欲望を抑える理想
23時
こんな時間になんだかお腹が空いてしまった
家族みんなで布団に入ったのに
私だけスマホで漫画を見ていたから
眠れずにこんな時間を迎えた
そんなことはよくあるけれど
今日はなぜかお腹が空いた
食べた内容のせいだろうか
確かにあまり脂っこいものがなかったし
お酒を飲んでいたから
米を食べていなかった
腹にたまらなかったのか
何かお腹に入れたい
だけど夜に食べる習慣が、もう、てんでない
夜に飲みに行かない
夜は子どもと寝落ちする時間
私に「夜中に小腹が減ったらどうするか」という手段がない
温かいものがほしい
レンジでホットミルクでも作ろうか
だけどレンジの、ブーンとか、チンとか、そういう音を立てたい気分じゃない
湯を沸かして、お気に入りのインスタント海苔スープを飲もうかと思ったが、別にそれが飲みたいわけじゃない
「夜中 空腹」で調べたら、低糖質・低脂質・タンパク質がいいらしい
冷蔵庫を覗くとチーズがある
だけど気分じゃない
棚に、するめいかソーメンがあった
棚から取り出した
私にないのは「夜中に小腹が減ったらどうするか」という手段
そして「夜中に一人で何かを食べる」という習慣も、ない
何をしたらいいとか、何をしたいとか、ぼんやり思い描けているし、目の前にいかソーメンもあるのに、私は袋を開けられないままでいた
習慣がないことによる抵抗は、欲望までも抑えるのかと驚いた
なんとなく、ここで食べたら今後私は食べ続けてしまう気がした
そしてそれは年齢的に、健康的に、美容的に、良くない気がするのだ
夜にポテチをよく食べる夫が起きていたら、たぶん食べていたと思う
一緒に食べようと私から誘うか、食べたらいいじゃんと背中を押してもらって、食べていた気がする
タバコも
お酒の依存も
ギャンブルも
不倫も
クスリも
暴力も
殺人も
わからないけど
踏み出す重さは、一歩目が一番重い
そしてその一歩までは、欲望と理性とでせめぎ合いながらバランスを取っており、他の誰かが介入したりと何かがあることで崩れやすくなる
たぶん人は、理想があるうちは、欲望に勝てる
そうして二歩目からは一気に軽くなり、場合によっては転がり落ちて行くのかなと思ってしまう
理想よりも、欲望を優先する習慣がついてしまっているから
わからないけどね
結局何かをお腹に入れることはやめた
そして今この気持ちをこうやって書き残しているうちに眠くなってきたので、今夜の私は空腹のまま寝ようと思う
今の私は空腹という食欲よりも、健康で綺麗でいたい理想が勝ったし、まだ習慣がないからね