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足首の捻挫に鍼治療が効く⁈


今回の論文

『慢性足関節不安定症の管理のためのトリガーポイントドライニードリングと固有受容器エクササイズについて:ランダム化臨床試験』

皆さんこんにちは!
今回は私がアスレティックトレーナーの資格以外にも、鍼灸師の資格も保有しているため、このような文献を挙げさせていただきました。

前回の記事では足首と股関節との関係性に触れました。
ケツ(お尻)を鍛えれば足首の捻挫を予防できる可能性があるという内容ではありましたが、今回の文献では、鍛える+鍼治療は足首の捻挫グセに有効なの?というところに着目しています。

それではまず研究の内容をまとめさせていただきます。

研究の背景と目的

【背景】
■ 足関節外側捻挫はアスリートにおいて最も一般的な外傷であり、最大40%が慢性足関節不安定症(CAI)に移行する。(N.A.Ferran and N.Maffulli,2006)
■ Cochrane reviewでは、CAIに対する神経筋トレーニングの実施は、トレーニングを実施しない場合と比較して、短期的に有効であると結論づけている(J.S.de Vries et al.,2011)
■ CAIを有する患者は、健側の対照群と比較した場合、腓骨筋の反応時間の遅延が明らかである(M.C.Hoch and P.O.McKeon,2014)
【目的】
CAIを有する患者において、TrP-DNと固有受容器エクササイズ/ストレングスエクササイズプログラムを併用した場合と、エクササイズのみを実施した場合の疼痛および機能に対する効果の比較

背景に関してはこれまでの記事でもお伝えした部分かと思いますので、見覚えのある方もいらっしゃるかと思います。
今回はその背景の中で、エクササイズのみの処方とエクササイズ+鍼治療がどのような効果をもたらすのかを研究してくれています。

用いられた指標

  • Foot and Ankle Ability Measure:FAAM

29項目の質問票となっており、①日常生活動作における尺度21項目、②スポーツにおける尺度8項目という構成になっている

  • Numerical Pain Rating Scale:NPRS

スポーツ練習中の足関節の痛みの強さを11段階で表す

⇨ これらの指標をベースライン測定時と治療後1ヶ月後にデータ収集した


研究対象と方法

【対象】
30人の被験者から条件を満たす27人を選定。

  • 対照群(n=13):Proprioceptive+筋力トレーニング

  • 実験群(n=14):Proprioceptive+筋力トレーニング+鍼治療

【方法】
上記の人数をランダムに分け、実験群には鍼治療を追加で施術した
両群とも週2回の運動を8週間実施した
鍼治療は、トレーニング実施前に施術した

【トレーニング内容】
a) 筋力トレーニング
:セラバンドを安静時の長さの170%まで伸ばした状態で8〜10回×1〜3セット実施

T.W.Kaminski,2003

b) Proprioceptive exercise
:各10回×3セット、2週間おきに漸増させていく

Trigger Point Dry Needling and Proprioceptive Exercises for the Management of Chronic Ankle Instability: A Randomized Clinical Trial


Trigger Point Dry Needling and Proprioceptive Exercises for the Management of Chronic Ankle Instability: A Randomized Clinical Trial


Trigger Point Dry Needling and Proprioceptive Exercises for the Management of Chronic Ankle Instability: A Randomized Clinical Trial

【鍼治療】
6年以上の治療家1名が施術した
選穴は以下の基準で選穴した
 1. 腓骨筋外側に緊張がある箇所
 2.触知可能な痙攣がある箇所
 3.触知すると関連痛が誘発される箇所
鍼を刺入してから、局所の痙攣(得気)が得られるまで刺入し、約1Hzのテンポで30〜45秒間上下に動かした

Trigger Point Dry Needling and Proprioceptive Exercises for the Management of Chronic Ankle Instability: A Randomized Clinical Trial


結果

Trigger Point Dry Needling and Proprioceptive Exercises for the Management of Chronic Ankle Instability: A Randomized Clinical Trial

Baseline時から、End of treatment時にかけて、両群ともに各指標の数値は改善傾向にありますが、特に鍼治療をした実験群の数値が著明に向上しているのがわかります。
このことから、トレーニングだけでももちろん意味はあるけど、トレーニング前に鍼治療した方が、より効果的であったということを著者らは述べています。

ただし、今回の研究の限界として、1人の治療家が施術したためその人がスぺシャルなのかもしれませんし、1ヶ月後までの期間の調査のため、慢性的な足関節に対する効果の持続はわからないなどの限界があります。
また、鍼治療したらそれなりに良くなるでしょ!というバイアスが被験者にかかるため、プラセボ効果も含めた検証をしないと真の意味で鍼治療が影響を及ぼしたとは言い切れないといった見方もできます。

スポーツの現場において

ここからは私見になりますが…

これまでに私は、トレーニング前や試合前日に鍼治療を実施することにかなりの抵抗がありましたし、選手に対しても余程のことがない限り運動前の鍼治療は実施してきませんでした。

その理由として、①筋肉が緩みすぎて筋力発揮に影響(力が入りづらい等)が出るのではないか、②鍼を刺したことによる違和感や痛みが残ってしまうのではないか、と思っていたからです。

今回の研究でエクササイズ前の施術が研究方法として述べられていた点において、運動前の鍼治療も効果があるのだという事がわかり、今後の参考にしていこうと思いました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

鍼治療はやっぱりいいんだな〜と思われた方もいるかもしれませんが、鍼治療の効果についてはまだまだ解明されていないことも多いことや、施術者によって効果の違いも出てしまうことから、鍼治療の正確な効果を立証することは非常に難しいです。

しかしながら、一定の効果はありそうだということはわかっていますので、スポーツ現場においても上手く活用すると、アスリートのケガ予防やパフォーマンスアップに貢献できることには違いないと思われます。

スポーツ現場で活躍されているトレーナーの皆さんの参考になればと思います。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました!

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