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選択的夫婦別姓への気持ち悪さ
2024年の自民党総裁選に出馬した候補が取り上げたことを皮切りに、衆院で与党が過半数割れしたこともあって、選択的夫婦別姓導入の是非を巡る意見を見聞きすることが多くなりました。
個人的には選択的夫婦別姓には、言いようもない「気持ち悪さ」を感じてしまっています。
今回はこのあたりを自分自身の思いを言語化することを目的に記事にしていきます。
選択的夫婦別姓とは?
そもそも、選択的夫婦別姓とはどういった制度なのでしょうか。
大前提として、結婚後の姓は民法で次のように定められています。
民法 第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
簡単に言い換えると、結婚後は、必ず夫か妻どちらかの姓に合わせないといけないというわけです。
選択的夫婦別姓とは、同一姓に強制せず、夫も妻も結婚前の姓を名乗り続けられるようにする制度です。
「選択的」ですから、今まで通りどちらかの姓に合わせてもいいし、別々の姓でもいい。どちらも選べるようにするという制度です。
なぜ選択的夫婦別姓が議論されているのか
ではなぜこの制度が議論されているのでしょうか。
選択的夫婦別姓の導入を求める人たちの主な意見をまとめてみました。
改姓による手続き負担の軽減
夫か妻の姓を選択できるが実際改姓するのはほとんどが女性であり、不平等の解消
改姓することでキャリア形成やアイデンティティにマイナスの影響がある
細かく見ていくと他にも賛成意見がありますが、まとめるとおおよそこの3つの意見に集約されると思います。
そして、NHKが行った世論調査では、導入に賛成が62%、反対が27%だったようです。
選択的夫婦別姓で解決するには論理が飛躍しているのでは
本題の私が感じている「気持ち悪さ」はこの3つの意見に対して、解決手段とするには、家族のあり方に関わるような別姓である必要はなく、論理が飛躍していると感じるからです。
その理由を項目ごとに見ていきましょう。
1.改姓による手続き負担
マイナンバーを活用して、婚姻届けの提出=改姓手続きになるように改善すればいいと思います。
銀行口座をはじめとするそのほかの情報も紐づけるようにすれば利便性は格段に向上するでしょう。手続き負担を軽減することは昨今のDX推進の流れに沿っており、この方法こそ王道ではないでしょうか。
2.夫か妻の姓を選択できるが実際改姓するのはほとんどが女性であり、不平等の解消
これについては、民法という仕組み自体が女性に改姓を強制しているわけではないのに、その仕組みを変えて解決を図るのは筋が通らないです。
憲法24条は、結婚は両性の合意によってのみ成立すると定めています。
憲法 第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
昔のように家柄などに囚われず、自由に結婚できるようになりましたが、それは同時にお互いの意思がお互いに尊重されなければならないということです。
この規定を踏まえれて考えると、改姓にあたって不平等を解消するには、どちらが改姓するかよく話し合い、納得の上で決定することこそ、憲法の期待することではないでしょうか。
3.改姓することでキャリア形成やアイデンティティにマイナスの影響がある
キャリアもアイデンティティも、改姓でマイナスにはなりません。
姓が変わることでキャリア形成にマイナスになると思う方は、キャリアというものに誤解があるように思います。
キャリアは、今までやってきたことの「歴史」ではなく、その人に備わった「経験」そのものがキャリアです。
歴史は姓が変わることで紐づかなくなるかもしれませんが、経験は姓に紐づきません。
そもそも経験にならず、歴史止まりになっている間は本当に使えるものか怪しいです。
これまでの経験は、改姓で失われたりはしません。
これはアイデンティティも同じです。
人間がこれまで形作ったものは改姓で消えたりしません。
そこまで姓について考えるのに・・・
もう一つ、選択的夫婦別姓について、別姓か同姓か選択できるから、同姓が良い人はこれまで通り同姓で構わない、という主張も見かけます。
しかし、「選択的」となっていますが、夫婦で別姓である以上、子供の姓は父母どちらかとは「強制的」別姓になります。
選択的夫婦別姓を推進する人々は姓について、それだけ真剣に考えているのだと思います。
しかし、子供の姓はどうするのかということはあまり聞きません。
事前に子供の姓をどちらかに決めておく、ということが言われますが、それこそ選ばれなかった方とは強制的別姓になります。
この意見には続きがあって、成人するまではどちらの姓か決めておき、成人したタイミングで本人にどちらかの姓を選ばせる、というものです。
これに関しては、改姓によってアイデンティティにマイナスがあることを主張するのに、子供にはそういった経験を強いることに繋がるとは想像できないのかと疑問に思ってしまいます。
以上が、私の中でずっと感じていた気持ち悪さの正体でした。
今まではっきりとはしていなかったのですが、今回の記事を書くにあたって言語化できました。
国会では、予算を通す代わりに選択的夫婦別姓の導入を与党が飲むのではないかという話も出てきていますが、そういった政局的な取引に使うべきではありません。
党議拘束もかけるべき案件でもないでしょう。ぜひ「選択」を誤らないようにして頂きたいものです。