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6.9 一人になりたい衝動④
「青春に吐きそうで トイレまで逃げたけど
教室に居たほうがエアコンで快適で
ポケットにぐしゃぐしゃの
イアフォンで抱きしめて
あたしだけのうた」
大森靖子の『コミュニケーション・バリア』という曲です。
この曲は、僕だけのうたなのです。
今日みたいにじめっとしたあの日のことです。
僕は高校2年生でした。
1学期の期末テストを控えた頃で、学校に行っても自習の時間ばかりでした。
あの日は、テスト前の煮詰まった僕たちのためを思ってか、先生が自習時間を自由時間にしてくれました。
クラスの皆は大喜びで、体育館でドッジボールを始めたり、教室でおしゃべりを始めました。
僕は、クラスに仲良しなんていなかったので、体育館にも教室にも居たくありませんでした。
高校生の僕は、誰とも一緒にいたくないのに、誰とも一緒にいないことが恥ずかしくて、その場から逃げたくて仕方がありませんでした。
僕は、教室を抜け出して、体育館を通り過ぎて、非常階段に向かいました。
僕の通っていた高校の非常階段は屋外についていました。
廊下と接続するドアを閉めたら、学校の空気も閉じ込めることができました。
非常階段に来ると僕は、外の空気の中で誰にも邪魔されずに一人になることができるのです。
僕はとっても気分が良くなりました。
それでも誰にも見られたくはないので、
僕は静かに非常階段の壁から頭を出さないようにして体育座りをしていました。
友達に見られないように。
廊下を歩く先生に見られないように。
外を歩くサラリーマンに見られないように。
しばらくすると、あまりの暑さに絶えられなくなって、僕は教室に戻りました。
教室はエアコンが効いていて快適でした。
なんだかとっても悔しくなりました。
大森靖子は、
どんな曲にも自分をあてはめられないあなたのために、あなたの曲を作るのだと言っていました。
大学4年生の頃、僕はゼミで知り合ったあの子にこの曲を教えてもらいました。
6年経ってやっと、
あの頃と地続きの僕の、僕だけのうたを見つけることができました。
P.S.
写真はあの時僕が非常階段で撮ったものです。
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