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2020年2月29日安倍総理会見


安倍晋三首相は2月29日の会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、重症者発生を最小限に食い止めるべく、盤石な検査体制、医療体制を構築していく方針を表明した。第二弾となる緊急対応策を今後10日程度のうちに、取りまとめる方針も表明。

 PCR検査体制を拡充し、3月初めには保険適用するとともに、3月中には簡易検査機器の利用開始を目指す。全国には2000を超える感染症病床があるが、「緊急時には感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、5000床を超える病床を確保する」考えも示した。アビガンを含む3つの薬の有効性を確認するための患者への投与を始めていることも説明した。
 1月15日に日本国内初の感染者が確認されてから、安倍首相が新型コロナウイルスに関する会見をするのは初めて。

 PCR検査については、全国の現在の検査能力は1日当たり4000件を超えるとし、保険適用になれば、「保健所を経由することなく、民間の検査機関に直接検査依頼を行うことが可能となる」と説明「かかりつけ医など、身近にいる医師が必要と考える場合には、全ての患者がPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保する」と強調した。

 現時点での流行状況については、「感染拡大のスピードを抑制することは可能。今後1、2週間が急速な拡大に進むか、終息できるかの瀬戸際になるという専門家の意見を踏まえれば、今からの2週間程度、国内の感染拡大を防止するため、あらゆる手を尽くすべきであると判断した」と述べ、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校への3月2日から春休みまでの臨時休校を求めたと説明。「子ども達にとって、3月は学年の最後、卒業、進学前の大切な時期であり、学校を休みとする措置を講じるのは断腸の思いだ。万が一にも、学校において、子ども達の集団感染のような事態を起こしてはならない」。

 感染拡大に伴う経済、雇用への影響が懸念される中、今年度の予備費2700億円を活用し、第二弾となる緊急対応策を今後10日程度のうちに、取りまとめる方針も説明。「臨時休校により休みを取らざるを得なかった保護者への休業補償、医療体制、企業活動への支援などを具体化させる」。雇用調整助成金の特例なども活用し、経済財政政策を講じていく方針を表明した。第一弾の緊急対応策は2月13日に決定していた。

 さらに「今後、一定の地域において、急激な感染拡大が見られた場合に、どのような措置を講じるか、その具体化は、もはや待ったなし。既に政府として基本方針を示しているが、あらゆる可能性を想定し、国民生活への影響を最小限にとするための立法措置も早急に進めていく」と説明した。

 今後の方針は幾つか示した一方、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での検疫を含めたこれまでの対応について問われると、安倍首相は、「クルーズ船については、いまだ未知の部分が多い中、専門家の意見を踏まえながら、前例にとらわれることなく、躊躇なく対応してきた」「未知のウイルスとの闘いは厳しいものがあり、現場はベストを尽くしてきた」などと述べるにとどまった。

 臨時休校の突然の要請についても、「これからの1、2週間が急速な拡大になるのか、あるいは終息に向かうのかの瀬戸際の中で、何よりも子ども達の健康、安全が第一。集団感染自体は何としても防がなければいけないという思いで決断した」と、説明を繰り返すのみだった。
 安倍首相は、2月27日に開いた新型コロナウイルス感染症対策本部で、「ここ1、2週間が極めて重要な時期だ」と述べ、臨時休校を要請すると表明していた。突然の発表に対する説明責任を求める声が上がり、29日の会見に至った。

【2020年2月29日:安倍晋三首相会見ー医療関係部分を抜粋】

 これまで国内で新型コロナウイルス感染症を発症し、死亡したのは5人、クルーズ船「ダイヤモンド・プリセンス」の乗客6人が死亡した。多くの方が、今回のウイルスについて、さまざまな不安をお持ちであると思うが、クルーズ船を含め、これまで日本国内で陽性と判定された患者のうち、140人を超える人は回復し、退院している。

 このウイルスに感染しても、多くは軽症であるとともに、治癒する例も多い。これが専門家の評価だ。その上で、季節性インフルエンザよりも、入院期間が長くなる事例が報告されており、特に高齢者、基礎疾患を有する方については、重症化するリスクが高いと考えられている。

 そのため、政府としては、感染拡大の防止に引き続き、全力を挙げる一方、重症者の発生を最小限に食い止めるべく、盤石な検査体制、医療体制を構築していく考えだ。

 PCR検査については、国立感染症研究所における対応に加え、先月来、全国にある地方衛生研究所、民間の検査機関、大学に対して、試薬など検査キットを積極的に提供し、その能力構築に努めてきた。その結果、現時点で全国で1日当たり4000件を超える検査能力がある。現在も地方にある民間検査機関、大学に試薬などを提供し、一層の検査能力の拡大に努めていく。

 PCR検査については、「検査をしたくても、保健所で断られ、やってもらえない」という指摘をたくさんいただいている。保健所は都道府県や政令市の組織だが、政府として、医師の判断で感染を疑う場合には検査を行うよう、これまでも繰り返し、依頼を行ってきた。またその地域の検査能力に限界があるために、断られるといったことは断じてないように、広域融通によって必要な検査が各地域で確実に実施できるよう、国において仲介を行う。

 来週中にPCR検査に医療保険を適用する。これにより、保健所を経由することなく、民間の検査機関に直接検査依頼を行うことが可能となる。民間の検査機関の検査能力も、大幅に増強される。加えて現在、検査の中で、2、3時間要しているウイルスを検出するための作業を、15分程度に短縮できる新しい簡易検査機器の開発を進めている。この1カ月間、試薬の開発、精度の向上などに取り組んできたところであり、3月中の利用開始を目指す。

 こうした取り組みを総動員することで、かかりつけ医など、身近にいる医師が必要と考える場合には、全ての患者がPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保する。

 重症化予防の観点からは、治療のために必要な病床の確保も重要。全国で2000を超える感染症病床があるが、緊急時には感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、5000床を超える病床を確保する。病院への支援を行い、現時点で空いているベッドを全て維持してもらうことで、患者が大幅に増加する事態にも、万全の医療提供体制を整える。

 今回のウイルスには現時点で、インフルエンザのように有効性が確認された治療薬がない。この点が、世界的な不安の最大の原因となっている。現在、日本ではアビガンを含む3つの薬について、新型コロナウイルスに有効性があるかどうかを見極めるため、観察研究としての患者への投与を既にスタートした。いずれも新型コロナウイルスを用いた基礎研究では既に一定の有効性が認められていることから、実際の患者の同意を得て、使用することで、治療薬の早期開発につなげていく。

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