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続・サイバーステップの通常営業 『女性国家乗っ取り計画 -盗賊の俺が王になる-』はいかにして全年齢向けとなったか(ネタバレ感想&エロ要素有)


前書き

 今更言及することでもないが、エロコンテンツというものは非常に多種多様である。大きく分けたジャンルからシチュエーションや設定ごとにさらにいくつものジャンルに派生する、なんてことはザラだ。今回はそんなエロコンテンツの中でも比較的メジャーなジャンルである、エロファンタジー作品を取り上げたい。ちなみにこの検証記事でサイバーステップのファンタジー作品を扱うのは3作目になる。

 今回紹介する作品は2023年8月10日に配信された『女性国家乗っ取り計画 - 盗賊の俺が王になる - Female Nation Takeover -』だ。原作は2017年1月27日にブラックカラントから発売された『牝狩賊 〜淫獄に穢れる乙女たち〜』(公式サイトは消えてしまっているので、タイトルで検索して欲しい)。ブラックカラントらしい相変わらずの抜きゲーである。
 ちなみに本作はタイトルからして何となく想像がつくと思うが、主人公が悪漢、つまりピカレスク物であるということに留意しておいて欲しい。いつものように元になったゲームを原作、PandaShojo製はPS版と記述する。


原作について

 原作のあらすじ

地形を生かした難攻不落の都市ルガラント国。
女が国を治め、姫がこの国の最高権力者である。
男も当然居るが女の方が立場が上な為、扱いがぞんざいで威厳を失っている。
そんな中、国を内側から破壊しようと目論む人物が居た。
彼は心の底から思う。

女は男にひれ伏すべきだ――と。

FANZAの商品紹介欄から引用

 いきなり男尊女卑丸出しのあらすじだ。前述の通りプレイヤー側は悪党なので、女性国家であるルガラント国を攻め落とすためあの手この手を使って侵略の糸口を見つけていくこととなる。


 以下が登場人物になる。ヒロイン4人に主人公とモブ1人なのですぐ終わる。

  • アリシア=リリー(CV:朝井こもも) ルガラント国の女王。いつもにこやかな笑みを浮かべており、国民に対しても分け隔て無く接する心優しい人物。政治関係には疎く、基本大臣に投げっぱなしにしている。

アリシア。エディ以外の全キャラ共通なのだが、ゲーム中に姓は出てこない
  • ステラ=クック(CV:春山色葉) 女騎士隊の将軍。気が強く真面目なため、表向きは芯が強そうに見える。アリシアに対して恋愛感情を抱いているが、それは非常に屈折した恋慕の情である。

ステラ。ゲーム内では気づかなかったが変わった名字だなぁ
  • ティナ=マクスウエル(CV:星空ユメ) 花屋を営んでいる女性。無口で愛想がなく、接客業には向いていない。非常に優秀な魔法使いでもあり、高度な魔法や魔道具を扱える。幼い弟妹がおり、とても家族思い。花屋は流行っていないので貧乏。

ティナ。普段からこんな格好をしているのか
  • ルース=エイリー(CV:柏木逢花) 酒場の店主。明るく人当たりのいい性格。彼女の酒場には場所柄か国中の裏表いろいろな情報が集まってくるらしい。彼女自身が情報をやりとりすることもある。

ルース。自分の酒場を大切に思っている
  • エディ=ヘールズ 主人公。大盗賊団の頭領。度を越した男尊女卑精神の持ち主。魔力の探知は出来るが魔法は使えない、自信満々で戦場に出ていって返り討ちに遭う、侵略の手段をその場の思いつきで何とかしようとするなど結構なポンコツ。スチル絵で見る限り筋肉が全くないヒョロガリで、とても強そうに見えない。

  • ギル=クィルター 主人公であるエディの相棒、というか腰巾着。エディのことを「親分」と呼ぶ。ガタイがよく性欲旺盛で、女とみればすぐ襲いかかろうとするらしい。肉体派だが頭も悪くないという設定だが、正直中途半端なキャラクター。


 天然の要害に作られたルガラント国は、女性の比率がとても高く、また能力も男性に比べて高い国家であった。そのためルガラントでは女性が働き、男性は家にこもって主夫のような生活をしていた。
 そんな国の話を聞きつけた盗賊団の頭目エディは「女が男より上にいる国なんて認めねぇ」とイチャモンをつけ、ルガラントに侵攻を試みる。

どういう思考回路だ
どういう理由だ

 しかしエディの盗賊団はルガラントのステラ将軍率いる女騎士隊との戦闘であっけなく敗北。団員の大半が戦死、もしくは捕虜となってしまった。「剣には自信がある」と言って大将のエディ自ら前線に赴くも、ルガラントの騎士には歯が立たず敗走してしまう。

戦闘開始前はイキりまくっていたエディだがこの結果に

 正面から戦っても勝てないと悟ったエディはルガラントに入国し、内側から国を崩そうと画策する。その足がかりとして、使えそうな人材を籠絡しようと試みる。どうやるのか? 快楽堕ちさせるのである。なお手段は決めていない。

エディは割と思いつきで行動する
言うのは簡単だがどうやってやるつもりなんだろう

 ゲームを開始してすぐに4択の選択肢がある。どれを選んでも特に会話に変化もないし何だろう、と思っていたが、これは終盤でどのヒロインを攻略するかに関わっていた。上からアリシア・ステラ・ティナ・ルースの順となっており、最初の選択肢で選んだキャラクター以外は攻略出来なくなる(一部例外あり)。

ゲーム開始して数分で選択肢。結局の所ここでヒロインの選択となる

 酒場の女店主ルースから腕のいい魔法使いがいることを聞いたエディは目的の人物であるティナと出会う。ティナは花屋をしつつ魔法を使って副業で傭兵をやって金を稼いでいたが、花屋は儲かっておらず傭兵としての仕事もないので貧乏だった。
 ティナの家が貧しく幼い弟妹を食わせていくのにも苦労していることを知ったエディは、ティナの家に泥棒に入って金品を根こそぎ持ち去り、協力しないと明日の飯にも事欠くように仕向ける。これはルガラントがあまりにも治安が良いため、住民には防犯意識が欠けていたゆえに起きた出来事だ。
 ティナの家を困窮させることに成功したエディは、金を払う代わりに彼女の体を要求する。ギルにいろいろ言われるが、快楽堕ちさせて言うことを聞かせた方が楽だからとエディは言う。

快楽堕ちってそんなに簡単なことなのかな?

 結局ティナを籠絡することに成功し、次は情報収集も兼ねてルースを手籠めにすることに。その場に置いておくと音を記録出来る魔道具、『蝸牛の石』をティナから貰い、そのままルースの元へ赴く。『女性優位の国で女が男に襲われた』などという事実はルガラントでは女性のプライドを滅茶苦茶にへし折る屈辱であった。エディはルースを襲い、その際の行為の音声を『蝸牛の石』に録音することで脅迫材料としたのだった。

都合のいい展開と言ってしまえばそれまでだが

 ルースを脅迫していいなりにしたことで、エディは新たな情報を手に入れる。盗賊団に苦汁をなめさせた女騎士隊の将軍ステラが、どうやらアリシア姫に対して恋愛感情を抱いているらしい。この情報を使えばまた何か出来るかも知れないとエディは考える。

 その後これまた籠絡したステラから、彼女が隠し持っていた魔道具『征服者の毒』を渡されたエディ。なんでもこれは一度体内に入ったら排出出来ず、魔力を込める量に応じて遠隔で相手の体調を自由に操れる毒という超がつくほど危険な魔道具だった。ステラはこんな危険なものを切り札として隠し持つほどアリシアに対して歪んだ恋慕の情を抱いていた。

ステラは魔法が使えないので効果を発揮できない。宝の持ち腐れである
こんな危険な物どこから手に入れたんだよ

 そしてこの毒をティナが使うことでアリシアも籠絡。あれよあれよという間に侵略の準備が整ってしまった。ここから最初に選んだ選択肢の通りに各ヒロインのルートへと分岐していく。


個別ルート

 EDはバッドエンドを除くと各ヒロイン4つとハーレムEDを加えて5つある。簡単にではあるが内容を書いておく。

  • アリシアED エディの苛烈なSMプレイやら浣腸プレイやらを食らって快楽堕ちしたアリシアは、エディの盗賊団が再度侵攻してきた際には無条件で降伏することで合意してしまう。盗賊団の襲撃を受け、ルガラントは甚大な被害を被る。エディの手によって国中のさらし者にされるアリシア。エディによる王位の簒奪は成功した。

どうやらアリシアはおかしくなってしまったらしい
  • ステラED 盗賊団に国を売り渡したらアリシアと自分の命は助けてくれる、という約束をしたステラはわざと負けるように作戦を立て、結果盗賊団の勝利に終わる。アリシアに対して愛を告白するステラだったが、アリシアにとって彼女はあくまで信頼出来る臣下でしかなかった。国を裏切ったステラを軽蔑の目で見るアリシアだが、ステラは諦めない。アリシアに振り向いてもらえるまで盗賊団の庇護下でよろしくやっていくと決めるのだった。

そりゃあ嫌悪感しか湧かないよねって話
姫のことを想うがゆえに国を滅ぼした女、ステラ
  • ティナED 過酷な調教を加えていくうち、エディはティナから特別な感情を向けられているような気がし始める。ギルからも言われるのだが、どうやらティナはエディに惚れてしまったらしい。愛情というものを信用しないエディは戸惑うが、結局ルガラントを滅ぼすための行動を開始する。ティナの魔法で女騎士隊を弱体化させ、戦闘は盗賊団の勝利となる。略奪の限りを尽くす手下の盗賊たちを見ながら、エディはティナのことを考える。このままティナの元にいると、いずれ愛というものに取り込まれて自分が自分でなくなってしまう。そう感じたエディは奪える物を全て奪い尽くすと、盗賊団と共にルガラントを後にするのだった。ティナと二度と会わないという決意をして。

ティナから向けられる感情に戸惑うエディ
愛情を信じないエディはティナとの関係に悩む
  • ルースED 快楽堕ちしたルースはエディの言いなりとなり、ルガラント国内に嘘の情報を流して混乱させる。ステラの偽作戦もあり、盗賊団の襲撃は上手くいきルガラントは滅ぼされる。快楽に負けて国を売ったルースは生き残った国民の女たちから罵声を浴びせられるのだった。

ルースは自分の命も酒場も一応守れた。払った代償は大きすぎたが
  • ハーレムED アリシアを懐柔し、他の3人もまとめて籠絡したエディ。盗賊団の襲撃はあっけないほど上手く行き、ルガラントは滅亡した。新たな王となったエディがアリシアたち4人と5Pをして終わり。ルート分岐が少々特殊で、最初の選択肢で『早々に姫を襲ってしまう』を選び、アリシアに対しての選択肢で『恐怖を植え付ける』を選択、その後ラストの3回の選択肢でそれぞれステラ・ティナ・ルースを一回ずつ選ぶとこのルートになる。

正直おまけみたいなEDなので、取り立てて語るようなことはない

原作の感想

 エロファンタジーということで、以前紹介したこの作品の原作みたいにモンスターが出てきて異種姦をやらかしたり、またはこの作品の原作みたいにヘンテコなアイテムを使った面白プレイをやるのかと思っていたが、想像していたよりおかしな展開にはならなかった。媚薬やスライムなんかは出てくるが、エロファンタジー特有の現実離れしたシチュエーションは触手プレイと性転換変身レズプレイくらいで特別多くはなかった(媚薬というもの自体が現実離れしているという話は置いておくとして)。また珍しいことに、サイバーステップ作品の原作によくある、ルートが決まったら他のヒロインが空気化することもそれほどなかった。
 内容紹介ではあまり触れていなかったが、元々抜きゲーである本作は非常にエロシーンが多い。ちょっと話を進めるとすぐにエロシーンとなり、エディのマジカル陰茎でどのヒロインもすぐに快楽堕ちする。ここが一番現実離れしてるんじゃないかなと思ったが、突っ込むのは野暮だろう。和姦と言えるシチュエーションが皆無だった以外、エロシーン自体に問題は無かったように思う。アリシアに開口器を付けるシーンのスチル絵がちょっと崩れているのは気になったが。

 原作をプレイして印象に残った所をいくつか挙げたい。ED内容の紹介でも触れたが、ティナはエディに対して恋心を抱くようになる。強制的に協力関係を結ばされたティナは定期的にエディやギルと3人で行動し、そのうちに妙な仲間意識が芽生えていく。そうしてティナと行動している内に、知らず知らずのうちにエディ自身もティナへの親愛の情が湧いてしまう。それを認められないエディは全てが終わった後、ティナへの未練と自身の内に生まれた『愛情』や『恋心』と決別する為にルガラントを去っていく。
 悪漢として非道な行いをしてきたエディがなけなしの人間性を取り戻しかけて、今更人らしく生きられないと元の道に帰って行く。ピカレスク物であれば自ずとそうなるといった展開で、全EDの中で一番好きだった。

ティナに対して特別な感情を抱いていることをギルに指摘されるエディ。悪辣非道な盗賊団の頭領として、一人の女に対して愛情を注ぐなどあってはならないのだろう

 もう一つ印象に残ったシーンがある。ステラのルートだ。元々ステラは兵士でも何でもない平民で、幼い頃に見かけたアリシアに恋をした。ステラは少しでもアリシアに近づこうと兵士となり、研鑽を積んで将軍の地位に上り詰めた。しかし出世で得られたのはアリシアからの信頼であり、愛情ではなかった。それが我慢ならないステラは、国を捨ててでもアリシアと一緒になろうと決意する。

ステラは色恋のためなら国を守るという自身の重責などどうでも良いのだ
盗賊団の頭領にクズ人間とまで呼ばれる始末
ステラの「なんでもします」は冗談抜きで何でも、である。たとえそれが国を滅ぼすようなことであっても
この歪んだ愛情がルガラントを崩壊に導く

 ステラの歪みっぷりはかなりのものだったが、その想いに薄々勘付いていたらしいアリシアからしたら『部下の一人が何かしょうもないことを考えているな』くらいの感覚だったようだ。実際ステラルートの最後になっても、アリシアはしょうがないから一緒に盗賊団の慰み者になってやるかといった態度を取る。ステラルートのアリシアはステラに対して、好意は持っていても愛情は持っていないまま終わる。歪んだ想いの一方通行が滑稽かつ狂っていて、ステラルートはかなり楽しめた。

 あとは個人的にいまいちだなと思った点をいくつか挙げたい。まずルガラントという国について。『昔から女性が強く立場も上』だということは示されているのだが、『なぜ男性より女性の方が強く能力が高いのか?という疑問に対して答えがない。神様の特殊な加護があるため女性の出生率が高いらしい、という話こそあれども、設定の根本の説明がない。作中に出てきた会話を見る限りルガラントだけが特別に女性優位の国のようだし、何かしら納得出来る説明が欲しかった。
 またエディが所属している盗賊団が国一つを落とすために戦争をふっかける、というのも話として無理がある気がする。ルガラントは天然の要害に作られた都市国家であり、防衛は強固なため攻め込むのも難しいとされている。エディは相手が女だらけなら楽勝だろうと高を括って攻め込んで敗北するのだが、敵国の戦力の調査も行わず勢いだけで戦って勝てると思っていたのだろうか。ろくな下調べも無しにゴロツキの集団が国の正規軍と戦って勝てると思っていたのなら大甘である。
 またギルというキャラクターについても少々気になるところがあった。ギルは『ガタイのいい肉体派で女性と見るとすぐに襲いかかるが、たまには頭も切れる』という設定なのだが、エディに対しては古いアニメに出てくる子分キャラ(語尾に~ヤンス、とでもつきそうな)のような態度を取る。その一方でヒロインに対しては敬語で接し、セックス以外では極めて紳士的な応対をする。どうにもキャラが掴みづらく、開発陣がギルをどういう風に見せたいのか分からなかった。
 またこれは本当に些細なことなので気にするほどでもないのだが、地の文のエディの口調もたまに変だった。残虐非道、人面獣心の悪漢である大盗賊エディが「神様」とか「女性」とか「お金」とか、ごく普通の人っぽい言い回しをしている。そこは単に「神」「女」「金」でいいだろう。これはミスではなく、単純にライターがそこまで気を回さなかった結果だと思う。神経質な人は気になるかな、くらいの些末な問題であるが。

金が欲しいでいいじゃないの

 それと最後に、デフォルトのBGM音量がやたらにうるさかった。BGMボリュームを3分の1くらいにしてようやく落ち着いてプレイ出来るようになった。

 総じてプレイ前に想像していたよりずっと面白い作品であった。ここでいつもの疑問が出てくる。
 こんなゲーム、一体どうやってニンテンドーSwitchに移植する気だ?


PS版について

 では改めて、この作品がPandaShojoとして全年齢化する際にどういった改変が行われたのかについて述べていきたい。

 まず原作にあった『ルガラントの女性を快楽漬けにして犯してやる』みたいな目的は『女性を支配してやる』という割とぼんやりした目的へと変更された。

快楽漬けはさすがにまずかった

 快楽漬けなしでどうやってルガラントを落とすつもりなのだろう? そう思っていたらまさかの『脅迫』そのものがその手段だった。原作だと脅迫からのエロシーンが基本だったのだが、エロシーンをカットしたおかげで脅しをかけるだけで女性相手に何もしないエディが誕生してしまった。

一応脅すだけではないのだけれど、肝心のエロを取っ払ったせいでなんだか不自然な感じに

 エロシーンをカットしたせいで、極悪非道の盗賊エディが妙に紳士な男になっている。ティナの家で泥棒して困窮させるところまでは原作と同じなのだが、その後自分たちに協力を要請するシーンではティナの髪や顔に触れるだけでそれ以上のことは何もしないという、この作品に出てきた本来なら竿役だったはずの紳士軍団を思い起こさせる。

PS版のティナは原作に比べて露出が減った。黒いインナーを着ている
そら信じられないよね
本当に何もしなかったのか!?
そらティナも惚れるわ

 実際に体を要求しているような描写もないわけではない。ただ、それでもやっていることが「俺に従うならキスしろ」とかそのレベルだ。

この状況でそれはちょっと…

 基本的にどのエロシーンもカットされているか体に触れる、キスをする程度に変更されており、これでどうやって女性陣を籠絡したのだろうと少々疑問に思った。この辺りのつじつま合わせはいつものPandaShojo作品らしく適当であり、気づいたら快楽漬けにされたみたいにエディの言うことをハイハイ聞くヒロインのできあがりだった。

 大きな変更点といえばそれくらいで、話の大筋は原作と一緒である。各ヒロインのEDはエロシーンがない以外ほとんど変わらない。ただ、エロがなくなった分ティナルートだと何だかエディとティナの悲恋みたいな描写になっているのは(おそらくスタッフ側は意図していないのだろうが)笑ってしまった。原作でティナを盗賊団のアジトに連れ込んで多人数プレイをするシーンがあるのだが、PS版ではただアジトに招かれて何も無く終わっている。歓待でもされたのだろうか?


PS版の感想

 全ルートを終わらせてみて思ったが、やはり原作は悪党によるエロシーンが主目的と考えられるため、PS版はどうしても不自然さが拭えなかった。無理に全年齢化するためソフトな描写や表現に変えているせいで、かえって違和感が増している。
 また原作ではオマケの竿役くらいの立場しかなかったギルが、PS版だと本当に空気になってしまっている。エディの後をちょろちょろついてきては一言二言何か言うだけのキャラと化してしまい、元々の中途半端さと相まって『こいついなくてもいいだろ』というキャラになってしまった。

 ソフトな表現、ということでなるべくなら『調教』や『犯す』といった性犯罪を想起させるような言葉は使われていなくなっている。大体『支配』に置き換えられているのだが、校正ミスなのかたまに調教も犯すも出てきてしまっている。この辺は調整する時間が足りなかったのだろうか。

PS版では調教というほどのことはされていないんだけどね
老若男女が遊ぶSwitchで出すゲームで『犯す』はいいのか?

 PS版で良かった点を挙げるとすれば、エロシーンが無くなった結果前述のティナルートでのやりとりの不自然さが減って、エディとティナの関係性が健全化したことだ。そりゃ自分を脅迫して調教した男に惚れるという展開よりは、外道と思っていたのに妙な優しさを見せ、ことあるごとに自分へ信頼を寄せてくれる(だけで体を求めるわけではない)男に惚れる方がお話としては納得がいく。PS版はPS版で独自の味わいがあった。何度も言うが減ったとはいえ不自然さがすごいことには変わらないのだが

もう恋する乙女やん

終わりに

 本作をプレイする前は、「どうせ適当にたらし込んだヒロインが裏切って国が陥落し、主人公が王位を簒奪して終わりなんだろう」くらいに思っていたのだが、いい意味で予想を裏切られた。
 ただ、最後に一つ疑問が残る。とあるルートでエディはギルから『奪るものを奪ったら次の国に向かいましょうか』みたいなことを言われ、エディも賛成する。エディは盗賊らしく何でも奪いたがるたちだったが、本当に国が欲しかったのだろうか? それに簒奪物を見る度に思うのだが、国政を担えるだけの器を持った人間がどの程度いるのだろうか? 仮にエディがルガラントの新しい国王になったとしても、盗賊団の部下かルガラントの生き残りの女性に寝首を掻かれて終わりの気もするのだが。

 とにかく、本作は思っていたよりはずっと楽しめるゲームだった。欲を言えば平時のBGMがのどかすぎるとか、ルースのキャラ立てが遅いので早めにやるべきだったとかがあるのだが、そこまで問題にすることでもないだろう。サイバーステップのファンタジー作品を原作・PS版とそれぞれ3作ずつの計6作紹介したが、今のところ少なくとも大ハズレ作品には当たっていない。嬉しいことである。


 今回はオチに使えそうな面白い画像があまりなかったので、アリシア姫のカジュアルすぎる寝間着の画像でこの記事を締めたいと思う。

寝間着というかトレーニングウェアっぽい

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