秋めく朝、君の心臓の音
ふいに目が覚めた。
午前4時、夜と朝の境界線。
窓の外は、ほんのりと明るい。
隣では、彼がこちらに背を向けて寝ている。
心地よい微睡みの中、半分手探りのような状態で後ろからそっと抱きついた。小さな寝息と規則正しい心臓の音が、背中越しでわたしの耳に届く。
ああ、生きている、と思った。
彼は生きている。その事実が、決して当たり前なんかじゃない日常が、この瞬間が、急に愛おしくなって、泣きたくなった。
こんなに感傷的になってしまうのは、きっと、たぶん、秋のせいだ。
大きな背中、変わらない洗剤の香り、一方的に絡ませた足と、しわくちゃのパジャマ。
わたしの幸せが、この一瞬に、この朝に、ぎゅっと、そっと詰め込まれている。
ふたりで起きたら、今日は何をしよう。
きっとお腹は空いてるはずだから、近くのカフェまで自転車で行こうか。それとも、買い物がてら電車に乗って街まで出てしまおうか。
どちらにせよ、わたしはいつもみたいに準備に時間をかけてしまうと思うけれど、彼は少し困ったように笑って、きっと、ずっと、待っていてくれる。
ねえ、ありがとう。
ねえ、だいすき。
あなたの優しさと、わたしのだらしなさ。
ふたりで、ひとつの暮らし。
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