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いつものキャンプに「自家製ブルーチーズ」もっていくと楽しかった話(第一回 )

いつものキャンプに飽きてきた皆様へ
自宅でブルーチーズを作ってみませんか?

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こんにちは、週末発酵ラボの発酵おじさんです。
僕は普段、Twitterメインで自家製チーズについて情報を発信しています。
初のnote投稿になります。よろしくお願いします。

もう今年も残り1ヶ月。2021年は「自家製ブルーチーズでキャンプをする」が目標だった僕ですが、秋頃にやっとブルーチーズと呼べるものが完成し、会社の同僚と自家製ブルーチーズキャンプに行くことができました。

炎を眺めながらブルーチーズをつまみにグラスを傾ける時間は最高です。パスタやピザにしてもおいしいですし、ブルーチーズとキャンプは相性バツグンです

最近では、スーパーで売られているブルーチーズですが、どうせなら家で作りたい!そんな方のために(そんな方がいるのか?)、家で作る方法を編み出したので僕の失敗談も含め、今までの道のりをゆるーく何回かに分けて書いていきたいと思います。

自己紹介

その前に、今回初めてのnote投稿なので簡単に自己紹介をさせてください!

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発酵おじさん
1988年生まれ。高専から大学編入、大学院博士後期課程を経て、現在は東京の会社で研究開発をするサラリーマンです。発酵に興味がありこれまで自宅で色々な発酵食品を作ってきました。

現在は「ブルーチーズ作り」に挑戦しており、そのおもしろさににどっぷりハマっています。自分で作って食べるだけでは飽き足らず、今年の春から「週末発酵ラボ」という企画を立ち上げ、チーズ工房1103さんとブルーチーズの共同開発も行っています。

これまでTwitterで情報発信をしていますので、Twitterもフォローして頂けると嬉しいです。Twitterはこちら

まずは試しにブルーチーズを作ってみる

実は今回は一番最初に作ってみて失敗した話です。

成功までの過程は追々書いていきますので、優しく見守って頂ければ幸いです。

それから、写真をあまり撮っていなかったので、今回は画像が少ないです。あしからず。

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自家製ブルーチーズを作りたい!

でも、そもそもチーズってどうやって作るんだ😂

思いのほか、日本語での情報が少なく、英語のWebサイトや文献、書籍を読みあさりました。

材料を揃える

そしてたどり着つきました。これが材料です!

ババン!

チーズ作りに必要な食材は以下の5つ

1. 低温殺菌牛乳
2. 乳酸菌
3. 青かび
4. レンネット(凝乳酵素)
5. 塩
6. (塩化カルシウム)

材料はたったこれだけ。だけど、「乳酸菌や青かびはどうやって用意するのさ〜」というのが最初にぶち当たる壁です。

これは失敗したときの話ですが、僕は最初こうしたよ、ということを参考のために書いておきます。

低温殺菌牛乳
「タカナシ低温殺菌牛乳」をスーパーで4 L準備しました。この量で約400gのチーズができます。

牛乳にも実は色々とあって、市販の牛乳はホモジナイズという脂肪球を均一化処理がされています。これはまた別の記事にします。一般的に、ナチュラルチーズではホモジナイズしていない牛乳が好まれるようですが、ブルーはホモジナイズをした方が香りがしっかりと出るということで、ホモジナイズしてから使う場合もあるそうです。

乳酸菌
ヨーグルトで代用しました。明治ブルガリアヨーグルトです。
本来はスターターよばれる専用の種菌が海外では様々売られているのですが、日本から手に入れるのはなかなか大変です。工房であれば、業者から買うことができるのでしょうが、それも個人だと難しいため、まずはヨーグルトで代用しました。

これは詳しく話をすると長くなるのでまた別の記事にしますが、乳酸菌には大きく分けて「中温菌」と「高温菌」がいます。チーズ作りでは、これらの乳酸菌スターターが販売されており、作りたいチーズに合わせて使い分けます。ブルーチーズでは中温乳酸菌がよく使われます。

しかしヨーグルトの大半は高温菌です。中温菌は、「カスピ海ヨーグルト」などがそうですが、カスピ海ヨーグルトは細胞外多糖類(EPS)という粘着性のある物質を大量生産するため、チーズ中に水分が多く持ち込まれる懸念がありました。乳酸菌を入れる目的は、凝乳のためのpH調整なので、今回は割り切って気にせず高温菌のヨーグルトを使いました。

青かび
これも同様にスターターが海外では売られているのですが、このときは北海道からブルーチーズを取り寄せて、砕いて種かびにしました。私はやっていませんが、ネットの情報によるとスーパーで買える市販のブルーチーズでも大丈夫な場合があるようですよ。私は確実に菌が生きている北海道のものを使いました。

それがこれ「くろまつないのブルーチーズ」です。

残りはそのまま頂きました。かなり美味しかったです。

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レンネット
粉体のものがAmazonで売られていました。1000円くらいでした。1回の使用量がごくわずかのため何回も使用できます。
レンネットには、動物由来のもの、微生物由来のもの、植物由来のものがあります。Amazonで買えるものは恐らく微生物由来のレンネットでしょう。


塩は最初は何でもいいので普通の安いスーパーのものを使用しました。

(塩化カルシウム)
今回は使用していませんが、殺菌乳には塩化カルシウムを少量加えることがあります。これは乳成分が固まるときに、リン酸カルシウムが非常に重要な役割をするのですが、殺菌するために温度をかけるとカルシウムの一部が不溶化し、反応ができない化学形態になってしまいます。そこで、低温殺菌後にカルシウムを補う目的で塩化カルシウムは加えられます。こちらもAmazonで購入可能です(Amazonすごすぎない?)。

道具を準備する

本来必要なものは、最低でも以下のようなものです。

1. 寸胴鍋(大)(湯せん用)
2. 寸胴鍋(中)(調理用)
3. おたま
4. 温度計
5. 布(バタームスリンまたはチーズクロスという水切り用布)
6. チーズ用型枠
7. 熟成庫(自宅の場合は安いワインセラーで代用)
8. タッパー

私は一番最初に、温度計以外をケチって、型枠を円筒形タッパー、鍋の代わりに大きめのタッパー、布の代わりに新品のふきん、熟成庫を冷蔵庫でやりました。これが後々の失敗を招くことになります。

いよいよブルーチーズを仕込もう


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手順1: 乳酸発酵をさせていく!

目的:乳酸菌の発酵により、ラクトース(乳糖)を乳酸に変えて牛乳のpHを下げます。pHが下がると牛乳中に存在するタンパク質同士の電気的な反発がなくなり、牛乳の中のタンパク質がどんどんとくっついて固まっていきます。この工程では、乳酸発酵を促してpHを下げるということが最重要です。

工房さんの多くは搾りたての生乳を用意して低温殺菌からスタートしますが、市販の低温殺菌乳しか手に入らない我々は、優雅に乳酸発酵からスタートします。

低温殺菌の理由は、牛乳を固めるのに適しているからです。高温殺菌した牛乳ではタンパク質の形が熱で壊れてしまい後々の工程で固まらないので注意が必要です。

今回は大きめのタッパーになみなみに入れた牛乳を、蛇口から出てくる温水をバケツに溜めて湯煎しました。このまま温度が32度前後になるまで待ちます。

温度が32度になったら、乳酸菌をどーんと投入。ついでに、青カビもどーんと投入して優しくまぜまぜします。

レシピにもよりますが、このまま1.5 時間くらい温度を維持しつつ待ちます。

しかし、タッパーだとこの温度維持がちょー大変でした、、、冬だったこともありすぐに温度が下がっていきます。

「温度がやばい」って、温水を入れると今度は温度が上がりすぎたりして、結局温度管理のために90分ずっと付きっきりでした。しかも、途中でタッパーが浮いて牛乳がこぼれたりで超大変でした。

教訓: 寸胴鍋を2重にして湯煎し、ガスの上で温度管理をやりましょう。。絶対的に楽です。

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手順2: レンネットを加えて牛乳を凝固させていく!

目的:手順1によりある程度pHが下がったタイミングでレンネットを加え牛乳が固まるのをより強固にします。
pH低下だけでも牛乳は固まりますが、それだけではヨーグルトのようにどろどろです。レンネットは、牛乳中のタンパク質表面に出ている親水基を切り離し、タンパク質の新水性を弱めます。そうすると、疎水性になったタンパク質同士がどんどんと結合を強めて固まり方がより強固になります。

レンネットはほんの少量しかいれません。実験であれば電子天秤で測り取れますが、家だとそんなもの無いので小さじを使って目分量です。

粉体の場合は、塩素を除去した少量の水道水によく溶かしてから投入し、おたまで上下にゆっくりとかき混ぜましょう。

かき混ぜるのが終わったら、ぜったいに揺らさないようにして45分程度放置します。この間も乳酸発酵は進んでいますので、温度は必ずキープします。

すると、牛乳が杏仁豆腐のようにプルンプルンに固まります。

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レンネットを入れるタイミングは、多くのレシピで乳酸発酵の時間で書かれています。しかし、乳酸菌の種類・活性・植菌量でpHの低下速度は毎回変化するはずで、ここはpHを測定して添加するのが一番いいと僕は思います。

ほとんどの家にpH電極がないことはわかりますので、レシピは発酵時間でも仕方ないのですが、もしpHが測定できるのであれば使用した乳酸菌と添加量、pHを測定して記録しておくと後々の参考になるかなと思います。

また別記事で書こうと思いますが、牛乳の酸性化速度はその後のチーズの水分量に関係するため、乳酸菌添加量・乳酸菌タイプ・レンネット添加時のpHは後々の食感に影響を与えそうです。

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手順3:凝固した牛乳をカットしていく!

ちょっと疲れたので、今日はここまでにしておきます。
下書きで寝かしておくと次を書かなさそうな気がして、自戒の念をこめて途中ですがリリースしますね。

今後、ぜひ自家製チーズ作りをはじめる人が増えることを願い少しずつ情報を発信していけたらと思います。一緒に勉強をしていきましょう。

興味があればTwitterででも連絡を頂ければ答えられる範囲で答えますので、これからもよろしくお願いします。(Twitterはこちら

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