あしたのチームのUXリサーチャーのおしごと -NPSの定量x定性の分析-
あしたのチームのクリエイティブ事業本部 デザイン事業部で、
UXリサーチャー兼UIデザイナーの清水(shimizu_design)です。
前回に引き続きUXリサーチャーの仕事についてです。
今回はNPSの分析・集計で実際に行った、定量に定性を加えた分析について[定量の集計]〜[定性の仕分け]〜[定量に加える]〜[課題を出す]〜[課題を共有する]の5つの過程を9個のプロセスで書いてみようと思います。
1. [ 定量の集計 ] 数字で回答する箇所の集計
1.1 結構Excelを使います。特に関数VlOOKUP と ピボットはよく使いまくります。ので、日頃からExcelに慣れておくと「やっててよかった、Excel」と自己陶酔できます。大枠を理解もしながら進められるようにグラフなんかもすぐ作れると鳥の目で理解できます。
1.2 それぞれの回答を一個一個の個では見ないようにします。ここの目的は集計データの点を線から集団に変えていくイメージでやります。
1.3 このExcelのファイルなど、ここでのプロセスはアウトプットに使用しませんが、最後の工程の課題の共有で「これのこれってどうなの?」とかあった場合に、答えがこのファイル内に潜んでいます。ので「いつ何の為に作ったものなのか」が分かるように取っておくといいです。
2. [ 定量の集計 ] 色々フィルターをかけて見る
2.1 これは分析のアウトプットに影響はしませんが、回答者の地域や性別等々切り口を変えていろんなフィルターをかけて見てみます。見えた内容が後で生きていることが往々にしてあります。あと、「アウトプットに関係ないから後で見てみよう」と後回しの腹をくくっても、余程がない限り見ないのが自分なので、時間が許す限りここで見るようにしています。
2.2 集計と分析は、「自分の見たいデータが他の人も知りたいデータ」なんてのを言われながら今まで育ってきました。案外、この言葉通りに結構エゴイスティックに集計と分析を進めた結果、その内容が他の人も実は知りたがっていたなんてことも往々にして多いので、自信を持って進めます。
3. [ 定量の集計 ] X軸とY軸のアクションドライバーを作る
3.1 上記のようなX軸は満足度。Y軸はNPSの推奨度の相関係数でアクションドライバーを作り、その設問に関連する内容を”適切な位置”に貼っていきます。
3.2 Y軸の相関係数はExcelのマニアック関数「CORREL」を使って算出します。Excelを使わないととんでもない数式を書かねばなりません。相関の有無はざっと書くと以下のような感じです。
3.3 アンケートツールによってはこの辺の相関係数等いろんな切り口をツールが出してくれるものがあります。この記事でのケースでは使用していませんが、今使っているEmotion Tech様のツールはこれらをクラウドで可視化までもしてくれたりします。(便利な世の中になりました。)
4. [ 定性の仕分け ] コメントを付箋にする
4.1 コメントを全てひたすら付箋にしていきます。付箋にした後に紐付く推奨度などに基づいて色を分けておくと見やすかったりします。
5. [ 定性の仕分け ] 必要ならKJ法を使って仕分ける
5.1 KJ法(データをまとめる手法)はインタビューベースのものや、回答の取得段階で区別が曖昧なものの場合にやり、グルーピング策定が必要な時にしたりします。
6. [ 定量に加える ] アクションドライバーに加える
6.1 定量でペタペタ貼った付箋の関連する箇所にこの定性の付箋を加えます。この時、貼っていく中で付箋の全量を想定できず、付箋を貼るスペースがなくなり、最初にでかいアクションドライバーを作っておけばよかったと後悔します。
6.2 付箋の貼り付けをしながら気づいたこともこのアクションドライバー内にコメントやメモを残しとくと、この後の問題・課題出しで役立ちます。
7. [ 課題を出す ] 問題と課題を出す
7.1 問題(何が悪いのか?)・課題(何がその問題点の要因になっているのか?)を出します。ここまでの過程で、既に定量x定性のかなりのデータ量を見てきているのと、定性の付箋で既に可視化できるので、サクサク出てきます。
7.2 ある程度の問題と課題の量が出たら、それらの問題と課題1個1個を黙読しながら「課題はこれです。なぜならその部分が問題だからです」と言い換えてみて違和感がないかチェックします。違和感があったら問題・課題ではないので削除はせずはじいておきます。※はじいた問題・課題は稀中の稀に役立つこともあるからとっておく。
8. [ 課題を出す ] 課題の重要度と優先順位をつける
8.1 出した課題がアクションドライバーで4つの内どの属性のものなのかを見て重要度と優先順位をつけます。図の中で、左上に分布されているものが最優先の重要度の課題です。
9. [ 課題を共有する ] 解決の具体策は出さない
9.1 ケースバイケースですが、その主管の部署に任せた方がより効果が高い解決策が出るので、問題点と課題を共有し主管部署に共有します。ので、ここでは「正しく、分かりやすく問題と課題を伝えること」がデザイナースキルを活かした最大のミッションです。
9.2 分析過程で思いついた「こんな解決方法は効果があるかも」と言うアイディアも腹案で持っておくとベターです。主管部署への課題の共有後その主管部署が「・・・・。課題は分かったけど改善の為にはどうすりゃいんだろう」となった場合提案で出します。
9.3 踏み込んだ話になると、集計中に使用したExcelファイルとかも持ち出して話をしたくなる気持ちに苛まれる場合がありますが、そのExcelファイルは他の人が見るとチンプンカンプンで余計混乱させるだけなので見せないようにします。
最後に
辺な意味ではなく、日本人は「もしも不満があった場合にその場で言うことはせず、次回はその不満を持ったものは一切使わない」という行動をとるサイレントクレーマーが多いと言われています。
ので、ユーザーからの声が仮に一つであった場合でも、逆に顕在化していることがありがたい機会だと思って仕事を進めています。
ので、その声があった場合にまず、定量の少数派の声なのか?多数派の声なのか?を考えがちですが、この辺は数字にとらわれすぎないようにユーザーの一つの声であったとしても、しっかりと向き合ってUXリサーチを行うようにしています。
そんなこんなで今回はUXリサーチャーの仕事から、NPSを例に定量x定性の分析についてを書きました。
このスキルの掛け合わせは応用で業務改善に活かすなんてのもnoteに書きながら書けそうだと思ったのですが、それはまたの機会にします。
そんなあしたのチームでは、仲間を募集しています。
UIを作るだけじゃなく、UXにおけるリサーチ、ブランディングなど幅広くいろいろなことができるので、きっと楽しいと思います。
そんな環境で働いてみたいと興味をお持ちの方は是非よろしくお願いします。