足首の捻挫はケツで防げ!
今回の論文
『慢性足関節不安定症(CAI)の有無にかかわらず、star excursion balance test実施時の足関節と股関節の神経筋制御について』
前回の記事では、足関節捻挫の危険因子についてまとめられた論文をご紹介しました。その論文では「筋力」と「姿勢バランス」の項目について述べられていました。
今回は前回とは異なる論文で、「筋力」と「姿勢バランス」について具体的に研究された論文になります。
足関節捻挫の受傷後にどの点に留意してリハビリテーションを実施すると良いのか、またどの部位を重点的に介入しておくと傷害予防につながるのかというヒントとエビデンスになる論文かと思いますので、ご興味のある方は最後までご覧いただけましたら幸いです。
はじめに…
論文中の言葉の整理をさせていただきます。
CAI:慢性足関節不安定症
coper:過去に足関節捻挫をしたが、現在は不安定感を感じず、再発していない状態の足首
Star Excursion Balance Test (SEBT):スターエクスカージョンバランステスト(下図参照)
gluteus medius (Gmed):中殿筋
gluteus maximus (Gmax):大殿筋
tibialis anterior (TA):前脛骨筋
peroneus longus (PL):長腓骨筋
Star Excursion Balance Test (SEBT)
昨今、上記のSEBTは足関節の他、下肢の傷害を予見するための動的安定性の評価としてスポーツ現場で用いられています。
以上の用語をご理解いただいた上で話を続けて参ります。
結論から言うと…
SEBTのリーチ距離は、正常群と比べてCAI群とcoper群で前方方向で有意に値が低かった
足圧中心の動揺速度は、SEBT全方向においてCAI群が有意に速度が速かった(一部coper群が速いものもあった)
SEBT実施時の筋活動は、CAI群において前方方向でTAが低く、後外側方向でGmaxが低かった
筋出力立ち上がり時間では、CAI群においてGmedとGmaxに遅延が見られた(図参照)
このことから考えられることは…
CAI群では他の群に比べ、動的姿勢制御の低下、筋活動開始時間の遅延、足関節と股関節に作用する筋の活動の低下が認められた。
CAI患者は健常者と同程度に遠くまで手を伸ばすことができたが、COP測定で示されたように動揺が大きく、姿勢制御の障害を示唆していた。
CAI患者は、健常対照者と比較して、伏臥位股関節伸展テスト中のハムストリング、Gmax(両側)、脊柱起立筋の活性化の遅れを示している
SEBTの後外側方向において、立脚で骨盤を水平に保たせた際に、支持基底面内で重心を維持するために体幹が前方に移動させることで股関節に屈曲モーメントを生じさせ、股関節伸筋(Gmax)の収縮によって制御される
CAI群ではTAとGmaxの活性化が他の群より低く、これはパフォーマンスと股関節と足関節におけるNMCの変化との関係を示しているのかもしれない。
安定性を維持するために足関節の戦略に依存することは、最適とは言えない筋発揮パターンと考えられ、この集団における傷害リスクの増加を説明できる可能性がある。
近位筋の活動が変化すると、姿勢制御の指標や動作の質 に悪影響を及ぼすようである。
今回の研究の限界として、足関節の背屈の可動域測定が不十分であったと著者は述べています。
足関節捻挫後は背屈制限が残存することが多く、今回のような動的安定性の評価に影響が出るのは容易に想像できます。
ただ、股関節の筋にアプローチする事は動的安定性を高めために重要である事に間違いないようです。
最後に…
今回の論文で、慢性足関節不安定症の改善に必要なことは足首周りの筋はもとより、お尻周りの筋群の適切な筋発揮が姿勢制御や動的安定性を高めることに関与することが改めてわかりました。
スポーツ現場においても殿筋群をトレーニングする事で競技パフォーマンスに良い影響を及ぼすことは既に知られていますが、足首の捻挫を含む下肢の傷害を未然に防ぐためにも、重点的にコンディショニングしていきたいですね。
是非皆さんも日頃のコンディショニングの根拠の一部に活用していただけたらと思います。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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