまで来ている。
「配信でお楽しみください」ではこの先に渡せないものがある。

未来の自分が「あぁ、好きだったのに」と言わない為にも。

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